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オススメ事故物件、今ならサービスで異世界ワープお付けします。  作者: 枝久
1ー5 

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雪崩?

 雪の斜面を滑走する雪の大群……そう大群が走ってくる‼︎


 雪崩だと思ったそれは、雪崩ではなく、雪兎(ユキウサギ)の群れ! 

雪山を猛スピードで滑り降りてくる‼︎

だんだんと距離が近くなってくると、美しいシュプールを描く個体も数体見られる。

あっ、あいつコークスクリュー決めやがった‼︎


 ざぁーーっ!


 雪兎集団は雪を撒き散らし、見事なターンを決めて停止したのだった。


「雪崩?」


 じろっと賢者に視線を送ると、すぃーーっと視線を逸らせ口笛を吹く……無駄な誤魔化し方。

ん? その顔で口笛吹けんの? どうやって?


 唖然(あぜん)とする俺達の前に、雪兎集団の中から一匹がぴょんと飛び出した。


「あら、剣は手に入れたのね」


 そう、二足立ちした雪兎は言葉を話す。

真っ白な身体にメーさんより一回り大きい程度のサイズ感。

赤い瞳はさくらんぼの様に艶やか。

他の個体と違うのは、頭に小さな氷の冠を載せている。


「ふふっ」


 不敵に笑ったと思ったら、周囲の雪を巻き上げ、小さな竜巻をその身に(まと)う。


 ぶわぁぁぁぁっ‼︎


 次の瞬間、ふっ、と竜巻が消失し、そこには人型……いや、獣族型の魔物が立っていた。


 舞い散った雪の結晶が光に反射して煌めく。

変身……兎型から兎耳(ウサミミ)の獣族型に姿を変えた雪兎の代表者。


「驚いたかい?」


 そう言って、ふっと微笑む。

その姿を見て、一瞬、俺は呼吸を忘れた。


 ふわふわっと長い兎耳、透き通る銀髪とスタイルが際立つ純白のマーメイドドレス。

その手には金色の(ロッド)

赤い瞳と赤いマントが白との対比的(コントラスト)で雪原に鮮やかに映える。

頭にはさっきのまま、キラキラとした小さな氷の冠をちょこんと載せている、威厳ある風格は王女ではないな…美しい女王様だ。


 なのに……俺は下を見下ろす……そう、下。


 ちょこん、と。

サイズが雪兎のまま……そう背丈が小人なのだ。

……何でだよーーミニマム女王様ーー‼︎


 それだけじゃない‼︎

兎の変身! 男だったら……男だったら、バニーガール妄想するでしょうが‼︎

えーー! 

ちょっとくらい夢を見させてくれてもいいじゃんかよーー‼︎ あぁーー‼︎


 健全な男子である俺は勝手に期待し、一人で落胆したのだった。ちーん。


 ふと、メーさんが俺の手の中でぷるぷると小刻みに震えている……少しも寒くないはず……(おび)え? 困惑?


 俺は雪兎達とメーさんを見比べる。


 ……そうか……おそらく氷竜の時と同じ。

ショータさんは『炎』で雪兎を溶かして……魔王城の鍵を手に入れたんだな。


 魔物を倒して何が悪い? 

アイテムを手に入れる為には仕方ない尊い犠牲だ……と言えば聞こえはいいが……。

こちらの都合で、一方的に魔物を排除したのだ。


 氷属性の魔物が溶かされる、それは当然『死』を意味する……この世界では『消滅』だったな。

自分の過去の行動を振り返り、そして戦慄(せんりつ)


 正義の名の下の虐殺は戦地では英雄だが、平和の上で(さら)されればただの罪人だ。

それと似たような感覚に今、メーさんは襲われているのかもしれない。

同じ魔物に転生して知る、向こう側の感情。


 ふと『エルフの森』で見たスマホの写真を思い出す。

数は少ないがショータさん自身が映る写真も数枚残っていたから、顔は知っている。

穏やかで柔らかい表情は、たしか家族写真だったかな?


 この世界の前冒険者として何の疑いもなく、突き進んでこの『雪山脈』を攻略、魔王城の前へ行き……そして貴方は気付いたはず。


 この異世界は何かがおかしい。

安らかな死後にも地獄を見せてくる……この世界は終わらない悪夢だ。

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