旅立ち前
「さて……では行くか」
カップ麺を急ぎ食べ、立ち上がる。
異世界でも食べ物は食べれるらしいが……42歳のおっさんの魂が原材料の食物を摂取する状況はちょっと、ご遠慮させて頂きたい……。
「ぷる? ぷるぷるぅ!」
何? あ、これ?
カップ麺気になるの?
「ごめんね、メーさんにはあげられないんだ……」
下手にこっちの世界の食べ物を与えて、お腹壊しちゃったら可哀想だ。
……あれ? 消化器官ってどうなってんだろ?
撫で撫でするが、ちょっとご機嫌ナナメ。
「ぷぷぷ……」
あぁ、拗ねても可愛い。
「メーさん、ごはんは何食べるんだろ?」
塩分も水分も駄目そうに見えるけど……。
とりあえず分かってるのは、おっさんの魂が原材料の何かだ。
元々、昨日今日の二日間で不動産屋を回る予定だったから、バイトは入れておかなかった……幸か不幸か、超予想外に一日で済んだがな。
土日は時給高いから出来るだけ出勤したいんだけど……まぁ来週稼ごう。
あの日記で分かった知識を元に、俺達はこれから異世界へ行く。
まぁ、本心は……ちょっと怖い。不安。
でも、メーさんを元の世界に帰してあげたいし、異世界って何なんだ!? という怖いもの見たさな好奇心があるのも本音。
でも何より一番は……今後も洗面台を気にしながらそわそわ生活するのは、ぜーーったいに嫌だ‼︎
もし家に帰って玄関ドア開けたら、目の前に魔物が立ってるとか想像すると……速攻閉めるわ! じゃなくて、嫌すぎる‼︎
せっかく理想的な物件に格安で住めたのだから、安心・安全な学生生活を送りたい‼︎
ただ、日記の内容が本当なら……いくつか気をつけなければならないことがあるのも確かだ。
ぱちん!
両手で頬を叩き、気合を入れる!
旅の荷物を詰めたリュック、スマホ、鏡、メーさんを抱っこして、俺は洗面所へ向かった。
おっと、靴忘れてた。
いざ、綾瀬(仮)さんの異世界へ!
バチでも何でも当ててみろってんだ‼︎