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キンダカートン・イングリッシュ

 

 朝のホームルーム後は英語です。国際標準語な英語ですよ。


 明智は英語をまともに習ったことがないのでわくわくします。


 え? 中学? 中学は授業をする教師の話す英語が

 どこかの後進国の原住民なまり英語でしたが? ナニカ?


 不法移民だらけのスラム地区の公立中学に

 まともな英語の授業を期待なんかしちゃったら


 駄っ 目 だっ よぉーおっ イェーイ OK ベイベ♪


 英語の先生は、軍需産業大学の大学院を卒業したばかりで

 軍用暗号通信などを研究する研究室の助手をする合間に

 プログラミングと英語を教える事になったと事故哨戒をします。


 おっと幹事を間違えたかな。


 挨拶の内容からして

 小中高、大学、大学院、研究室と学園都市内でだけ生きて来て

 一生を、この学園都市内で生きていきたい

 って感じに想えるような事を語る男でした。


 簡単な自己紹介の後に脱線した事を言い出します


「みんな! ヘヴィメタルは好きかい?

 ヘヴィメタルの感覚とかが面白い時期ってあるよねー?」


 先生とは、ソウルメイトになれそうです。


 時代遅れジャンル愛好の仲間なんですかぁと、心に共感が発生しました。



 若くて可愛い女やイケメンばかりのアイドルグループの唄うアイドル・ポップ


 リズム音痴というヤツなんで小学校の時にダンスの授業で聴かされ

 どう練習してもダンスが上手にならず大嫌いだったヒップホップ


 とか多数派が好む音楽に拒絶反応を抱えて

 時代遅れジャンルを愛好しているので、疎外感を抱えていましたが


 なんか同じジャンルの音楽を聴いている人間と初めての接触です。


「耳に馴染んだ音楽って言っても色々あるのと同じで

 言語って、どれだけ耳に馴染んで、自分でも言葉に出来るかなんだよね」


 先生はニコニコしながら語り掛け、期待感が膨らみます!


「たとえば、軍需産業大学、これを英語で言うと

 ミリタリー・インダストリー・ユニバーシティ


 リピート・アフタ・ミー

 ミリタリー・インダストリー・ユニバーシティ


 あれ? 反応無いなぁ 先生が言う単語を真似して言ってくれるかな

 ミリタリー・インダストリー・ユニバーシティ」


 小さな声で数人が、リピートします

 そのリピート人数を勘定した後、何かを悟ったように先生がいいました


「じゃ、そういう事で、最初はキンダカートン・イングリッシュだよぉ


 ようするに英語圏で幼稚園児が話す英単語を覚えて

 幼稚園児が話す挨拶や日常会話でいいから


 できるだけ頑張って話せるようになろうねぇ」



 はい? 今なんと? 聞こえたけど脳がデータ処理を拒否した。



 ♪ ヘーイ ティーチャー プリーズ ギブミー ワンス モア チャンス


 ♪ ヘーイ ティーチャー ホワイ ユー セイ フォー ブレイク マイ ハート


 ♪ ヘーイ ティーチャー フリーズ ドント ムーブ ショット ナウ



 どこかで聞いたヘヴィメタルの歌詞の一部が脳内を流れます


 キンダカートン・イングリッシュと言った後

 生徒の反応を観察していた先生は


 ああ、なんてこった、こんなレベルなのか・・・


 と言わんかのように失望感のようなものを顔に出しました


 ひょっとしたら違う反応があった場合の

 プランBが、あったのかもしれませんが

 さらに、歩兵科の皆様が心の中に幼稚園児を抱えていると

 想っているかのように言葉を吐きます。


「さて、じゃあ まずはアルファベットの発音だ

 漢字なまり英語で英語圏の人が理解できないレベルなままで、いいから

 アルファベットの歌を歌おう」



 頭の中で鳴り響く、ヘヴィメタルの怨霊・・いや音量が大きくなります


 マジっすか! ちょっ待てよ!


 いくら先進国の子供レベルになろうかと言われても、


 面白半分に単語を覚えて、覚えたばかりの単語を

 「ダディ、マミー、こんな単語を覚えたんだよー」

 って意味も良くわからないままに伝わると信じて

 いや、何かを反応してくれると期待して無邪気に叫ぶ

 三歳児から幼稚園児レベルの英語ですと!?


 いくら脳筋な歩兵科とはいえ、コケにしすぎだろうが?

 私以外にも憤慨している人がいるに違いありません


 怒りで過激なディスリ・ラップのような言葉を

 並びたててしまいそうになるレベルです


 少なくとも情報工作科の数人は、そう思うはず


 ですが歩兵科の皆様は全員が無反応でした。

 その反応を先生が観察します。



 誰かが独り言のように言いました。


「アルファベットかあ、面倒くさそう、大変そう、難しそう。」


 はい? いま、なんて言葉を

 ケツの穴みてえな口から発射しやがりましたか?


「キンダカートン・イングリッシュ? なんだそれ?

 あー、わかんない わかんない

 自分が、どうすれば何かをわかるようになるか わかんない

 わかんない わかんない わかんない わかんない」


 そいつらのボケ呟きに向けて荒ぶるツッコミ用ハリセンを

 心の中で振り回しています

 実際にツッコミ倒す事は、しませんが。


 心の中ではメタルの32ビートなドラムと

 ギターリフ、デスボイスによる過激な歌詞が鳴り響き続けています。


 もう一度、歩兵科クラスメイトの方を見ました。


 キンダカートン・イングリッシュという単語を聴いて

 意味が全く理解できず何か難しい事を言われたと感じ

 漠然とした不安感を感じているようです。


 幼稚園児レベルしか教えないよと宣言された事への

 怒りとか、なんでだよという不満とかは無いようです。


 このとき私の胸に去来した巨大な感情は忘れません。


 自分の理性が感情の波で吹っ飛びそうなのを我慢していると

 歩兵科の志満津が席を立って教師につめよりました。



「オメエよぉ! なぁ? ぅおおい!! 英語やるとか舐めとぇんのくぁ!!!


 あぁ? 英語を話す国じゃねぇぞ、卒業したら何の役にも たたねえのに


 なんで英語なんぞ勉強しなきゃならねえんだ? んぁああ くぉらぁ!!」



 え? たしかの御前等は同じ歩兵内での世間話を語って

 上官命令を聴くだけだから、英語なんざ話しも聞きもしないだろうけど

 英語の授業で、英語教師に英語教育の無意味さを語るとは?



「はいはい。志満津くん・・・


 ああ父親が軍で偉いんだねぇ、それは良かったねぇ

 お爺さんも昔は軍で偉かったんだねぁ、うんうん偉大な軍人一族なんだぁ

 それは、それは、国内だけで色々と回っていた昔は良かったのにねぇ


 まあ、君が先祖様に聴かされた国語愛については、いいから

 とりあえず席に戻って


 じゃあ、まずは同じように真似して歌ってね、ABCDEFG……」


 志満津をサラっとスルーする呪文を唱えて授業を続行しました。


 皆さんご存じの英語の歌です。



「えーびーしーでぃーいーえふじー」



 虚ろな目で歌いました。


 オワタ。 完全にオワタ。 人生オワタよ。


 悲しいことが多いほど人に優しくできるというのは嘘です。

 心の中に悪意が膨らんできて

 憎悪を向ける対象を誰にするかを考えるようになります。


 神様的な存在の何かに嫌われ、悪魔的な何かが手招きしています。


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