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オススメ事故物件、今ならサービスで異世界ワープお付けします。  作者: 枝久
1ー7 

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鏡よ鏡……

 輝く鏡が、愛らしい声で喋り出す。


「はい、もしもし。こちら賃貸不動産会社『ワープルーム』、箱庭(はこば)がお受け致します」


 ………………


 は?


 鏡の中に映るのは……お会いしたことあります、麗しい美少女メイドさん。


 大画面ビジョン越しにアイドルを見ている感覚。

あぁ、やっぱり可愛い!


 ……じゃなくって……


 ………………


 はぁ⁇⁇

どうなってんの、これ⁇⁇

ここ綾瀬(仮)さんの異世界の中でしょ⁉︎⁉︎


「えっと……これはいったい……?」

「あら? ナギスギさんじゃないですか! ちょっと(あまね)〜〜!」


 事務員ちゃんが社長を呼び捨て。


「ん? おぉ、ここまで来たのかやるじゃねぇか。そういえば……お前の名字あんま他にいねぇよな」


 相変わらずニヤニヤした顔でこちらを見る、人相の悪い邪悪なブルジョワお兄さん。

っつうか漢字三文字の名字のお方に言われたく無いわ。


「……なんで、鏡がそちらと通じているんですか?」

「不動産会社として、物件の管理は大事だろ?」


 俺の言葉は社長と通じていない。


「元々、管理用に設置してあったんだが、ここまで来た居住者がいなくてね」


 そりゃ、魔王目前の部屋ですからね……。


「……いったいどうやって異世界に設置出来るんですか?」

「うちの従業員が優秀だからなぁ」


 またも答えになっていない回答をして、メイドさんの肩にポンと手を置く。


 ……どんだけ有能なの? 

美少女メイド事務員ちゃん!

ちなみに、社長のスキンシップ嫌だったら、セクハラで訴えること可能ですよーー‼︎


 ありえない異世界で、さらにありえない現実世界の会社員の対応に、ただただ困惑させられる。


 鏡……ふと、この異世界にやって来た時の映像が頭を(かす)める。


 あっ‼︎


「フィング!  メーさんを隠して!」

「えっ? あぁ、はいよ」


 ばさっと上着の裾を広げて、フィングが自分の服の中にメーさんを隠す。


「おっ! 察しがいいな」


 俺の判断に社長がニヤニヤ喜ぶ。


「そうだ。ここから、合わせ鏡で元の世界に戻ることが可能だ」


 やっぱりな。


 社長の言葉で子供達が、バッと一斉に俺の顔を見る。


「ハル様……」


 不安そうなチャルの頭をそっと撫でる。


「っつうか……お前、小児愛(そういう)趣味なのか?」

「えっ⁉︎ いや、これは成り行きで……」

「なんか保育士さんみたいですね」


俺らパーティを見て、社長達がそう話す。


 子供達に囲まれているからな。

……そういえば、ここまで年配者は登場して来なかったな。


「いや、意外。お前は単独行動を好むと思ってな」

「俺も……自分で意外でした」


 異世界を巡ってくる中で、自分がこんな風にそこそこ面倒見良い奴だとは、正直思わなかった。

新鮮な発見。


「っつうか社長! ちょっと無責任じゃねぇ? この異世界は……」

「冒険者の魂を取り込む異世界と繋がっている、危ない物件を紹介するなんて……ってか?」

「ぐっ……そ、そうだよ!」


 俺がクレームをつける前に、言い当てる。

全て分かっていて、この人はこの仕事をしているんだな。


「最初に行方不明者の件は話しておいたはずだが? うーん……じゃあお前は『駅員なら電車に乗るお客さんが飛び込まないよう、乗り込む全員の行動を監視しなさい!』って言うのか? 違うよな? 契約後に何があっても、当社は責任を追いかねる、全ては自己責任論。……ハルなら一番共感すると思ったんだがな?」

「……」


 俺の訴えは正論ブーメランになって戻って来た。

社長に口で勝てる気がしない。

まるでラスボス。

……ん? 何で俺の性格、知ってるんだ?

まだ知り合って、たった一日だぞ?


 ……でも、社長の言う通りだ。

自分で選び、進んで、今ここに俺は立っている。

誰のせいでもない、自分の意思。


 災害や事故は除くとして……人生は一つ一つの分岐点で選択肢(コマンド)を選び、繰り返し、最良と思われる道へと進んできて、現時点ここに存在している。

その理論からすれば、最新の自分は最高……のはずである。


「この鏡は、むしろこちら側の配慮だ。一つの選択肢を追加するんだから」


 俺の選択は……決まっている。

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