大杉編 第1話 デジタル・ツイン
軍需産業第三高校を卒業した後
自分と同じ大杉っていう名字の親戚のコネで
産業用金属取引企業に就職した。
高校の同級生とかには、軍用列車を製造している会社と言え
といった感じで採用決定時点で
部外者に言う世間話まで決められている。
昔、グローバル大企業になる前は
ザイスタンという資源国の国営企業だったのが
買収されて事業部として併合されたという事だった
なので、ザイスタン歴とかいう
今まで聞いた事の無い暦を社内じゃ使っている
そのザイスタン歴じゃ、今は70年の10月という事らしい
セイ・ジーンという政商が初代経営者だったらしく
入社式会場の入り口には、その肖像画が飾られていた。
・・・
配属された、産業用金属取引事業部 レアメタル課の
タンタル担当係では、タンタルという金属を取引していた。
初日は、その金属についての説明
「タンタルは、コルタン石から抽出されます
コルタン石の埋蔵量割合は全世界の80%がザイスタン
他の資源国における埋蔵量を全部あわせても20%
ザイスタン地質調査で発見されたのは最近なので
膨大なコルタン石がザイスタンの地下に眠っているわけです。
現在、各国の電機メーカーが、業界標準として製造している
タンタルを使用した電解コンデンサは小型軽量化高性能が可能なため
電気自動車、スマホ、パソコン、デジカメなどに使用されています。
今の所、代替え金属や次世代コンデンサは開発されていません
数社が実験的にタンタル未使用コンデンサで作成した製品は
性能が低く、どれも3年もしない内に故障するほどに
耐久性も悪く、安価な粗悪品しかありません。
更に、タンタルは各種デジラル兵器などにも用いられる事から、
軍需産業にも調達部署があるので紛争が発生するたびに高騰します
皆さんの日常で見かけるスマホやモバイルPC
値段が、やけに高くなったなぁと感じたら
それは、タンタルなどの原材料が高騰した分が
販売価格に反映されているという事です。
で、ですね。入社したばかりの新人である君達に
担当してもらう職務ですが
我社で立ち上げる事となった
”デジタル・ツイン”
というシステム投資案件での職務に就いて貰います
単純に言いますと
仮想空間に、タンタル取引所を作成するプロジェクトです
段階的に、拡張開発していく予定ですが
まずは、コルタン石を大量に埋蔵するザイスタン
その国内世論と群衆心理を電子空間に再現した
デジタルツインを構築します
最初の目標としては
ザイスタン国内関係者、国際世論の群衆心理操作を
可能にする事です。
完全なる支配・・・というわけではなく
緩やかな市場操作、違法にならない程度の相場操縦
といった意味での群衆心理操作ですね。
それすらも過去に色んな会社が挑戦して
失敗してぃているワケなのですが・・
金融取引においては、20年ほど前に構築された
国際調達供給システムのSCMネットワークの中に組み込まれ
国際取引ルールとか相場などが固まっています
原材料取引SCMも既に存在するネットワークが
あるのですが
ザイスタンが全世界埋蔵量8割を占めているタンタルだけは
いつまで、たってもSCMを構築する事が不可能でした。
大量破壊兵器を作るのにも必要なレアメタルで
裏駆け引きや密輸が絶えないものなので
無理も無いといえば無理もないのですけれども
国際調達供給システムを開発する計画が立てられても
完成しそうになるたびに、何故か・・・
関連するシステム運用国の政治スキャンダルで
システム開発責任者が失脚したり
システム常識に合意した国でクーデターが発生して
システム常識や、国際取引ルールを反故にされたり・・・
と、どこかの国の誰かの謀略などにより
何度もゼロから、やり直しになっているのが現状です
今では、どの国の、どの会社も
このタンタルという資源に関しては
国際ルールを守っての取引なんか無理だと考えている国が
多数を占めるようになってしまいました。
そういった現状を打破するために
我社で、”デジタル・ツイン”という仮想取引空間を作り
タンタルの安定取引を可能にするプロジェクトを立ち上げたワケです
投資リターンが見込める、システム投資案件と期待する資本家から
莫大な資金が集まっており、その期待に応えなければ、なりません。
その作業項目について、プロジェクト・リーダーが説明します。」
管理職の横にいた、少し若い人が語りだす
「まず、初期段階として
どのような群衆心理が国民性を創造して
どんな人物や会社が発生していくかを把握するために
まずは、国の大まかな歴史要因をデータ化して
人的要因と呼ばれているデータを
タンタル取引判断をするAI付SCM(調達供給網)に登録
必要最低限の市場環境要因を取り込み
デジタルツイン初期バージョンを公開して国際タンタル取引開始
各国のグローバル産業金属取引会社を参加
相場調整要素などは、発生した時点で調整対応
といった感じで、産業資源取引デジタルツインを
段階的に開発していく予定でして
君達には、その開発作業へと参加して貰います。
色んな意味で初心者な君達には
とりあえず、ザイスタン歴史要因や
人的要因をデータ化をしてもらいます。・・
いや、ざっくりした表現で言いましょう
ザイスタンで偉くて後世の国民に大きな影響を与えた人間
そして、その人間が国民の心に刻み込んだ常識や、成功者イメージ
この2つについてAIへの登録作業をしてもらいます。
それと、これは注意事項なのですが・・
数値データ化して昔ながらのデータベースへ入力できるのだけではなく
AIへの概念入力とかだと
翻訳する時に結構な誤入力が発生してしまうものなのです
たとえば、使われている言葉がスワヒリ語だと
そのスワヒリ語圏でしか存在しない感覚、道徳
そして、群衆心理が存在しています
”そこの道路では、とある季節に肉食動物が縄張りにする”
とかいう日常会話などは、この国、独自のものです。
その言葉でしか表現できない感覚すらあるものですが
そのスワヒリ語感覚から、英語感覚に変換しないといけません。
英語とスワヒリ語を比べた例について語ってみましょうか
絶対絶命 という意味の言葉は、英語では
”Devil and Deep blue sea”
直訳すると、”悪魔と深青海”だが、意味は絶対絶命です
スワヒリ語では
"hali ya kukata tamaa" という言葉になります
変換していく中で言葉に含まれた何かが失われてしまいます
それを、どうにかして少なくするのも君達の仕事です」
と、そこまで言った所で、管理職が話の腰を折るように割り込む
「翻訳機能付きの最新AIが搭載されているので
そこらへんは、なんとかなると
この優秀なAIエンジニア様が断言してくれましたから
翻訳について理解できない事があったら
全て、このAIエンジニア様に質問してくれたまえ
君達の作業は、最新AIの動作確認テストも兼ねているので
どう動くのが正常動作なのか理解してないとも思うので
正常動作についての説明を聞いて
とても、わかりやすいマニュアルがあるので
そのマニュアルを読めば理解できますから
それを良く読んで作業すれば大丈夫ですからね。」
その後も
”うまくいかなかったら
このAIエンジニアや、マニュアル書いた奴等のせいにしよーっと
そして、うまくいったら全ては、ワシのおかげ、ワシって天才だろぉ”
てな偉い管理職の演説が続き、初日が終わった




