じゃ、契約を……
「ん? 何か問題あるか?」
「病死はともかく、三人行方不明って問題しかないじゃないですか‼︎ ま、まさか幽霊……⁇」
ひーーっ‼︎ 怖すぎるーー‼︎
ど、どこだ、どこだ⁉︎ どこにいる⁉︎
青い顔でキョロキョロ辺りを激しく見回す。
「俺はオカルト的なことは詳しくないが……」
事故物件専門の仕事してて、言っていい台詞じゃないだろ⁉︎
「うちが取り扱っている物件は……①出るか ②出ないか、の2種類だな」
やっぱり出る物件あるんじゃないか! 怖っ‼︎
「ちなみに、ここは出ない」
ハッキリと言い放つ。
マジか?
えっ嘘、マジで?(嬉)
「じゃあ、何で行方不明者が……」
格安が実は嘘で後で高額請求されて夜逃げ、とか?
それだったら詐欺だろ。
「人間は肉体が死んでも、魂のエネルギーがまだ部屋に残ってんだよ。しっかり残ってる奴は幽霊として部屋に住み着く。そういう部屋はルームシェア用に貸し出している」
えっと……これは……①出る物件の話だな。
……ん? ルームシェア?
何かおかしな事が聞こえたが……あえてスルーしよう。
「じ、じゃあ……②出ない物件には何が残ってるんですか?」
恐る恐る聞いてみた。
「それは……契約したら教えてやる。じゃ、契約を……」
説明不足での契約って違法だろ‼︎
なんと下衆いやり方‼︎
くそっ、気になって仕方ないじゃないかーー‼︎
しかし、こんな条件の良い部屋に格安で……。
怖い……けど借りたい‼︎
……けど……怖い……けど……あぁぁぁぁぁぁーー‼︎
俺の脳内で天使と悪魔が熾烈なバトルを繰り広げる‼︎
悶絶する俺の横で、社長は相変わらずニヤニヤして立っていた。
契約書をひらひらさせながら……。