おい、聞こえてんだろ⁉︎
魔王がゆっくりと階段を降りてくる……うぉっ、急げ、急げ!
俺は『粘着』の触手を天井から吊られた鎖へ絡め、急ぎ、荊の檻へと飛び上がる!
びょーーん! とんっ‼︎
トゲまみれの柵に足をかけ、中を覗く。
暗くて見えにくいが……丸まった背中、フリフリのドレスが泣き揺れ、ひらめく。
しくしく……ひっく……っく……
「おい!」
ぴくっ!
声を掛けると、一瞬止まるが、まだ泣き止まず。
しくしく……しくしく……ひっく……
「おい、こら! 助けに来たから、さっさと出やがれ!」
しくしく……しくひっく……しくひっく……
ぶちっ!
俺の血管が小さく切れる音。
コマンドから取り出した『女王様の鍵』と『倒魔の剣』を突き出す!
「おい! これでそこから自力で這い出してこいよっ‼︎ おい、聞こえてんだろ⁉︎」
泣き声は止むが、反対側を向いたまま返事はない。
「はぁーー。いい加減にしろよ、おっさん‼︎‼︎」
俺の怒声でようやく、くるっとこちらに顔を向けた姫様……のドレスを着た、顔は40代の、おっさん!
………………
「「「「うえぇぇぇぇ⁉︎⁉︎」」」」
「ぷるーー⁉︎」
下から全員が一斉に大声を上げる‼︎
あまりの大声に、魔王も一瞬びくっとなる。
……まぁ、当然の反応だな。
姫様って聞いたら、普通は美少女想像するわな。
俺も、途中までそう思ってた……あぁ、残念。
この異世界の創造主、綾瀬(仮)さん……自分を可哀想な存在として、配置することで、彼は誰かに救って欲しかったのだ。
現実で叶わなかったからこそ、この異世界で……。




