上陸!
濁る曇天の下を海の魔物が高速で泳ぎ進む!
「あ……やっべ」
俺はあることを忘れていた。
ザラタンの操作、左右への舵取りは出来るが、止まる方法を考えていないことに気付いたのは、着陸目前……が、もう遅い‼︎
このスピードだと、激突するな……うん。
「皆、飛べぇぇぇーー‼︎」
俺の叫びと共に、全員が魔王島の陸地に慌てて飛び降りる‼︎
ばっしゃぁぁぁぁぁぁぁん‼︎‼︎
ザラタンが岸壁へと激しい水流を叩きつける‼︎
飛びながらも、『風』の基本魔法陣を両手に展開!
子供達もザラタンも風を纏わせ、衝撃を緩和‼︎
間一髪、誰も怪我なく島へ到着し……あ、JJ着地失敗して前面がだいぶ削れちまってる……大規模修繕工事が必要だな。
「ユルファ、フィング直してやってくれ」
双子にJJの修復を頼み、周りを見渡す。
ついに辿り着いたな……緊張感が漂う。
空には海上よりもさらに濃くヘドロの様な雲が重く垂れ込めている。
大地は草一つ生えない溶岩地の様相。
日の当たらない空間はそれだけで不安感を煽ってくる。
さあ、落ち着いて、おさらいをしよう。
ポケットからスマホを取り出す。
時刻は14:15
異世界探索開始から、現実世界で約一時間ちょい経過。
この異世界は、亡くなった綾瀬(仮)さんの魂が作り出した世界。
終わりにしたがるプログラムと拡大させたいプログラムが鬩ぎ合い、冒険者の命は三人分飲み込まれている。
ここまでは割と平和にやって来られた……たぶん。
魔王城の中もそれが通用するとありがたいんだが……そうは問屋が下ろしちゃくれん、ってか。
「ねぇねぇ、ハル様! 魔王を倒して姫様を救ったら、姫様と一緒に村で暮らそうと思うんだ!」
「ん? お、おう……?」
チャルいきなり、どうした?
「俺達は母ちゃんが待ってるから、森に帰るよ。」
「なぁ、こいつ連れてっていい?」
フィングがメーさんを気に入ったのか、ずっと小脇に抱えている。
お、お前達も……?
「ぷぷぅん……」
魔王討伐の先が無いことを理解するメーさんも不安そうな声を上げる。
「俺様も山へ戻ったら、皆に伝説を語り続けていくぞ! 主に俺様の武勇伝を‼︎」
JJ……お前まで……。
こ、これは、まさか……。
急に胸騒ぎがする。
死亡フラグ立てまくりの子供達の言動、俺の嫌な予感がガッツリ的中しないことを今はただ願うばかりだ。




