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オススメ事故物件、今ならサービスで異世界ワープお付けします。  作者: 枝久
1ー5 

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摘出

「ぷぷるぅ?」

「えっ? 『どうすんのか?』って?」


 少し心配そうな声、優しい親父さんとしては当然の反応だな。

自分(うち)の子供に危険なことをやらせようというのか⁉︎ と。


「ま、悪いようにはしませんよ」


「おーーい、お前らーー‼︎ ちょっとこっち来て背中向けろー‼︎」


 皆、雪遊びで冷えたな、顔が赤くなっている。


 素直に横並びになった子供達の背中に、ペタペタと『貼るカイロ』の魔法陣を貼っていく。

……フィングの隣にJJ並んじまってるが、お前には貼らんぞ、溶けるわい。


 くるっと双子の方に向いて尋ねる。


「お前ら、『氷』の魔法陣は使えるか?」

「当たり前だろーー?」

「基礎中の基礎だ」


 ふふん、と鼻を鳴らす二人。

それを聞いてチャルが疑問を呈す。


「何で『氷』? 氷竜(アイスドラゴン)の相手なら『炎』の魔法陣じゃないの?」

「言っただろ? 『摘出』って。別に氷竜倒すつもりはねぇーーの。剣だけ取り出せりゃそれでいーーの」


 余計で無駄な事はしない主義。

魔物(モンスター)であっても、無闇に葬るつもりはない。


「ユルファとフィングは少しの間、『氷』の魔法陣で氷竜の動きを止めてくれ……止め切れずに氷竜が暴れるようなら、すぐにチャルが二人を抱えて逃げること。わかったか?」

「「「はーい‼︎」」」


 三人揃って手を挙げる。

うん、良い返事だ、よろしい。


「メーさん、これ預かってて!」


 肩にかけていたリュックに魔法陣を貼って雪上に置き、その上にメーさんを乗せた。


「ぷる!」


「「ハル! 準備オッケー!」」


 ユルファとフィングが氷竜の背後で、魔法陣を両手の前で展開。

さらにその後ろでチャルが重心を下げ、武闘家の構えを取り、いつでも飛び出せる準備。


 意外にもJJは何も言わずに、ことの成り行きを見守っている……賢者は何を考えているのか。


 氷竜は目を閉じ……ただ静かに座ったまま。

……もしや、こちらの声を理解できているのか? 

それとも、倒される役割(プログラム)を知っているのか?


「いくぞーー‼︎」


 俺の合図で、双子が『氷』最大出力で発動‼︎


 カキィィィーーンッ……


 氷竜の両足元から尻尾は、雪原から生えた無数の氷の塊により、純白の大地にしっかり繋ぎ止められた!


 俺は氷竜の左脚の前に立ち、自分の背丈より大きい爪に左手でそっと触れた。

そして、ずぼっと右手を爪の中へ突っ込んで、ぐっと剣を掴み、一気に引き抜く!


 一瞬の出来事。

ぽたぽたと、水の(したた)るいい剣が引っこ抜けたのだ。


「……はぁーー⁉︎ ど、どうなってんだよ⁉︎」


 今まで黙り込んでいたJJがとびきり大きな声を上げた。


「どうなってる……って、『摘出』だって言ったじゃん」


 『火』の魔法陣は最上級まで錬成してある為、魔法陣を作り出さなくても右手で触れるだけで発動が可能。

同時に左手で『氷』の魔法陣を展開。


 右手で氷を溶かし進み、左手は周囲を再凍結させながら、氷竜の身体に手を差し込み、取り出したのだ。

きっと、痛みも最小限のはず。


「ユルファ! フィング! 解除だ!」


 その声で、氷竜の足元の氷塊はふぅーっと粉雪に変わり、消えた。


「おーーい、チャルも解除だーー!」


 戦闘態勢を解き、大きく伸びをする子猫娘。お疲れさん。


 氷竜を見上げ、礼を言う。


「ありがとう。お前は賢いなぁ」


 すぅーっと、氷竜が重い(まぶた)を上げる。

透き通ってキラキラしたガラス玉の様な瞳がこちらを見た。

……何を考えているのか、竜の気持ちは読めないな。


「こ、こんなの……冒険者のやり方じゃない……」


 振り返ると、JJが身体を震わせ、呟いていた。

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