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オススメ事故物件、今ならサービスで異世界ワープお付けします。  作者: 枝久
1ー7 

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異世界の終わり、そして……

「ふぷーー‼︎‼︎」

「⁉︎⁉︎」


 かろうじてまだ銀色のメーさんが、リュックを咥えながら、必死に階段を跳ね上がる!


「メーさぁぁぁん‼︎‼︎」


 崩壊しかけの世界、まだエネルギーはあるのか⁉︎ 最後の賭け‼︎


 掌から『粘着』魔法陣を……展開っ‼︎


「よしっ、出たっ‼︎」


 びよーーん、ぴとっ!


 メーさんを一気に手元へ引き寄せる‼︎

鏡とメーさんが合わせ鏡となり……


 びかーーっ‼︎


 目も開けられない閃光が鏡から広間に溢れる‼︎




 しゅうぅぅぅぅっ……


 やがて光は収束……。

目を開けると、土足のまま、俺は綾瀬1Rの洗面台の前に立っていた。


「……い、やったぞーー‼︎ ありがとうメーさん‼︎」

「ぷるぅ!」


 高い高いするように持ち上げると、メーさんも金色に光り出す!


「‼︎」


 転生者は消滅しない……なんて、ご都合主義が通るはずもなく……。


 最期に優しい声を上げた掌上の魔物も光り輝き……粒子となって……そして、消えた……。


 ぺたん……


 俺はその場にへたり込む……。


「ううっ、メーさん……いや、ショータさん……」


 パリィィィーーンッ‼︎


 メーさんの『消滅』と同時に洗面台の鏡が割れ散る‼︎

……マサさんの異世界は、これで本当に終わったのだった。



「うっうっ……皆、ありがとう……ございました……ショータさん……チャル……ユルファ……フィング……JJ……トモユキさん……ハヤトさん……マサさん……」


 洗面所の床に崩れ落ちた俺は、しばらく独り、泣いた。

止めど無く溢れる涙が枯れ果てるまで……。





 しばらく経ってようやく動き出せた俺は、よろよろと立ち上がり、社長に連絡を入れた。



◇◇◇◇



「あ〜あ、洗面台の弁償……貧乏人のお前じゃ無理だろうな」


 ………………


 ……異世界から無事に帰還して、一言目は『お帰り』じゃないんですか、社長? 

あんた鬼ですか?


 現実世界ではたった四時間未満の異世界探検……思ったよりも自分にとってはハードモードだった。

体力的にではなく、精神的に……。


 ばあちゃん以外の存在と、こんなに時間を共有したことは、俺の人生で今まで無かったな。


 無性に、今はただ……何だか、寂しい……。


「しっかし、酷ぇ顔だな? さっさと顔洗って、引っ越しの準備しろ!」


 ………………


「はぁ? 引っ越し⁉︎」


 また唐突‼︎ 意味が分からない‼︎


「お前、契約書読んで無いのか? 『②出ない物件が異世界消滅し、通常の賃貸物件になった場合、速やかに部屋を明け渡す』って書いてあるだろ? ほら、ココ。契約書はちゃんと読めよ。そんなんじゃ悪い大人に騙されちまうぞ?」

「ほ、本当だ……か、書いてある」


 社長が差し出した契約書には、確かに小さく一文が記載されていた。

悪い大人……今まさに目の前で弄ばれておりますが⁉︎


「俺の管轄物件じゃなくなったら、他の不動産屋に引き渡すんだよ。っつうわけで、お前まだほとんど荷解(にほど)きしてないよな? 二日分の光熱費はサービスしてやる。今から次の物件へ移動するぜ!」


 社長はニヤニヤしながら、どこから取り出したのか、新たな契約書をひらひらさせた。


 ………………


「も、もう事故物件は勘弁してくださぁぁぁぁぁい!」


俺の悲痛な叫び声が足立区綾瀬に響いたのだった。

第一部、完結です。

お読み頂きありがとうございます!


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