凍結粉砕
キィィィィィィィィンッ‼︎
氷の精製音が合図となり、周りの光景がまるでスローモーションのように流れてゆく感覚。
「ウ、ウルエさ……ん……」
「ハルちゃん……大丈夫?」
両掌を前方へと突き出した姿勢の彼女を、尻餅をついた俺が……呆然と、見上げる形になった。
「こ……こんな状況でまで、俺のことを気にかけてくるなっ‼︎ 人の心配してる場合じゃないでしょうがーーっ‼︎」
「あ、あははは……うっ……」
俺の怒声に苦笑いし、苦痛の声を上げるが……表情はゴーグルとマスクで隠れていて、まるで読み取れない。
『あ、終わった……』と思った瞬間、彼女がバニラ鳥と俺との間に素早く入り込み、渾身の力で俺を後方へと突き飛ばしてくれたのだ。
お陰で、武器と右のグローブを生け贄にして俺の手はすっぽ抜けた……そして……。
「ウルエさん……」
「そんな情けない顔しないで……ね、ハルちゃん」
彼女は困り顔で俺に話しかけてくるが……その胸から腹にかけて、無数の氷のクラスターが容赦無く身体を貫いていた。
血が一滴も垂れていないのは、血液をも凍らせる冷気だからか、それとも、彼女に血が通っていないのか……どちらかはわからなかった。
貫通部から氷が身体の侵食を始め、他の部位もピキピキッと順に凍ってきている。
「あぁ、やっちゃった……ソラに怒られそ……」
言葉の途中で、ウルエさんが両膝からガクンと崩れ落ち、前方へと倒れ込んだ!
パキィィィィィン!
転倒した衝撃で、彼女の凍りついた下半身は見るも無惨に砕け散った!
………………
俺のせいだ……俺が油断したせいだ……。
この氷山と氷山の隙間は、あのバニラ鳥のデカ尻では通れない狭さ……かろうじて縦向きの翼か嘴が突っ込める幅だった……そう、背を向けた所に突っ込まれた……くそっ!
今更、遅い。
何かに気付くのは、いつだって大切なものを失った後だ。
「えっ? ここは……?」
その時、背後で知らない声がした。
「ソラ⁉︎ ……おはよう……ごめんね。えっと……私は……大丈夫だから……」
「え?」
ピキピキピキ……パキーーーーンッ‼︎
上半身も一気に凍りつき……透き通る高音が響き渡って……ウルエさんは粉々に砕け……消えた……。
………………
「空ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼︎」
「⁉︎」
小柄な彼女が起き上がり、絶叫する‼︎
「あたしの空に何してくれてんのよぉーーっ⁉︎ うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ‼︎」
悲痛な叫びと共に、彼女は素早い動きで、ウルエさんの武器を拾い上げ、構え、撃つ‼︎
速いっ‼︎
ズドォォォォンッ‼︎
バスンッ‼︎‼︎
ロケットランチャーから放たれた弾丸は、的確にバニラ鳥の片翼を吹き飛ばした‼︎




