伝承歌
とりあえずギャンギャンと双子の喧嘩が五月蝿いので、ユルファとフィングの上空に『安眠』の魔法陣を大きく展開。
柔らかい光のカーテンがふわっと広がり、二人はゆっくり目を閉じ、眠る。
ぐーーごーーがーーごーーぎゅーーすぴーーすーー
さすが双子! イビキも同調か。
……あれ? イビキの方が五月蝿いってどんだけだよ?
まぁしょうがない。
「えっと、何の話だっけ……そうそう姫の言い伝え!」
『盾』の魔法陣を消し、手をパンパンと払う。
「言い伝えっていうか、歌として伝承されてるの」
そう言って俺の肩の上でチャルが歌い出した。
『むかし むかしの お話で
心 優しい お姫さま
王子に 化けた 魔物の王
甘い 言葉で 連れ去った
ここは どこだろ 籠の鳥
羽根を 捥がれて 飛び立てぬ
踊れ 踊れ 掌の上で
荊棘の 檻で 飼い殺し 』
後半なかなかエグい歌だな……。
新しく生まれた世代はこれを刷り込まれているのか……?
異世界のエネルギーってのは、そもそも循環型か放散型か?
もし放散型なら新しいエネルギーを取り込まないと枯渇するから、おそらくは循環型。
そして、循環型ならこの世界の中で転生を繰り返すと考えられる……SDGs……エコロジー。
エルフは長寿種族だが、他の獣族や魔物は相応の寿命が設定されているだろう。
わかりやすい目安は100年区切りとかかな?
生物が生涯を終えて、転生し、自動アップデートを繰り返す。
綾瀬(仮)さんの異世界は、そうやってこれほどまでに美しい世界を自ら創り上げてきたのかもしれない……。
次の冒険者がこの世界に来たら、共に姫を助けに行く様にプログラミング。
創造主不在の異世界は人工知能……AIのように発展を遂げたのだな。
まるで食虫植物のような……醜く美しき世界。




