特攻!
「うぉぉぉぉぉぉっ‼︎‼︎」
ダダダダダダダダダダダダダダダダ‼︎‼︎
走れ、走れ、走れーーっ‼︎
胸の前でマシンガンを抱えたまま、綿飴雲の不安定な足場を全力で蹴り出し、駆ける‼︎
ムートンブーツって走り難いな、おい!
よろけても、重心を気合いで立て直し、前へ前へと突き進む‼︎
足を止めるなっ! ひたすら動かせっ‼︎
止まったら、終わっちまうっ‼︎
「ハルちゃん⁉︎」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ‼︎‼︎」
覚悟の特攻‼︎
囮のつもりでカミナリ様の処まで一直線に猛進‼︎
そうすれば……ウルエさんへの雷撃は避けられる‼︎
それに……俺だって、むざむざとやられるつもりで突っ込んできてるわけじゃねぇ‼︎
前方を睨むと、可愛い中太鼓カミナリ様3体もこちらを見ている‼︎
だが3体共、一瞬、躊躇するような素振りを見せ、何故か雷撃が止む。
⁇⁇
予想外!
全員で俺狙いで攻撃仕掛けてくると思ったのに……何なんだ⁉︎ 罠か⁉︎
「今よっ‼︎」
「は、はいっ‼︎」
後方からのウルエさんの言葉で、俺はマシンガンを構え直して、ぶっ放す‼︎
ババババババババババッ‼︎‼︎‼︎
ダダダダダダダダダダダッ‼︎‼︎‼︎
二人の銃がシンクロするように、銃口から弾丸が発射され、綺麗に3体のカミナリ様が空中に吹き飛び、花火の様に散った。
「よっしゃーー‼︎」
「やったね、ハルちゃん‼︎」
パチーーンッ!
彼女の元へ駆け戻り、ハイタッチをしてから、即、前方へちゃきっと銃を構える。
残るは大太鼓2体、ドラムマン1体‼︎
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……な、なんで中太鼓は雷を撃ってこなかったんでしょうね?」
俺の言葉で、彼女はじっと俺の頭を見る。頭?
「……アフロ頭のハルちゃんを自分達の仲間だと誤認識した……とか?」
「……えっ? マジっすか?」
「えっ? ハルちゃん?」
驚きのあまり、思わず素の声が出ちまった!
いかんいかん。
「な、何でもないですわ、オホホホホ」
「?」
不自然な俺の言葉遣いに怪訝な顔をするウルエさん。
ダーンッ! ダーンッ! ダーンッ!
だが大太鼓の轟音ですぐに、彼女の注意が俺からカミナリ様へと移る。
大太鼓は鳴ったが、雷撃は今の所こっちに落としてこない。ラッキー!
ん? ん?
……やっぱ本当にアフロ頭効果、なのかな?
じゃあ……次も同じ特攻、行けるのか?
ぽたぽたぽたっ……
さっき全力で走り過ぎたからか、全身から滝の様な汗が流れ落ちる。
あぁ、暑いぜ、ちくしょう!
カツラの中も蒸れて、なんかむず痒いよ。
ぽりぽり、ぼとっ!
………………
「えっ?」
「えっ?」
俺の足元に黒いもじゃもじゃ雲……じゃなくってアフロ頭がずり落ちた。
マジかよ、大量の汗で頭が痩せたのか?
さっき、あれだけ外れなかったのに、何で今?
………………
はっ! 殺気⁉︎
見ると、開いてんのか分からないレベルだった細目をカッと開眼し、メラメラとした瞳を向けてくる大太鼓&ドラムマン‼︎
ひぃぃぃぃぃぃぃっ! 怖っ‼︎
『よくも騙したな‼︎』と、言わんばかりの怒りのお顔……。
いや、普通は騙されないよ?
あんたらの認識センサーがくそ鈍感なだけだろ⁇
「ハ、ハルちゃん……それ……」
背後からは、ウルエさんの声が聞こえてきた。




