ふわふわ
ぷすぷすぷすっ……
自分から漏れ出てくる燻った音を己の耳が外側から拾う。
体内の水分は粘膜と皮膚から蒸発していき、がくんっと両膝は崩れ……一瞬、意識が飛び……。
………………
「ハルちゃんっ‼︎」
どごんっ!
「っーー⁉︎⁉︎」
ウルエさんが俺の名を呼びながら、容赦無く蹴り飛ばしてきた⁉︎
俺の身体はバナナのように湾曲して吹っ飛ぶ‼︎
ちょ、ちょっとーー‼︎
そこ、さっきウルエさんに冷やしてもらった脇腹だから‼︎
忘れたの⁉︎ 追い討ち過ぎるよ、ひどっ‼︎
……絶対あばら骨が一、二本いっちゃってるよ、これ。
歯医者だけじゃなく、整形外科も通院決定かよ⁉︎
………………
ぐぁーーっ‼︎ 超痛ぇぇぇぇぇーーっ‼︎‼︎
一瞬、冷静になった後に猛烈な痛み‼︎
声にならない声を上げ、雲に突っ伏し呻く。
腹を抑える手が指先までビリビリ痺れていやがる!
……くそっ! 動けよ、俺の両手‼︎
ドドドドドーーン‼︎
直後、俺がいた場所に連続した雷の雨が降り注いだ!
雷雨じゃない、これじゃ雨雷だよ‼︎
……おいおいおい、一撃でこの威力なのに、小太鼓の雷撃……これ全部まとめて喰らってたら……。
想像しただけで、身体がぶるっと震えた。
……え? 普通に死ぬやん。
ダダダダダダダダダッ‼︎
俺が這いつくばっている間に、ウルエさんが残り2体の小太鼓カミナリ様を素早く撃ち取った!
「よしっ!」
カッコいいガッツポーズをする彼女。
小太鼓カミナリ様達がぱあっと散り消えて、雷撃も共に数本が消失……連動しているのか⁉︎
ちらっと目に入る、ゴーグル内の赤いハートマークは残り二つ。
……空っぽのハートが忌々しい。
「ハルちゃ、ん⁉︎ ……つ、次はち、中太鼓を……ぶはっ‼︎」
「⁇⁇ ウ、ウルエさん⁇」
彼女が俺を見て、何故かいきなり吹き出した。
身体をプルプルと震わせて……なんかツボに入っている?
「ど、どうしたんですか?」
「ハ、ハルちゃん……あ、頭がもこもこな……ア、アフロになってるよ‼︎」
………………
「はぁ? アフロォォォォォッ⁉︎」
ばっと頭に手をやる……うぉっ、マジだ‼︎
ふわふわっとした感触、さらさら黒髪ロングヘアがもじゃもじゃくるんくるんに変化‼︎
……っつうか、まだこれ外れないの⁇
フィット良すぎでしょ⁉︎ 吸盤でも付いてるの⁉︎
しかし、カツラだからなぁ……合成繊維?
熱で変性しちゃったよ、あ〜あ……。
……これ、社長にまた弁償しろって言われるよ、絶対。
カツラって、いくらすんだ? 万札飛ぶ?
バイト行けてねぇから今月お財布がピンチだよ‼︎
ドドンッ!
さっきより重めの太鼓音が鳴る!
中太鼓3体がバチ……じゃない、マレットを構えてこちらを見る……細目……その目、開いてる?
カミナリ様って聞いた時、避雷針を作ることも考えてたけど……この近距離じゃ無意味だ。
直撃を避けるしかない。
「中太鼓は小太鼓ほど動きが速くないけど、雷の直径が太くなるから避けるのに注意だよ」
頭では分かっているけど、ふわふわした雲の足場は動きづらくて、分が悪い。
マシンガンを握る手にぎゅっと力が入る。
……それでもやるしかない。
脇腹の痛みと熱さから意識を逸らすように、正面を向く。
ウルエさん、このステージをソラさんの為に、たった一人で戦っていたのか……辛かっただろうな。
今は、一人じゃないよ。
俺は信頼する仲間に背中を預け、前方へ一気に駆け出した‼︎




