告知
産まれたての子鹿なみ、筋力ぷるっぷるのおっさんに『回復』魔法陣を展開!
悪役あるある、正義の味方の台詞言い終わりをしっかり待ってくれる……のセオリー通り、魔王様は攻撃を仕掛けることなく、階段中段辺りで足を止めてくれている。
めっちゃ、助かる〜〜!
「あーーあーーあっ……声が……」
声も筋力も取り戻したか、すくっと立ち上がり、周りを見回すおっさん姫。
創造主は話せる……記憶はあるのか?
俺達一人一人の顔を見て……あ、JJ見て、気の毒そうな顔になっちゃった。
まだ、パーツ付け終わってないからな。
「俺は……いったい……?」
「貴方は死にました」
「ハ、ハル様⁉︎」
ズバッと言う俺に、チャルが青ざめる。
「本当のことだろ? 貴方は仕事のしすぎで、突然死。享年42歳かな? で、この異世界は貴方の魂が創り出したもの。魔王を倒さないとこの世界は終わりません」
簡潔に伝えたが……さあ、どう出る?
「……そっか……俺……死んだんだ……もう……仕事、行かなくていいんだ……」
そう言いながら、ポロポロと涙を溢した。
姫様の役割的な泣き方とは違い、心からの涙……そう、見えた。
「終わらないこの異世界に閉じ込められている人がいます……もちろん貴方もだ。だから……倒しましょう、あなたの世界を」
「でも……どうやって……?」
ドレス姿で剣を握りながら、オロオロする綾瀬(仮)さん。
「とりあえず、格好から入りましょ。気持ちが大事かと。ちょっと『変身』とか言ってみたりして……」
「変身っ!」
「……素直っすね」
俺に言われた通り行動する。
……この人は根っから真面目な人なんだな。
ぷわーーぁぁっ!
仄白い淡い光が彼の身体を包み込む!
ドレスが消え、おっさんは魔法少女のように変身……おえっ。
誰が中年男性のお着替えサービスショット期待するんだよ、おい、異世界!
「こ、これは……俺が『勇者』……?」
「勇気を出せば、この異世界は貴方の意のまま……なあ、チート無双、してみたくないですか?」
俺は『勇者』を焚き付けたのだった。




