ライバル心
「いやぁぁぁぁぁ‼︎‼︎」
甲高い悲鳴が響き渡る!
振り返ると、チャルが人魚の腹部、マグロだったら大トロの辺りにガブリと齧り付いている‼︎
こら、わんぱく喰いはお止めなさい‼︎
「チャル! それは餌じゃない‼︎」
「はっ! お魚だと思って、つい……」
ぱっと歯を離すが、猫娘の歯型が人魚の身体にくっきり……。
「ひ、酷すぎるぅぅぅ‼︎」
号泣しながら絡まり人魚が、びちびちと跳ねている。
彼女が跳ねると、連動して揺れる二つの丸い部分……思わず目が釘付け、離せない!
あ、また鼻血出そう…いかんいかん!
首を揺すり煩悩を振り払おうとする俺を見て、チャルが何やらむすっと膨れて、ぷくーーっと河豚顔。
だがな、チャル、仕方がないのだよ。男の本能。
幼女がナイスバディ人魚にいくら嫉妬しても、無駄無駄無駄ーー‼︎
「私だって……やればできるもーーん‼︎」
気合いを入れて、チャルは武闘家の覇気を放つ!
……うん?
気合い入れる所、なんか間違ってない?
ぼうんっ!
大きな音とともに砂埃が宙を舞う。
「どうにゃ⁇」
突然、子猫娘の姿は消え、すらりと長い手足の元気系猫娘が出現した。
………………
え?
同じクラスにいたら皆が惚れるだろう、なにこの天真爛漫な可愛いさ⁉︎
鼠耳系がタイプな俺でも、心がグラつく猫耳ガール‼︎
揺れる尻尾に鼓動が早まる‼︎
やべぇ、超カワイイ……。
「チャルさーーん⁉︎」
うそーー⁉︎ マジ? お前、変身できたの⁉︎
……最初からチャルさんがこれバージョンだったら、俺も異世界に逃げ込んでたかもよ?
ふーーあぶねぇ……。
「ちょっとぉぉ……いい加減、解いてよぉぉ……」
俺達に完全に忘れ去られた人魚が、砂の上でしくしくと泣き続けていた……。
◇◇◇◇
ばちーーん‼︎
「ひでぶっっ‼︎」
釣り糸を解くと同時に、人魚が尾鰭ビンタをお見舞いしてきた……のをひらりと避けたら、思い切りJJが顔面に喰らった‼︎
顔面の全パーツが綺麗にぶっ飛び……砂の上をおろおろと手探りで探している。
ようやく全て拾い、元の場所に付けたつもりのようだが……残念!
鼻のニンジンが左目に刺さっているよ?
「ふんっ! 失礼しちゃう‼︎」
怒りながら、人魚ちゃんが海へと帰っていく……怒り顔もやっぱり可愛い。
もう少し拝んでいたかったな……。
でも、まぁ、いっか!
こっちには超可愛いチャルさんがいる!
くる〜りと振り返ると……すでに元のちまっとした幼女に戻ったチャルが、浜辺のカニを突いて遊んでいた。
………………
「何でだよぉぉぉぉぉーー⁉︎」
絶望した俺は手と膝を地面に着いて絶叫したのだった……。
「ハルってまともなフリしてるけど、時々クレイジーだよね」
「あぁ、珍しく同意見」
釣り上げたタコを『火』の魔法陣でこんがり焼き、もぐもぐ齧りながら、双子がそう呟いていた。
その時、双子が仕掛けた浮きが激しく沈んだ!




