ワンマン舞台
ジャーーンッ!
再び、ロックバージョンの曲が鳴り響くと、もっちりスケーターが加速する為に、氷上に円を描き出す。
体躯のデカさに似合わない素早い動き!
そして……なんかイラッとするぞ、お前のその顔!
……って、うおっ! まずいぞ‼︎
ぼんやり眺めている場合じゃねぇや‼︎
慌てて、俺は目的に定めた氷山へと駆け抜ける!
……ソラさんのいる氷山から一番遠い所!
あのスピン攻撃……盾になる氷山さえもガンガン削っちまうな……他の防御策を考えなきゃ、俺のライフポイントは即消滅だ。
キュイィィィィィィィンッガガガガガッ!
騒がしい音楽に紛れて、ウルエさんのチェーンソーも唸り始めた。よろしく頼んますよ!
とりあえずはヤツの攻撃力をダウンさせないと……何かいい方法は……。
視線は回る白鳥から外さずに……ん? さっきの空を飛ぶカモメが俺の視界内に入ってくる。
足にはシロップバルーン……。
………………
ロケットランチャーを背中に回してから、ベレッタを構えて、カモメの足元へと弾丸を放つ!
ジャキッ! ダンダンダンダンッ!
パーンッ! パーンッ! パーンッ! ボトボトッ……
中身はラムネ弾だ!
命中したバルーンは、派手な音を立てて弾け、中身のカラフルなシロップ達が、バッシャァッと氷の床を染めていく!
まるで某ペイントシューティングゲームのような光景。
そして粒餡団子にも見事命中!
ビターンッと氷面に落下した衝撃で、小豆が辺りに散らばった!
「⁉︎」
予想外のリンクの荒れ模様に、うまく回れない白鳥の回転数はみるみる下がり、失速。よしっ!
フィギュアスケートだったら、減点ポイントだぜ!
俺の小さなガッツポーズが氷山から少しはみ出ていたのか、ギロッとこちらを睨む白鳥。
目が血走って……あ。
め、めっちゃ怒ってる‼︎ ……まぁ、そりゃそうだ。
ヤツのワンマン舞台を台無しにしたんだからな。
気分を害されたら、そりゃ激怒するわ。
ふっふっふ、だが、このリンクじゃ滑れないだろう。
一度きちんと製氷しないと、あの攻撃は出せないぜ。
この隙に、作戦を練って……ん?
ブワサァァァッ!
突然、大きな両翼をヤツが同時に羽ばたかせる!
とてつもない冷気が白鳥を中心として、一気に吹雪のように広がる!
ビュォォォォォォォォォッ……ピキーーンッ‼︎
今の一振りだけで、荒れたリンクが滑らかな氷面を取り戻す!
少しだけ、カラフルになったな、シロップも小豆も凍っちゃったからねぇ……って。
………………
う、嘘だろ、おい⁉︎
攻撃力ダウンどころじゃない、一時的に足を止めさせるのも一苦労って……これ、やばすぎだろ?
製氷されたリンクでまた激しい音楽に合わせて、猛烈スピンを始める激怒鳥!
やばい……どうする⁉︎




