海上の乗り物
透き通った海をどんどんと泳ぎ進み、細かな白い波が左右に瞬く間に広がっていく。
「ぴぎゃぁぁぁぁ‼︎ やっぱり怖いぃぃぃっ‼︎」
「早えぇぇ! おもしれぇぇぇ‼︎」
「思ったよりスピード出るじゃん‼︎」
「魔王め、首を洗って待っておれぇーー‼︎」
「ぷぅぅん!」
俺達は双子が釣り上げたザラタンの甲羅の上に乗り、魔王城を目指し、海を突き進む。
亀って、もっとのんびりゆっくりしたイメージだったが、海の中では結構なスピードで泳いでいくんだな……。
魔物達は自然と目を覚ますまで放っておくつもりだったが、子供らが海鮮バーベキューを終え暇になってしまったので、急遽、回復魔法陣でザラタンとメーさんを起こしたのだった。
「ほらよっと!」
右肩を叩き、コマンドから『どうぐ おの』を選択。
大きめの両刃斧の斧頭部分には丸い穴が空いており、ザラタンの頭角部分にこれがバッチリのシンデレラフィット‼︎
突き刺した斧がまるでハンドル代わりになり、左右に斧を動かすことで、頭部が振れ、自由自在に舵を切れる。
本来は木を切って、何かのアイテムの材料にしたり、木材の売買で金貨稼いだりするんだろうが、『獣族の村』のスローライフをちゃんとやり込んでない自分にとっては、このくらいの道具の使い方で丁度いい。
「やっぱり、異世界、こうでなくっちゃ!」
ザラタンは一直線に突き進み、水飛沫をあげ、風は後方へとぐんぐん流れていく。
非現実感を味わいながらも、頭は冷静に思考を巡らす。
この世界とお別れするまで、残りあと僅か。
目的地は、見上げると目前まで迫っている。
もう少し、あと少しで、全てが終わり。
……この世界を、終わらせます。




