バニラ
急激なスピンで、再び冷気の風がひゅぅっと旋を巻く!
俺を殲滅対象としてロックオンした為か、先程より敵との距離が近い!
囮としての仕事は上出来でしょう?
だけど……。
………………
あぁ、ウルエさん……あとどれくらい⁉︎
俺、超不安なんだけど‼︎
ソラさんを削り出している面が、こちらからは完全に死角で見えない!
キュィィィィィィン……
耳を澄ますと、なんとか砕氷のチェーンソー音が聞こえ、俺の心が少しだけ上向く。
キュルキュルキュル……ヒュルヒュルヒュルッ……‼︎
今度は回転している巨体の旋回音が一段階、高音になる!
スピードがさらに上がったか⁉︎
こちらからは回る残像しか見えない!
……ん? あれ?
こいつよく見ると白くないな……オフホワイトに近いベージュ色……だったら白鳥じゃなくて、バニラ鳥だ……って今はそんなこと、どうだっていい!
氷山の陰に身体を縮込めて潜み、氷の裏側から対象をじいっと注視する。
さっきの一ターン目の攻撃力は凄まじかった。
だが、この厚さの氷山を貫通させることは出来ないはず……。
ヒュルヒュルヒュルヒュゥッ……
来るっ‼︎‼︎
ドドドドドドドドドドドドドドッ‼︎
音が……違う⁉︎
俺は思わず、背中のロケットランチャーに手をかけ、銃口を真下に向け、放つ!
ドォォォォォンッ‼︎
激しい爆発音と共に、氷の破片が周囲へと散らばった‼︎
◇◇◇◇
ターーンタラララーーン……
またも、曲調が変わる。
飛び散った氷の粒と水蒸気で視界は靄っているが、冷静に俺は真上を見上げる。
パラパラッ……パラッ……
俺が直前まで隠れていた氷山は、一部の残骸のみになり、ほぼ大破していた。
………………
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ! 死ぬって‼︎
マジで‼︎ 木っ端微塵な0.5秒前だよ‼︎
俺は咄嗟に氷海を掘り下げ、海抜地点へ隠れたのだ。
ギリギリギリセーフ!
本当、危なかったぁぁぁっ……。
ぽたっ……
俺が隠れてた氷山……もはや山と呼べないそれから、とろりとした雫が垂れてきた。
周囲を見るとバニラ色の液体があちこちに付着している。
⁇⁇
あ!
……あいつ、氷の羽根じゃなくて、バニラアイスの羽根を飛ばしてきたんだな。
しかもめっちゃ怒ってたから、体温上昇してたんだろう……高温のバニラアイス弾となって撒き散らしやがったのか!
氷山があちこち溶けている……。
はっ! 二人は⁉︎
ばっ、と後方を振り返る!
バニラ鳥は俺狙いだったから、ソラさんの氷山まで攻撃は届いていないようだ。
良かったぁ……。
そういえば、世の中にはアイスの天麩羅があるって聞いたことあるけど……あれって熱いの? 冷たいの⁇
社長なら知ってそうだな……と、本当にどうでもいいことが頭に浮かんだ。




