本来はシンプル
俺の読みが甘かった……まさか、こんなことになるなんて……。
魔王城『謁見の間』、俺の目の前に広がる凄惨な光景。
それは一方的な暴力。
ドガドガドガドガドガドガドガドカッ‼︎
「ぎぃやぁぁぁぁぁっ‼︎」
「よくも散々こき使ってくれたなぁ、うらぁぁぁ! 楽に死ねると思うなよぉぉぉぉ‼︎」
魔王が勇者にボッコボッコのフルボッコにされている……想像以上の惨虐さ。
そう簡単に死ななそうな魔王が、もはや瀕死だ……。
『倒魔の剣』を使えば即終了……のところ、恨み辛みを晴らしたくて晴らしたくて震える! と、言わんばかりのパンチラッシュ‼︎
半殺し超えて、魔王九割殺し‼︎
……チート無双、焚き付けたよ?
うん、俺が悪かったよ。
まさかこんなにヤバい感じになるとは、普通思わないじゃん⁉︎
もっとハイファンタジー的な戦いを想像してたのに……。
スプラッタ苦手だよ、マジ怖ぇぇっ‼︎
おっさん勇者が両手血みどろ、サイコパス‼︎
……とてもじゃないが子供らには見せられない惨状。
皆すぐさま『安眠』の魔法陣で眠らせた……あ、メーさんも一緒に寝ちゃったよ。
武闘家も魔法使いも賢者も、異世界の創世時は役割がなかった存在。
元々、イレギュラー。
実は戦いに必要なわけじゃ無い、『冒険者』をここまで連れて来る為の役割なのだろう。
本来はシンプル。
誰かがおっさん姫を助けてあげれば、終わりを迎える異世界だった、はずだ。
たぶん。きっと。
だが、叶わず。
どうにかして願いを叶える為に、試行錯誤したプログラムが、だんだんと歪な形に複雑変化したのだろう。
結果、両極端なプログラムが派生したのか……。
……最初から叶えてあげられていたら、三人とも犠牲にならずに済んだのに……いや全てはもう遅い。
異世界は学習する、人工知能。
もはや『冒険者』はあてにならないと結論づけ、方向転換したのかもしれない。
創造主の最上の願いは救われたい……『解放』だったのだから。
……とりあえず、勇者には気が済むまで好きに蹂躙して頂きましょう。
命を失った代償、殴って気が晴れるものなら……。




