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オススメ事故物件、今ならサービスで異世界ワープお付けします。  作者: 枝久
2ー2 

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戦場

 ゴーグルが見せてくる映像で(ます)々、現実感が薄れていく……まるで、シューティングゲームの世界だ。


 左上には小さな赤いハートマークが三つ並ぶ。

……これって……もしかしてライフポイント、かな? 

えっ、俺の命少なっ‼︎


 右側の円形レーダー、これは自分の立ち位置が中心で……半径何メートルの縮図だ?

オレンジ色の点が表しているのは……敵の配置?

少しずつ、位置がズレていってるのは……対象が移動してるってことだよな? 

数字表記は100、敵の総数……ですよね?

レーダー画面の中に散らばる大量のオレンジ色達、点滅するたびに俺のこめかみに玉のような汗が浮き出る。


 で……レーダー下の棒グラフ的なのは、弾薬の残量と俺のパワー残量ゲージ、か。


(ナンジ)、敵ヲ殲滅(センメツ)セヨ。』


 ゴーグルが機械的な声を発する。


「……やるしかない……よな」


 斜めがけにしていたマシンガンを背中からすっと取り出し、ちゃきっと眼前に構える!

視界内に銃身上の照準器が入ってきたことで、ゴーグル画面にスコープが反応を示した。

対象が出現したら、照準を絞ってくれるのか⁉︎


 どっくん、どっくん……


 自分の心臓の音がやけに大きく聞こえる。

……一体どんな姿をした敵だ⁉︎

もし人型だったとして……俺は……そいつを撃てるのか?


 体勢を低くし、岩陰からキョロキョロと周囲を見回す。


 ひょこっ!


 ん? 

……可愛いウサギさん……のマスコットみたいなやつが紅葉した木の陰から顔だけひょっこり出して、じぃーーっとこちらを見ている……。


 な、なんだろ? 

なんか見たことあるような……あっ、アレだ!

誕生日ケーキの上に飾られるオーナメント……マジパンではなく、砂糖菓子の人形! あの顔だ!


 金銭的な余裕が無かった俺ん家では、子供の頃にケーキを食べられたのは年に二回の特別な日……クリスマスと誕生日だけだった。

ケーキって言ったけど、婆ちゃんが半月型のスポンジ菓子パンを組み合わせて、ホイップクリームを塗ってくれた代物(しろもの)

別売りな砂糖菓子のサンタさんやトナカイを仲良く俺の皿に載せてくれたんだっけな……。

ありがと、婆ちゃん。


 ………………


 ピッピッピピピピピーーッ‼︎‼︎


 スコープの照準、三角マークがウサギさんの顔面に重なる‼︎


 えっ⁉︎ あれが……敵⁇

マジで⁉︎ あの可愛いやつ撃っちゃうの⁇


「なんだか良心が痛む……うわぁっ!」


 ウサギさんが動き出し、木の陰に隠れていた胴体がハッキリ見え、俺は悲鳴を上げる!


 バッチリ迷彩服を来て、手にはハンドガン‼︎

銃口はこちら向き、あいつの照準、対象は……俺‼︎


 オレンジの点滅が、一つ赤に変わる‼︎

ロックオンされた警告⁉︎ ゴーグルに文字が浮かぶ‼︎


DANGER(キケン)!』



「うぉぉぉぉぉぉぉっ‼︎」


 ダダダダダダダッ‼︎


 やられる前にやらなきゃ‼︎

いきなり上手くは取り扱えないが、数打ちゃ当たるを体現するようにマシンガンをぶっ放す‼︎

流れるように弾丸が飛び出し、空薬莢(からやっきょう)が落ちていく。


 俺に撃ち抜かれたウサギさんは瞬間、粉砂糖のように飛散し、風に消えた……。

よ、良かった……鮮血ブシャーなスプラッタじゃなくって……。


 小さく安堵するが、今の乱射を皮切りにオレンジの点がレーダー中心に向かって動き出す! 

やっべぇーーっ‼︎

周囲を警戒し、物陰を移動しながら、対象を素早く探す!


「あ、いたっ!」


 お菓子の家の屋根の上には茶色のクマさん!

手には可愛くない武器が握られている! 

スナイパーライフル⁉︎

凄腕殺し屋が使うやつだよね⁇ ゴルゴ⁉︎

その丸い手でトリガー引けるんかーーい⁉︎

顔がピクリとも動かないから、かえって気味が悪い! 超怖ぇぇっ‼︎


 ダダダダダダダダッ‼︎


 クマさんを撃破し、そこから怒涛の乱れ撃ち‼︎

イヌさん、ネコさん、パンダさん……迷彩服姿で武器を片手に襲い来る、敵、敵、敵‼︎


 スカッ!


「げっ! 弾切れかよ⁉︎」


 画面の弾薬残量ゲージはゼロ! 

目で見ても弾切れがわかるはずだったのに、全然気づかなかった!

弾薬のベルトリンクは空っぽ。

くそっ! 弾薬装填の仕方、分っかんねぇや!


 慌てて、マシンガンをその場に下ろし、太腿につけたガンホルダーからデザートイーグルを引き抜く!


 ダンッ! ダンッ! ダンッ!


 少しずつ目と身体が慣れてきたからか、頭が冷静さを取り戻す。

無駄撃ちは減り、ロックオン&トリガーの単純作業で、確実に敵を仕留めていく。


 ダンッ! ダンッ!


 表示は42! 既に半数は撃破‼︎

よっしゃーー‼︎ 

この調子でバンバン削っていくぞーー‼︎


 その時、再度、ゴーグルに警告音と文字‼︎

どこだ⁉︎ どこから来る⁉︎


 どちゅんっ‼︎‼︎


「がはっ‼︎」


 俺の身体は側方へと吹っ飛び、地面に叩きつけられた衝撃でチョコレートの破片と抹茶パウダーが空中へと舞い上がる!


 くそっ! 被弾した‼︎


 一瞬、呼吸の仕方を忘れる強いインパクト! 

少し遅れて、左脇腹がぐわっと熱くなる!

肋骨ヒビいっちまってないか⁉︎


 長距離弾か?

……見渡せる範囲に敵マスコットはいなかったはず……どんだけ遠くから撃ってきやがったんだ⁉︎


 分厚いクッキーサンドで出来た岩を背にして隠れ、一度体勢を立て直す。

この岩、ココアクッキーの間にチョコチップクリームをはさんでいるから容易には貫通出来ないはず!


 そっと当たった部位に触れるだけで、ズキッと痛みが走る。

ライフポイント……ハートは一つ消えて、残りは二つ! マジかよ⁉︎

あと二回撃たれたら、俺はジ・エンド⁇


「血は出てないな……これ、ゴム……いや、グミ弾なのか?」

「惜しいなぁ。グミ弾じゃなくって、これはジェリービーンズ弾だよ」

「⁉︎⁉︎」


 突如、俺の後上方から、女性の声が降ってきたのだった‼︎

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