このままじゃ斬れない……
ただそこに立っているだけなのに、第三形態魔王の威圧感は半端ない……空気が張り詰める。
マサさんも剣を構えたまま向き合い、静止……動けないのかもしれない。
魔王社長……これは本物の人間では無い。
この異世界が創り上げた実体のない幻影、エネルギー体。
分かってる……頭では……。
彼の額を汗が伝う。
僅かに手元が震えているのは、怒りか、それとも殺すことへの躊躇か。
勇者えこ贔屓な彼の異世界とはいえ、このままじゃ魔王を斬れない……さて、どうする?
ちらりと子供達の顔を見渡し……ぴたりと彼に視線を止める。
「JJ……一つ質問する」
「ん? なんだハル?」
「お前……パンツ履いているか?」
………………
「履いてるに決まってるだろぉぉぉぉ‼︎‼︎」
俺のセクハラ的質問に怒りの返答!
おっ、履いてるなら、心置きなく……。
「ユルファ! フィング! JJの身ぐるみ速攻で剥がせっ!」
「「オッケー‼︎」」
やんちゃ双子エルフが、生き生きとした表情の連携プレーであっという間に雪だるまの胴体を剥がした!
「ひ、酷すぎるぅぅぅぅっ‼︎」
ギャン泣きするトランクス一丁の色白な少年。
ブリーフ派では無いんだな。
うん、そこはどうでもいいが……。
「おいJJ、頭の再構築してくれ!」
「ぐすっ、わ、分かったよ」
もはやヤケクソなパンイチ少年は、瞬時に雪だるまの頭部を再生。
俺は魔王に向かって『鍵』の魔法陣を全力で展開‼︎
魔王の身体拘束、数秒でいい! 持ち堪えろよ、俺の魔法陣‼︎
「チャル! 思いっきり投げつけろぉぉっ‼︎」
「オッケー! 魔王様、新しい身体よぉぉぉっ!」
チャルが豪速球で、雪だるまセットを魔王に投げつけた‼︎
某パン工場の有能助手さんのような的確な投げ!
素晴らしいピッチャー‼︎
どぉぉぉーーーーん!
見事に魔王様の顔面と胴体は覆われ、無様な崩れ雪だるまが出来上がる!!
「マサさん! 今だ‼︎ 雪だるまをカチ割れぇぇぇぇぇっ‼︎」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ‼︎‼︎」
目の前からトラウマ対象が消えた瞬間、彼は動き出す!
ザクーーーーッ‼︎
勇者の全力の一振りが、雪だるまを縦割り真っ二つに切り裂いた‼︎




