ハイタッチ
ズガドドガガゴーーンッ‼︎‼︎
「ハルちゃぁぁぁん‼︎」
ウルエさんの悲鳴に似た叫びが響き渡る‼︎
大太鼓達とドラムマンによる雷の集中放電が一斉に俺へと降り注いだのだ!
辺りはパチパチと帯電した綿飴雲粒子の散乱と水蒸気が空気中を漂って……視界が悪い。
ホワイトアウト?
バサバサッ‼︎
しゃがんでいる俺は手にした物を振り回し、白い空気を掻き回して……声を上げる!
「ウルエさんっ‼︎」
「‼︎」
ドチュンッ! ドチュンッ!
俺の意図を瞬時に汲み取り、彼女は薄れた雷壁の向こう側にいた大太鼓2体を長距離射撃で見事に撃ち取る‼︎
パチパチキャンディ弾の破裂!
ぱんぱーーんっと、大太鼓カミナリ様が次々と消え散った。
さぁぁっ……。
風になった大太鼓と共に、雷壁もすぅっと消滅……そして、残すはドラムマン1体のみ‼︎
「ふぅーーっ、助かったぁ……あ?」
ふと自分の足元を見る。
………………
穴ポコだらけな雲は、超ギリギリな足場だけを残して、ふわふわっと……かろうじて繋がっていた。
……えーーっ⁉︎
ここから転落したら終わりじゃねぇ?
ビルの高さ何階相当? あっぶねぇーー‼︎
「ハルちゃん‼︎」
「ウルエさん、ナイスです‼︎ さっすが〜〜!」
「ねぇ、どういうこと⁉︎ あれだけ雷撃もらってて……ハルちゃん、何でゲームオーバーになってないの?」
駆け寄る彼女は不思議そうな顔で俺の全身をジロジロと見回し、ぴたっと手元に視線が止まる。
「あ、それって……」
「そう、作っておいたのが役に立ちましたよ」
左手をひょいと持ち上げ、にぃっと笑う。
さっき雲の上に上がった時、グミ縄梯子で編んでおいた即席の『盾』だ。
もしかしたら使えるかもしれない、と思って試しに作ってみたのが、バッチリ予想的中!
電気を通さずに済んだのだ。
……まぁ、重い衝撃で軽く圧死するかと思ったがな。
「でも、何でその前に出さなかったの?」
「いやぁ……小太鼓が思いの外速すぎて、出すのに間に合わなかったんですよ……」
「なるほど。何か作業してるなぁって思ったけど……やるねぇ、ハルちゃん!」
バシッ!
「痛ぇっ!」
「あぁ、ごめん!」
背中を叩かれた振動が俺の脇腹に響いた……くぅっ、ズキズキする!
さっきの雷撃が追い討ち大ダメージ!
効果はバツグンだ……って?
脇腹を摩りながら立ち上がり、前方を見る。
「残すはドラムマン1体のみ!」
言いながら、グミの盾を力いっぱい捻じ切り、二等分。
ぶちんっ!
あっ、力入れても脇腹、痛っ!
「はい、ウルエさんの分」
「ありがとう、ハルちゃん……じゃあ、行くよ!」
「はいっ!」
ダッ!
二人同時にふわふわな雲上を駆け抜ける!
ウルエさん、本当に速ぇな!
どんどん置いて行かれちまうよ!
ぐっ!
走ってる振動がまたしても痛みを誘発、くそっ!
ダンダンタタタッチチチチチドンドンドンドンッ‼︎
ドラムマンの高速ストロークのアップテンポ!
そこへ同時にバス、スネア、ハイハット織り交ざった掻き鳴らされる、ワンマンステージ‼︎
ぎゃぁぁっ‼︎
光速の雷撃が無数に降り注いできたーー‼︎
グミ盾を装着した左腕を、頭を守る様に構えつつ、それでも足を止めずに突っ走る‼︎
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
ドラムマンの左右から一気にノンストップで走り抜け、距離を詰め、高く飛び上がり……そして、引き金を引く‼︎
「「バイバイ、 カミナリ様」」
ズダンッ‼︎
俺達の放った二発が同時に、ドラムマンカミナリ様の顔面を撃ち抜く!
後方へとゆっくり倒れながら、ぱんっと粉砂糖になり、そして敵は散り消えた……。
ふわん!
雲上にそっと着地!
……痛ぇっ!
このふわふわ衝撃でも身体に差し障るの⁉︎
………………
おいおい、レントゲン撮るのが怖いぞ?
『殲滅完了、上級ステージクリア!』
画面上の数字は0。
ゴーグルからの機械音に、ようやく安堵する。
倒した?
………………
よっしゃぁぁっ、倒したっ‼︎
ゴーグルを外し、拳を握り、バッと高く掲げ……痛てててっ、脇腹っ‼︎
「ハルちゃん!」
「ウルエさん!」
パチーーンッ!
俺達はハイタッチを交わした!
……痛ててっ、ひいっ! 脇腹に響くわぁ。




