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其之捌 神守を凌ぐ力 

『もう駄目だ』


 そう思った時、『バシャァァァァァァン!!』と大きな音と共に屍達が瞬く間に凍りつき、『ガシャァン』と薄い氷の様に崩れていった。そして頭上からめぐみさんがゆっくり舞い降りてきた。


「めぐみさんっ!どこ行ってたんですかっ!もうすごく怖かったんですぅ!!」


「チッ……貧弱……」


 と聞こえたような気がしたけど僕は、めぐみさんにこれからどうしたらいいか訪ねた。


「そうね……その子を助けたかったら大本を叩くしかないわね……」


(そんな事僕にだって分かってるんですけどっ!)と思っていても口に出す事はなくどぎまぎしているとめぐみさんが僕に自分の神楽鈴を渡しながら言った。


「あなた……不思議な力を持っているわね……自分でも気づいている?」


「不思議な力って……僕が持ったものが、なんかぁこう……青白く光って相手に当たると泡になるって事ですか?」


「そう……どうやらあなたは、古の神守の力を引き継いでいる……いやこの力は神守と言うより私達宮司みやづかさに近い……それ以上か……」


 僕はめぐみさんが何を言っているのか全く理解できなかった。神守? 宮司みやづかさ?の力?僕にそんな力があるなんて全く理解できなかった。でもめぐみさんから渡された神楽鈴を持ってみるとなんだか安心できるような……何だろう?この高揚感、何が来ても負けないこの自信に満ちた高揚感。


「めぐみさん! あいつをやっつけに行きましょう!」


 と言いながらめぐみさんの方を見ると同時に地面から『ドドオオオオンッ』と太い木の根が土中から突き出でめぐみさんを弾き飛ばし、空中に舞っためぐみさんの足に別の根が巻き付きそのまま観覧車のある方へ連れ去ってしまった。


「めぐみさん!」


と叫ぶと今度は後ろからまみちゃんの声が聞こえた。


「キャァァァァァァ! お兄ちゃぁぁん!」


「まみちゃん!」


 今度は木の根がまみちゃんに巻き付き、そのままめぐみさんと同じ方向へを連れ去って行った。僕は何もできず唯叫ぶだけ。すぐに無我夢中で二人が連れ去られた観覧車の方へ走った! 走っていく途中にも屍がウヨウヨいたがめぐみさんから渡された神楽鈴を一振りするだけで道が開けるぐらい一瞬にして屍を薙ぎ払っていた。観覧車が近づいてくる、何故か今まで見えていなかったものが見えてきた。それは観覧車を包み込む禍々しいどす黒い空気? とにかくものすごく陰湿な氣が漂っているのが見えた。そして観覧車が近づき、めぐみさんとまみちゃんが根に吊るされているのが見えてきた。


「めぐみさん! まみちゃん! 今助けるからね!」


そう叫ぶとどす黒い声が観覧車の中心にある巨大な気色が悪い花の様な物から聞こえてきた。


「フフッハァッハッハハハハ! お前の様な小童が儂を倒せるとは、片腹痛いわ!今からこ奴らを食ってやるからお前はそこで大人しく見ておれ!!」


 そう言うと花の中心が『ガパァッ』っと大きく開き鋸の様な刃が並ぶ口が現れた。そして根に巻かれていた二人がその真上に持っていかれると根を『スルッ』と外しそこに落とした!


「キャァァァァァァ!!」


 為す術なく落ちていく二人。僕はただ見ているしかできない、『僕にはなにもできないのか……』そう思っていると体の奥底から怒りが沸き上がってきた。それからの事は、余りの怒りでよく覚えていないが確か……神楽鈴を上に高く放り投げた。そして手を打ち鳴らし『纏』と唱えたんだ。僕の身体を何かが包み込み手には刀の様な物を持っていたと思う。そしてその刀で何かを切って切って切りまくった。そうだ……観覧車に取り憑いていた花の化け物を切ったんだ……そして二人を飲み込んだ一番大きな化け物を切ろうとした時、力がふっと抜けて地面に落ちたんだ。地面に横たわる僕は全身が痛くてもう力が入らなかった。


「小僧! 残念だったな! お前も二人の様に喰らってやるから安心しろ!」


「もう駄目だ……。めぐみさん……まみちゃん……助けることが出来なくて……御免なさい」


 そう思いながら僕は涙を流し覚悟を決めた次の瞬間、何故かその醜く巨大な花がまぶしく輝いた次の瞬間『ピシッ』と一瞬にして凍りつき『ガシャァン!』とくずれ落ちた。そしてその中からまみちゃんを抱き抱えためぐみさんが現れた。その後観覧車に巻き付いていた木の根もすべて凍りつき、すべて崩れ落ちていった。


「まみちゃん! めぐみさん! よかった、無事だったんですね!」


僕はよろけながらも立ち上がり、二人の傍に歩み寄って喜びを大きな声で伝えた。


「蛇鬼の力が少々あると言っても所詮は呪木……。私が……このような醜い……呪木ごときにやられる訳はありません……。あなたで十分と思ったのですが……まだまだ未熟で貧弱です……」


 そして周りを見渡すと呪木に捉われていた沢山の御魂達が解放され、青白く光り輝きながら空に昇っていった。そして空高く舞い上るとまるで流れ星のようにすぅっと消えていった。


「ありがとう……ありがとうございます……ありがとう……」


沢山の御魂達の声が聞こえてくる。そしてまみちゃんとお別れの時が来た。まみちゃんはしゃがんでいる僕に抱きついて耳元で囁いた。


「お兄ちゃん……ありがとう。私もやっとパパ、ママの所へ帰れます、本当にありがとう……」


そう言うと僕から離れて笑顔で手を振りながら消えていった。僕は立ち上がりめぐみさんの方を向いてきりっと姿勢を正し深々と頭を下げた。


「めぐみさん、ありがとうございました!」


「お礼を言われる……筋合いは……ないわ……。ただの……暇つぶしだから……」


「でもめぐみさんが居なかったら、僕一人では何も出来なかった……本当にありがとうございました!」


 そう言うとめぐみさんは暫く黙り込んで……顔を上げると、


「早く帰るわよ……私この後、行く所が出来たから……急いで」


 そう言いながらそっけなく出口に向かうめぐみさん。こんな夜中に急いで行く所って何処だろうと思いつつ早足で歩くめぐみさんを追いかけた。


 僕の不思議な体験、こんな事があってもこの話は誰にも言う事はないだろう。ただ誰かの役に立つのならこの力、使ってみてもいいのかな。


                       

                    纏物語 外伝 神守を継ぐ者  終

 この後、めぐみは『纏物語』第26話で舞美達のもとに駆け付けます。恭一郎の物語はこれでお終いです。この後『纏物語』を書く事があればちょっとだけ登場するかもしれません(布石として書いておきますね)

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