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オススメ事故物件、今ならサービスで異世界ワープお付けします。  作者: 枝久
1ー7 

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業火

 目を凝らし、ほんの一瞬だが、スーツ姿の魔物達の奥に、確かに大きな……鳥籠の様な物を見た。


 囚われの姫様は、あの中か……⁉︎


 さっと、視線を目の前の魔物の大群へと戻す。

こいつらは、イメージから実体化した存在……だとしたら……思う存分、ぶっ飛ばしていいよね?


 ごぎゅぐぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎


 異様な咆哮を上げ、一斉に魔物が襲いかかってくる‼︎


 俺は子供達の前に一歩、進み出る。


「ハル様⁉︎ 何を⁇」

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ‼︎‼︎」


 最大級の『火』の魔法陣を両手で発動‼︎


「くらぇぇぇぇぇっ‼︎‼︎‼︎」


 どぉぉぉぉぉぉぉーーんっっ‼︎‼︎‼︎


 爆発で熱い閃光と黒煙が舞い上がる……そして、徐々に、視界が開けていく……。


「……あっ……えっ?」


 何が起こったかわからない様子の子供達。


 それは言葉通り、『あっ』という間だった。


 目前に迫っていた大量の魔物達を、俺の魔法陣で跡形もなく消し飛ばしたのだ。


 すでに『火』の魔法陣の力は最大レベルまで引き上げ済。

これを両手で発動し、大火炎を引き起こしたのだ!

『業火』の魔法陣。


 誰かが転生していたり、自我がある魔物はすんげぇ倒しづらいが、幻影から生まれたんなら、俺は躊躇することなく滅することができた。


 魔法陣……全力だとこんな感じなんだ、すげえな‼︎

テンション上がって、ドキドキする‼︎


「ハルって……強かったんだ?」


 ユルファがぽつりと呟く。


 この異世界、冒険者チート仕様なのはどうやら勘違いではなく、本当らしい。

ただ、それだけではない。俺の力だけでは……。

……それが貴方のご希望なのでしょう?


 しかし……スーツの魔物って……このイメージは、悲惨だな。

共に仕事をする仲間は、助けてくれない己の敵……魔物の様な恐ろしい存在として、常に感じていたのかもしれない……辛ぇな。



 (すす)けたレッドカーペットを進み、その先に続く階段の上を見上げる。


 壇上の最も高い位置にある王の玉座。

そこに座る暗黒の巨体と、そこから眺められる位置に吊るされた荊の檻。


「よく……ここまで来たな……」


 低い声が空間に響き渡る。


 ……うげっ、魔王様が喋ったよ!


 しくしく……しくしく……ひっく……っく……


 そして、静まり返る広間に(すす)り泣く声も響く。


 俺達の位置からは、見上げてもトゲトゲした(おり)の底面しか見えないが、声はその中から確かに聞こえる。

240年もの間……ずっと泣いていたのかよ、お姫様?


 ………………


 ……少し……気に食わねぇな。

俺は檻を下から睨む。



「……貴様が……『勇者』か?」


 段上から、再び魔王が話し始める。


 うぉっ⁉︎

身体のどこから出したらそんな声が出んだよ⁉︎

ビリビリと、皮膚が痺れるような重低音ボイス。


 魔王の問いかけに、ちょいビビりつつも、答える。


「……俺は『勇者』じゃない」


 俺の役割(ポジション)は間違いなく、ただの『冒険者』なのだ。


「……では、貴様に……我は倒せぬな……」


 そう言って、右手を横にすっ、と振り払った。


 ぶわぁぁぁぁぁーーっ‼︎


 軽い一振りで、瞬間、俺達全員の身体は後方へとぶっ飛び、壁に叩きつけられる‼︎


 ずどぉぉぉぉぉんっ‼︎‼︎


「ぐあっ‼︎」


 痛ってぇぇぇぇ‼︎

くそっ、異世界でもやっぱ痛いもんは痛いんだな……。

ちっ、流石は魔王様、ってとこか。


 周囲に目を遣ると、子供達が痛みから床に這いつくばっている……だが、取り敢えず全員生きている。

……あ、残念。

JJの顔面パーツは、また全落下。


 目の前の敵は、のそりと玉座から立ち上がったと思ったら、階段をゆっくりと降りてくる……そこ、飛ばないんかい⁉︎

ちゃんと一段ずつって……現実もそんな風に圧迫感を与える登場だったんかな?



 魔王の顔に俺は見覚えがあったのだ……。


 CMで見たよ、ブラック企業の社長さん。

死んでも尚、この野郎に囚われ続けているのか。


 ……だとしたら、姫様の解放はこれしかないだろう。


 コマンド『どうぐ』の中から、光る選択肢を叩き、取り出した。

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