スマホ
子供たちをベッドに寝かしつけ、そっとドアを閉めるミーフィさん。
俺もチャルを客間のベッドに運び、戻ってきた。
お子様は、よく食べ、よく眠るなぁ……健康的。
さっきまで騒がしかったテーブルに、ミーフィさんと静かに向き合い、座る。
俺の前に淹れ立ての紅茶を用意してくれるが、それには手を付けず、本題を切り出す。
ミーフィさんの視線が一瞬、カップに移るが、すぐ俺に戻る。
「会社員さ……じゃなくて、俺の前に来た冒険者さんは……貴方のご主人ですか?」
ふっと微笑み、彼女はスマホをテーブルの上に置いた。
「あの人の形見よ」
「……見てもいいですか?」
触るが、うんともすんとも……すっかり充電切れだな。
「あ……ちょっと待って」
ミーフィさんが掌の上に黄色の魔法陣を作り出し、スマホを乗せる……『充電器』の魔法陣⁉︎ めっちゃ便利‼︎
「この魔法陣はあの人……ショータが錬成したの」
そう言って、スマホを渡してくれた。
スマホに一礼。
「失礼します」
日記に続いて、個人情報の塊をそっと触る。
「暗証番号は3121……ミ(3)ィ(1)フ(2)ィ(1)だって!」
ラブラブじゃねぇか! 結婚何年だよ⁉︎
スマホロック解錠して、ざっとスワイプ。
その中から写真のフォルダを開く。
古いのから順に……
今よりちょっと若いミーフィさん……うぉぉっ、女神だな……こりゃ一目惚れするのも頷ける‼︎
若い……っていうより、体型の違いか?
しかし、写真……やっぱすげぇ多いな……。
光輝く結婚式……産まれたての天使な双子……
森……草原……雪降る高原……星空……
家族の日常……
本人はほとんど写っていない、会社員ショータさんのレンズ越しの記憶……か。
スマホの時計は正しく、現実の時間を刻んでいた。
◇◇◇◇
「ご挨拶を……」
翌朝、ミーフィさんにお願いし、案内された森の奥。
子供達はまだ眠っていたので、そっとしておいた。
小さな石碑が一つ。
そこだけ枝葉の重なりが薄いのか、淡い木漏れ日がスポットライトのように柔らかく照らす。
俺はリュックから会社員さんのノートを取り出し、供える。
ミーフィさんもまた、ノートの上にそっと形見のスマホを置いた。
それが何を意味するか……。
彼女が、全てを知っていることを瞬間、悟る。
「……ちょっと失礼」
そう言って、俺はミーフィさんの肩を軽く叩く。
ブンッ!
彼女のコマンドを確認する。
「……ミーフィさんは生まれた時から『がいど』ですかね?」
「はい。そうです」
そして彼女は深々と頭を下げる。
「子供達を……どうかよろしくお願いします」
その瞬間、社長の顔が浮かんだ。
あ〜あ、やっぱなんとしてでも、洗面台撤去して貰えばよかったな……。
なんて、損な役回り……大損だ、超大損‼︎
この世界を消すのは、俺なのだから……。




