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オススメ事故物件、今ならサービスで異世界ワープお付けします。  作者: 枝久
2ー3 

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砂浜

「ウルエさん、騙しててごめんなさいっ!」


 ばっ!


 俺は脇腹を押さえながら、頭を下げた。

反対の手にはもっさり黒い塊……落としたアフロなカツラは回収したが……何て言って社長に弁償免除してもらおうか? う〜ん。


 でも下手に今回をサービスしてもらうと、また無理矢理、他の面倒ごとを押し付けられそうだし……それは是非とも遠慮しときたい!

大人しく金払った方が身のためかも……。


 頭の中でぐるぐる考えていると、ウルエさんがひょいっとカツラを俺から奪い、パサッと自分の頭に乗せた。


「ねぇ、なんでハルちゃんはカツラ被っていたの?」


 アフロなウルエさんも、お茶目で可愛い。


「『女子限定の賃貸物件に出入りするんだから……』って、社長に被せられたんです。もし、ウルエさんが男嫌いだったら悪いかな? と思って、そのままにしちゃいました」

「なるほどね。そこの社長さんってどんな人? ……なんだか随分ハルちゃんに厳しいんだね。ムチャ振り? ご苦労様だぁ」

「えっ? ……あ、あぁ……そうなんですよ、マジ鬼畜〜〜」


 ウルエさんのこの口振り……もしかして社長と面識ない?

えっと……だとしたら、この異世界を創るようにアドバイスしたのは……一体、誰?



「そうそう、あれが連絡鏡だよ」


 彼女がドラムセットの後ろをすっと指差す。


 こんな近くに⁉︎

雷が鳴りまくっていたから、全然気づけなかった。


 不動産会社『ワープルーム』との唯一の通信手段な連絡鏡。

マサさんの異世界の魔王城にあったのと同じサイズか……改めて見ると、デカッ!


 大きな違いは……ど真ん中に撃ち込まれた銃痕(じゅうこん)、そこから走る亀裂と、うんともすんとも反応の無い人感センサー……完全に役割を果たせなくなっているな。

……意味ないじゃん!


 沈黙した鏡にそっと触れて上を見上げてから、ウルエさんに尋ねる。


「……ソラさんですね?」

「……」


 言葉は出さずに、ウルエさんは哀しそうに微笑んだ。


 ……それが彼女からの、質問の答えだ。



◇◇◇◇



「……えっと……この雲のステージから降りるにはどうすればいいんですか?」


 ふと、急に不安になったので、恐る恐る聞いてみる。


 上る時使った縄梯子はボロボロな別物に変えてしまったからな……。

……マジであの雷撃はヤバかった!


「それならこっちだよ!」


 ちょいちょいと手招きされて、一緒に雲の端から下を覗き込む。


「‼︎」


 そこには長い長い虹の滑り台が、雲から下界へとくねくね続いていた。


 これは……アイシングクッキー⁉︎ 

表面が可愛く虹色にデコレーションされている。

……滑ったら、全部削れちゃいません?


 ウルエさんって、体育会系だし、サバゲーしてるから、てっきり男っぽい性格かと思ったけど、結構メルヘン趣向なんだよなぁ。


 ふと、初級、中級、上級で戦った敵の顔が思い浮かぶ。


 ………………


 可愛い顔の敵が無表情で攻撃してくるのは落差があり過ぎて、逆に怖いよ。ホラー!


「ほら! ハルちゃん、降りるよっ‼︎」

「わ、わっ!」


 ウルエさんに促され、滑り台をすべ……。


 ひゅんっ‼︎


「うわぁぁぁっ! 痛ててててててっ‼︎」


 ゴンッ! ガンッ! ゴッ!  ガッ!


 くねくねスライダーのせいで、(ふち)に右へ左へと振られる振られる‼︎

思ったよりもスピード出てるぅぅぅっ‼︎


 うぉっーー‼︎ ビビるじゃんかよ‼︎ 痛ててっ!


 ひゅーーん! ザザザーーッ、ザンッ‼︎


 最終地点はきび砂糖の砂浜に尻からどさっと間抜けに落ちた……。


 ………………


 ぐぉぉぉぉぉっ‼︎ 

振動で脇腹も尻も超痛ぇぇっ‼︎

 

 悶える俺の半泣きの瞳には、ウルエさんが体操選手のように、見事な着地を決めたポージング姿が映ったのだった……10.00‼︎




 最終ステージ『冬の海』……また、ここに戻ってきた。


「お待たせ……ソラ」


 ウルエさんはそう呟き、氷山にそっと顔を寄せた。

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