表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オススメ事故物件、今ならサービスで異世界ワープお付けします。  作者: 枝久
1ー5 

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/166

流れ作業

「はーい、どんどん進んでね!」

 

 チャルが雪兎軍団を並べて、ユルファとフィングがどんどん(さば)いていく……と言っても切り刻んでいるわけではない。


「な、何をしておるのじゃ?」


 女王様がキョロキョロと、見慣れない光景に戸惑っている。


 俺はちょっと考えて、『X線検査機』の魔法陣を錬成したのだ。

空港の手荷物検査のように、魔法陣の上をどんどんと一列に並んだ雪兎が通過、魔法陣が発する眩い光が身体の中を透かして探知。


 ブーーッ!

異物を発見次第、ブザー音が鳴る。


「おい、ハルーー!」


 検知された雪兎は二匹。

ユルファとフィングがそれぞれ一匹ずつ抱っこしている。

JJとは違い、雪兎の身体はそこまで簡単には溶けないようだ。


 くるりと振り向き、俺は先輩方に声をかける。


「お待たせしました」


 巨大な氷竜さんの隣にはリュックの上にちょこんとメーさん。

その隣にはまだブルブル震えている青兎さん。


 すぐさま逃げ出すと思ってたけど……どうやら逃げ出せなかったのだな。

腰が抜けたんだろう。


「さぁ……鍵を頂きましょうか?」


 カツアゲするヤンキーのように、俺はずいっと青兎さんの前に顔を突き出した。

青兎さんにとったら、魔王よりもなにより恐ろしい最新の冒険者。


「キューーッ‼︎」


 怯え、かよわく鼻を鳴らす。

兎に犬猫のような声帯は無く、鼻を鳴らして感情を露わにする。

この雪兎達も同じだな。


 青ざめた兎……青兎さんを、そっと持ち上げ伝える。


「俺は、この世界を終わらせに行きますよ。終わらないこの世界を……」


 前にメーさんにも言ったな、同じ言葉。


 俺の言葉を聞いた瞬間、青兎の眼からポロポロと雪の結晶が止めどなく溢れ落ちる。

氷竜も何も言わないが、首をゆっくり下げた。

一礼したように見える。



 この異世界で亡くなり、転生して少なくとも60年以上経過しているのだろうか?


 いつ記憶が戻ったかはわからないが、知識のある者が言葉の話せぬ魔物になり、燃やされ消滅しても、また転生させられる……この世界が終わらない限り、きっと延々と……。


 辛く苦しい現実世界から逃れた先は、穏やかで甘美に魅せたハリボテの世界。

地獄の先が、天国のフリをした地獄。


「……」


 少し間があってから、俺の手の中で、もぞもぞと動き出した青兎さん。


 そっと小さな身体を雪の上に下ろす。

彼はスカートを(たく)し上げるように白い皮をよっこいせと持ち上げ、ゴソゴソと中を(まさぐ)っている。

そんな所に隠してたの?


 すっと、女王様のとは違う形の鍵を俺に差し出した。


 次に、ぴょんぴょんと双子の所に行き、残り二匹の鍵も皮をびろーーんと(めく)り、取り出した。

……なんか身体の構造面白ぇな、よく伸びる皮だこと。


 こうして氷の魔物達を溶かすことなく、俺達は静かに四本の鍵と剣を手に入れたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ