赤点レコーディング
今日もあなたを撮るよ。
右手でビデオカメラを持って左目を閉じて、レンズ越しの困ったそうなあなたを見守る。
苦笑いだって笑いなんだから、世界一綺麗なあなたの一種だって。あなたはいつだって綺麗だと私がいつでも叫ぶから。
だから、あなたを録するの。
慎ましやかに座っている姿も、家族とのよく噛み合わない会話も、誰もが嘘に気付ける強がりも。
儚い微笑みも、悔しい潤みも。喜びも悲しみも、全部。
予備のレンズが水気まみれになって、使い道がない。
心配してくれるあなたももちろん蔵するよ。ぼんやりにでも見えるならそれで十分だもん。
…なんであなたはそんなに平気なの。
なんであなたはそんなに平気なフリをするの。
最後まで、私にまで。嘘をつきそうで。その時が来たら後悔しそうで。誓い受け取ろうとしてなかった今をも、後悔しそうで。
それでもやっぱり、あなたにだけは言えないな。
ビデオカメラを持った手が震える、あなたの存在が揺れるみたいじゃん。なにやってんの私、赤点だよ。
弱いあなたより強くない私でも、あなたの笑うぐらい笑えるかな。
白いベッドより真っ白なあなたの前では光さえも明るさを失うのに。
だからきっと心の狭い空とかはあなたに妬いてしまったんだ。
私が泣くからあなたは泣かないで。
あなたが泣くことなどないとならない。
世界を知ったと思ったのに、違ったの。不条理を。
したら私だけでも、あなたを抱いてあげたらいいの。
あなたがどんな道に出されたって私は同じ運命を歩く。未知の終わりでお迎えしてあげる。
誰にも言ってないけどあなたにだけは秘密なの!
後悔する暇もなさそうで、良いね。
明日もあなたを撮りたい。
恐ろしい明日は来ないでよ。
私、あなたみたいな平気なフリは、できないもん。