キャンパスノート
「はーーっ。ここペット禁止なんだけど?」
翌朝、部屋に到着した社長の第一声。
……まず、言いたいことそれですか?
朝一番に、名刺にあった番号に電話したら、とりあえずガチ切れされた。
昨日、遅くまで飲んでたらしく、二日酔いだとさ。
目つきがさらに酷くて、凶悪さ五割増しレベル。
人の一人や二人埋めてそうだな。
俺の膝の上ではメーさん……メタリックなスライム、がぷるぷるしている。
あ、なんか癒される。ほのぼのするーー。
名前を付けたら離れ難くなりそうだったけど、呼び名が無いのも何かと不便。
年齢も俺より年上だったら失礼だと思い、悩んだ末、さん付けすることにした。
「他の物件で、モンスターが出てきたって苦情は無いんですか?」
「上がってきてねぇなぁ。っつうか、よかったな。来たのがピカッピカの首無し鎧騎士とかじゃなくて……」
想像するとゾッとする。
夜中にいつの間にか添い寝されてたら、たまらん! 怖っ!
「何か情報無いんですか?」
無策で異世界に臨むのは、あまりに無謀すぎる!
縋るような目を社長に向ける。
「ちっ、情け無ぇ顔しやがって、しょうがねぇな……」
ごそごそと背中から1冊のキャンパスノートを取り出す。
ん? 背中のどこに入れてたの?
「出血大サービス、お前の前に住んでた会社員が残した、異世界のことを綴った日記だ」
なんと! ありがたい‼︎
他人の日記を読むのは忍びないが、やむを得ない。
じっと俺を見て社長が言った。
「お前はちゃんとこっちで生きろよ」
「そして毎月家賃払えよ」
……一言余計だな。おい。