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其之弐 少女の御霊

 夏休みに入ってからすぐの晩御飯の時、お父さんが突然何かを自慢げに頭の上にかざした。


「じゃ~んコレなぁんだ?」


 出したのは遊園地の無料パスだった。会社の上司から貰ったそうだ。一枚で四人まで入れて遊園地内

全て無料で乗れるパスだった。僕は『げっ!』と思ったけど、これに食い付いたのはお姉ちゃんで。


「えぇぇ! これ今『ぷりきゅあショー』やってるやつじゃん! 行きたかったんだぁ、やったぁ! 行く行く絶対行く!」


お姉ちゃんが、昔から魔法少女が大好きなのは良いとして……。


「恭ちゃんも行くよね!」


「えぇっと……ぼ、僕は……」


「い・く・よ・ね」


「は、はい……」


 怖い、怖すぎる、顔は笑ってるけど目が怖い。そうやっていつも脅されてショッピングセンターやデパートの屋上であるショーに僕は付き合わせられる。でも『行かない』って言ったらお姉ちゃんからまた殴られるし(しかもグーで)その度に昔の記憶を思い出して心臓がバクバクになる。


 そして僕とお姉ちゃんの部活とお父さん、お母さんの休みの日が重なる土曜日に行く事が決まった。その日からお姉ちゃんは、『ぷりきゅあ』のDVDを見ながら『予習予習!』と踊りの振り付けを練習したりしていたが、それを見るたびに僕は行きたくない気持ちが日に日に増していき胃が痛くなってきた、『またボコボコにされたらどうしよう』とか悪い事ばかり考える。そんな僕の気持ちとは裏腹に無情にも時は過ぎていく。そう、遂に出発当日となった。ずっと憂鬱な僕の気持ちとは裏腹にお姉ちゃんは、かなりの上機嫌。朝から、


「時は来た!」


 なんて言ってるし『アニメの観過ぎだよ』と思っていると『ぷりきゅあ』の歌を鼻歌まじりで歌ってる。車の中で終始ご機嫌で、歌いながら僕に言ってきた。


「恭ちゃん! 遊園地、楽しみだねっ! 乗り物全部タダで乗れるし……そうだ! お化け屋敷も入ろうよ! 私お化け屋敷大好き!暗くて涼しいし! 大丈夫! 怖くない! 全部作り物だし私が傍に居るから!」


 どうやらお姉ちゃんは、その大好きなお化け屋敷で僕を盾にして怖がり挙句、屋敷の前で僕をボコボコにした事をすっかり忘れているらしい。なんて幸せな人なんだ……。


 家から車で一時間とちょっと。県下で一番大きな遊園地、五井パープルランドに着いた。広大な敷地の中にはゴルフ場やホテルもある。遊園地には大きな観覧車に三段あるメリーゴーランド、そしてジェットコースターは三種類あってどれもスリル満点だ。


 夏休み期間中は、大きなプールが開設されるのでそれが目当てなのか沢山の小さい子ども連れの家族やカップルで賑わっていた。


お姉ちゃんは、入るや否や僕の手を握りいきなり走り出した。


「ほら! 早くステージ広場へ! 早くいかないと良い席取れない!」


 もう完全に陸上競技だ! 僕の手を引っ張り、かなり本気で走らされた。後ろを見ると白い大きな犬?狼? も走って付いて来ている。この犬が何者なのか知らないが目を合わさないようにしよう。


 前回この遊園地に来たのは約十数年前の事。その時は小さかったからあまり感じなかったけど……それにしてもなんかここ(遊園地)なんか気持ちが悪い。ここの駐車場に入った時から感じていた。ずっと誰かに見られているような……でもそれとは違うものも感じていた。


 そして散々走らされてステージ広場に着いた。僕はもうすでにクタクタ。午前の部のショーの時間迄あと一時間程あった。まだそんなにお客さんが来ていなかったので、前から三列目の真ん中辺りの席が取れた。『小さい子どもそっちのけでいい席取るなんて大人げない』と言いたかったけど思うだけにしよう。  


「やったぁぁ! ベストポジション! 恭ちゃん、ここお願いね! 絶対どっか行ったら駄目よ!」


「ええ、え? お姉ちゃん何処行くの!?」


「決まってるでしょ! グッズ買ってその後、いり待ちよ入待ち! キュアリリアンと写真撮るんだから! 恭ちゃん! どっか行ったらぶっ飛ばすからね!」


と言い残し喜び勇んで集まり始めた子ども達の中に消えて行った。


あ〜あ……と諦める。目の前にどでかい犬(羅神)がでん、と座り前が見えない! どいて欲しいなと思いながら僕が隣に動いた。その時『ゾワッ』と背筋に悪寒が走る。ふっとステージの方へ目を向けると少女が一人佇んでいた。色白でおさげ髪、向日葵柄のワンピース。表情はどこか悲しげだった。どう見ても『人』では無かった。そして声は聞こえなかったけど口が大きく何かを訴える様に動いた。

『た・・す・・け・・て』


「助けて⁉」


 僕は確認するかの様に呟いた。あの少女は確かにそう言った。すると犬(羅神)が『ウウウウウゥ……』とステージの方を見て唸り声を上げたかと思うと、黒い煙が少女を包み込み消えてしまった。『なな、ななんだ今のは!?』今まで怖いものをいっぱい見てきたけど今日のは極めつけ、いつもと何か違う絶対やばい奴だ! 僕は初めて戦慄を覚えた。


そしてお姉ちゃんが満足げにグッズを買って帰ってきた。


「いや〜写真もバッチリ撮れたし握手までしてもらっちゃった! ほらほら写真見る? ばっちり取れてるよ! ん? どうしたの恭ちゃん?」


問いかけるお姉ちゃんに


「ななな、何でも……ない……」


と返事を返したがその後、再びその少女に出会う事になる。

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