鍵
食後、ちょうど良い頃合いにまた、雪山から地響きが鳴る。
本当に、一旦帰ったんだな、律儀。
「ほーほっほっほ! そぅ、妾達が鍵を護りし雪兎のぉぉ……」
おしゃべり女王様達の再来!
雪山からようこそ。
雪兎の集団トレーンが美しかったなぁ、これはこれで圧巻。
ちょいちょいとJJを指で招き、耳打ちする……っと、耳どこだ?
「前の冒険者の時とここまで同じ展開か?」
「全然違う! あんな奴知らない‼︎」
あぁ、だろうな。
メーさんの反応でそんな気がしたんだよ。
冒険者といえど、獣族型の女王様に火をつけるとは考えにくい。
「じゃあその時どうやって、鍵を手に入れた?」
「前の冒険者は『炎』の魔法陣で雪兎を全部溶かしたんだ! 魔物を全部退治したら、鍵が一本落ちていたんだ‼︎」
ショータさん信者のJJはキラキラした目で語る。
予想通りの答え合わせ。
「ちょっとーー⁉︎ 話聞きなさいよぉぉぉぉ‼︎」
放置プレーで、女王様は怒髪天!
黄金の杖をブンブン振り回している。
やべっ、聞いてないのバレてたか。
「えーと……とりあえず、鍵は女王様が一本持ってて、あと三本を雪兎の中から探せば良いんですかね?」
「うそ……なんで⁉︎ なんでわかったの⁉︎」
いや……貴方様、ずっと杖として見えるところでぶん回していらっしゃいますよね?
え? なに、コントなの?
「ふふふ、よくぞ見破った! しかし、残り三本はそうそう見つからないぞえ?」
不適な笑みを浮かべ、女王様は杖、いや鍵をザッと雪原に突き刺したのだった。
「この中から、鍵持っている子……あと三匹選ぶのぉ⁉︎」
雪兎の群れに囲まれ、チャル達は困惑している。
動物公園に連れてきたのに、思った程は喜んでもらえなかったお父さんの気持ちは、きっとこんな感じだろう。
氷竜は透明な身体だから一目でわかったが、雪兎の透けていない外見からでは判断は不可能。
さて、何を錬成しようか……?
『どうぐ なべ』を前に雪兎軍団をじっと眺める。
「えーーん! 全然わかんないよーー!」
「どこで見分けりゃいいんだーー⁉︎」
「……もう、全部溶かしちゃえばいいんじゃん?」
びくん!
フィングの一言で、急に大きく身体を揺する雪兎が一匹。
俺は見逃さなかった!
「チャル! その青ざめた奴を捕まえろ‼︎」
「オッケー、ハル様‼︎」
返事と同時に素早く雪兎の海に飛び込む‼︎
おしくらまんじゅう状態の雪兎に逃げ場はなく、あっさりとチャルの腕の中。
ジタバタと踠いているが、無駄。
ただ可愛らしいだけ。
「貴方が鍵を一本持っていますね?」
雪兎に問いかける。
再び、びくっと身体を揺する。
顔色悪すぎて、もはや雪兎ならぬ青兎だ。
「悪いようにはしませんよ、今は……。貴方も、氷竜さんも……」
青兎は、死にそうな顔でブルブル震えたまま。
氷竜は、目を閉じている。
少し前、メーさんがショータさんだと気づいた時に、また別の疑問が沸いたのだ。
『ショータさんの前二人、冒険者達の魂はいったい何処へ行ったのか?』と。
答え、『おそらく何者かに転生している……』はず。
「ねえ、先輩達?」
言葉を理解する魔物達にそう問いかけたのだった。




