最終ステージ用装備
すぽっ! とんとん……
雲上用ふわふわムートンブーツから、氷上用スノーブーツへと履き替えた。
ブーツも用途が違えば履き心地が全然違う。
……と言っても元々、一足のスニーカーをボロボロになるまで履き潰すから、ブーツを履く習慣が俺にはまるでない。
これ、意外と足が疲れるんだよな……明日、絶対に筋肉痛……いやまぁ、足だけじゃなく、全身か。
今回結構、体張ってるからな。
筋肉だけじゃなく、骨もイカれてるはず。
……よろっよろの身体で病院通うのか……嫌だな。
「はぁ……」
思わず溜息が漏れた。
ドームテントから一歩、外へと足を踏み出す。
靴裏のアイススパイクが、ツルツルの氷面をしっかりと捉える。
ジャリッ!
スパイク部分は硬めのチョコチップかな?
……いよいよ最終ステージ『冬の海』の始まりで……このウルエさんの異世界の……終わりが近い。
終わらせなければ、鏡には辿り着けないし、俺は帰れない。
……俺は現実に戻るんだ、ソラさんを連れて……。
「ねぇ、ハルちゃん、歩き心地はどう?」
スイーーッ! キュッ!
滑らかな動きで彼女はドームテントから出てくる……あら、氷上の妖精さん⁉︎
フィギュアスケートの選手の様に華麗でエレガント!
……でも最終ステージ開始したら、スピードスケーターさながらの猛烈スタートダッシュをかますんでしょ?
「ハルちゃんもスケート出来たら良かったのに……」
「すんません、俺はこっちの靴で頑張ります」
ウルエさんからは機動性が高いスケート靴の方を勧められたが断った。
俺は生まれてこのかた、スケートをやったことが無い! 未経験だ。
博打で履いてみて、もしも氷上プルプル産まれたてな子鹿ちゃんになっちまったら、撃ち取られて即ゲームオーバーだ。
……そんな不確実な選択、俺には出来ない。
「ここの敵は1体。それが……まあ、強いんだよね〜〜。ハルちゃん……私がソラを氷から出すまでの間、どうか持ち堪えて欲しい。お願いします」
ウルエさんが深々と頭を下げた。
「やりますよ。でも……強いって……ちなみにどんな感じで?」
自信はないが、やるしかない。
ウルエさんは、少し考えて答える。
「とりあえず……相手の攻撃が当たちゃったら、即、死亡……かな?」
………………
「な、なんでそんな恐ろしいもん創ったんですかーーーー⁉︎」
かーー、かーー、かーー……
俺の叫びが、虚しくかき氷山連峰にこだましたのだった。




