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其之肆 いざ遊園地へ

「ギャァァァ!」


 ミミズの群れが僕めがけて飛んでくる!僕は苦し紛れ棒切れを振り回した。すると『トン』と棒切れが当たったミミズはシャボン玉みたいに弾けて消えた。


「えっ? えええぇ!? 棒切れが軽く当っただけなのに!? 泡になって……僕がやっつけたの!?」


 僕は立ち上がり、棒を両手でもって構えた。『シヤャャャ!』とミミズが何匹も向かってくる。(大丈夫、集中するんだ。しっかりよく見て、コイツらは真っ直ぐにしか飛んでこない!)


「やあああああっ!」


『パンッ!パンパンパンパンッ!パンパンパンパンッ!』


 単調に飛んでくるだけのミミズを全て払い除けている! 僕は調子に乗ってやっつけた!


「ハハッ!ハハッ!ハハハハァ! このやろ! このやろ! 消えてなくなれっ! ハッハッハァ!」


 大口開けて高らかに大笑いしていると、僕の死角からいきなり目の前に小さい拳が現れて僕の顔面右頬を捉えた! 『バキッ!』「オゲェ!」その直後今度は、めぐみさんの回し蹴りが僕のお腹を捉えた! 『ドコッ!』「グハッ!」


 僕はもの凄い衝撃を受け、真後ろにふっ飛ばされた!『ゲホッゲホッ』っと嗚咽しながら転げ回っているとめぐみさんが静々と歩き近づき、無表情で上から視線を落としながら忠告した。


「……ほらほら……油断していると……血反吐を吐いて……死にますよ……」


 淡々と辛辣な言葉をかけてくるめぐみさんに僕はお姉ちゃん以上の恐怖を覚えた。


「ヒッ……ご、御免なさい!」


「しかし……貴方は面白いお力をお持ちの様ですね……」

 

「おも……ゴホッゴホッ、面白い力? なんの事ですか?」


「貴方のその力……いや……何でもありません……」


「それでは……その遊園地とやらに……参りましょうか…………纏」


 めぐみさんがそう呟き手を大きく広げ胸の前で一拍叩いた、すると僕の目の前がピカッと眩く光ってその光の中から巫女衣装のめぐみさんが現れた! 僕はミミズ以上に驚いて尻餅をついた!


「ひえぇぇぇ! な、何なんですか⁉ それは!!」


慌てふためく僕にめぐみさんは淡々と話す。


「私には……余り時間がありません……行きますよ……」


と言いつつふわりと宙に舞った。


「ま、待ってください! 僕は、武空術なんて使えません! 空なんて飛べませんよっ!」

 (武空術……って何?)


めぐみさんは僕の前に音もなくすうっと降りてきてボソッと呟いた。


「……貧弱……」


「えっ?」


「手を広げてごらんなさい……」


「こうですか?」


「そして……胸の前で拍を討つ……」


『パンッ』(拍を打つ音)


「『纏』と唱える……」


「て、てん!」


『シーン…………』


「チッ……」(嫗の舌打ち)


 めぐみさんは大きなため息をつきふわっと飛び上がりどこかに行ってしまった。『僕の不甲斐なさにめぐみさんは、怒って帰ってしまった』と思っていた。そしてトボトボ歩き、公園の出口に差し掛かった時右から『グワァァァァァン』とすごい音を響かせて赤いスポーツカーが来た。『危ないなぁ』と思っていると僕の前で『キィィキキキィィィィ!!』とものすごい音を立てて止まった。窓ガラスが『ウィィィン』と下に降りると運転席に乗っていたのは、ワンピース姿で髪が長いメガネを掛けた美人のお姉さん。


「早く……お乗りなさい……」


この人顔も体も違うけど話し方は嫗めぐみさんだ!


「えっ? め、めぐみさん? ですか?」


 と言いかけた時、後ろのドアが『バン!』と開いて首根っこをつかまれ車内に放り込まれたと同時に

『ヴオォォォォォォォン!!!!』とエンジン音がけたたましく響き、そして車は僕が今まで経験したことのないようなスピード域まで一気に加速した! 


「ギャァァァァァァァァ!! 助けてください! 死ぬ! 死んでしまうぅ!」


 もう生きた心地がしない、ナビゲーションの言葉を完全無視し車は突っ走る! 目をつむり足元の狭いところに潜り込むが、車の強烈な加速にどれだけ危険な運転をしているのか容易に予測できた。後ろの席で右に左に転げまわる僕。その僕にめぐみさんが落ち着いた声で語り掛ける。


「少女を捉えているのは……恐らく……呪木……です」


「じゅ、呪木?」


「何故……そこに呪木があるのか……私も興味があります……貴方の面白い力……説明するからよく聞いて……」


恐ろしい速度の中、めぐみさんが僕の『力』の事を話し始めた。


                             つづく 



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