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オススメ事故物件、今ならサービスで異世界ワープお付けします。  作者: 枝久
1ー5 

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お昼の時報

 女王様が俺達を見渡し、すぅっと目を細める。

赤い瞳に怪しい光が宿り、美しい顔がなんだか意地悪そうに醜く歪む。

軽い沈黙の後、彼女はゆっくりと口を開いた。


(わらわ)達が鍵を……」


 ぐきゅるぅぅぅぅぅぅぅぅーー‼︎


「あ……」


 女王様のたぶん結構だいぶ重要な台詞(セリフ)を思いっっ切り遮るように、チャルのお腹の虫の鳴き声が雪原に響き渡る。


 あぁ、そういえば、エルフの森での朝ご飯から、まだ昼ご飯休憩を取っていなかった。

雪原はこの世界の太陽を隠してしまうから、はっきりとは時間がわからない。


 チャルの腹時計がお昼をお知らせしまーーす。


「ちょっとすみませーーん! 子供達のお昼ご飯の時間なんで、食後にまた来てもらってもいいですか?」

「な、なんですってぇぇぇぇぇぇっ⁉︎」


 女王様はご立腹‼︎

まぁ、当然ですよね?

せっかく雪山から滑り降りてきたのに、また戻らされる屈辱。

リフトはないから、どうやって戻るんだろう?


「嫌だわ、なんて軟弱な仲間なのかしら? 私の優秀な兎達とは大違い……」


 きゅるぅ。きゅるぅ。きゅるぅぅ……。


「……」


 雪兎軍団の腹の虫達も、つられて鳴き出した。

……お前らの主食って何? 凍ったニンジン?



 女王様と雪兎達はぞろぞろと、とりあえず帰って行った。

しばしお昼休憩。


 また後ほど軍団で滑り降りてくるんだろうな、次は直滑降か?

頭の中で雪兎達が一列に並んで滑り降りるイメージ……おっ! 見てみたいかも!


 俺の横には腹が減って動けないチャル達が雪の上で座り込んだり、寝転んだり、頭をJJの胴体に突っ込んだりしている。

……うん、相変わらず、自由だ。特にユルファ、お前だよ。


 今度は後ろを振り返り、頭上に向けて腹から声を出す。


「なぁ‼︎ あんた『かまくら』作れるかいっ?」


 氷竜に大声で話しかけた。


「……」


 無言。

巨体は微動だにせず、返答は無い……が俺の声は届いているように見える。


 次の瞬間、ぐぅっと顎を上げ、大きく口を開き、放たれる‼︎

氷竜の息吹(ブレス)‼︎


 どぉぉぉぉぉーーーーん!


 小さな氷山に穴が空き、氷の洞窟ならぬ、トンネルが出来上がった。


 ………………


 かまくら……いや、思ってたんと違う……もっと、こう、大福のような、つるんと……。

っつうか、貫通しちゃ駄目じゃん! 

こんな風通し良過ぎじゃ、意味ないから‼︎


 ……あぁ、こいつが敵じゃなくてよかった‼︎ 

マジで……。


 急ぎ『氷』魔法で修繕し、ちょっと歪なかまくらを仕上げた。


 次に、リュックから、ミーフィさんに渡されたピクニックセットを取り出し、かまくら内にレジャーシートを敷く。

中に子供達を転がすが、JJは入り口の外。

おい、いじけるなよ。

だってお前、中身出ちゃうだろ?


 右肩を叩いて、コマンド『どうぐ くすり』を開き、『ミーフィのご飯』を選択、ミニテーブルへと並べる。


「「なんで⁉︎ 母ちゃんのめし⁇」」


 双子が驚くのも無理ない、教えてもらった時に俺も驚いた。


 医食同源。

『食べるものと薬となるものの源は同じ』と言って、ミーフィさんが旅立ちの前、ぎゅうぎゅうこれでもかと詰め込んできたのだ。

世間のお母ちゃんあるある、食べ物いっぱい持たせたがる。


 ……出来ればピクニックセットもリュックじゃなくて、謎の収納空間『どうぐ』に入りませんでした? 

微妙に重かったぞ?


「「「いただきまーーす‼︎」」」


 ようやく子供達の元気な声が戻り、かまくら内はランチ争奪戦の舞台へと化した。


 それを眺める俺の隣で、静かにメーさんが鉱物ではなく、サンドイッチを食べている。

ぽろぽろと時折、涙のような水を溢しながら……。

よかった……懐かしい味でしたかね。

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