煉瓦の家
「あぁーー疲れたーー。ここまでにすっか」
ミーフィさんに基本の四大元素の魔法陣を教わってから、ただひたすらに夕暮れまで、ずーーっと鍋で錬成し続けまくった。
耳の奥で、『ちーーん』という完成音がまだ鳴り続けている。
太陽が隠れ始め、森の魔物の気配が変わってきそうな感じ……闇を好む種族がそろそろ目を覚ます時間かな?
左肩を叩き、コマンドを開き、確認。
おぉ! 『まほう』の選択肢が一気に増えたな!
頑張った甲斐がある!
「ふぅ、さてと……お〜いチャル!」
溜息とともに、呼びかける。
……まったく、ティータイムに何個カップケーキ食べたんだ?
俺のリュックを枕代わりにして、すやすやと切り株で子猫娘が眠っている。
身体を丸めているけど、尻尾がゆらゆら、気持ち良さそうに……。
うん。お前、マジで何で俺についてきた?
おやつ食べに森に来たの?
ピクニックなの?
俺、結構な時間、錬成頑張ってたんだけどーー?
その間、エルフ兄弟と鍛錬するとかさ、なんかあったでしょーー?
「ほれ、起きろ! 一旦帰るぞ」
「ふにゃん?」
寝ぼけ猫がふにゃんふにゃんしている。
コマンド『どうぐ ちず』を開き、チャルを家に帰そうと『獣族の村』を選択……。
「あらあら、もう日が暮れるから今日はウチに泊まっていきなさいよ」
そうミーフィさんが誘ってくれた。
「えっ! いいんですか?」
チャルよ……お前、甘え上手か。
俺が返事するよりも早く返答する。
キラッキラに目を輝かせているちびっ子、良い根性してるわ。
まあ、ここで断るのも心象が悪いし……知りたいことがまだ半分残ってる。
「えーーっと、じゃあ……お世話になります」
そう言って、振り返ると、エルフ兄弟がまた顔面ぼっこぼこになっている……⁉︎
………………
何でだよっ‼︎
俺が錬成してる間に、また何やらかしたんだよ⁉︎
あ……。
なんかミーフィさん、笑顔が超怖ぇぇ!
お泊まりに異常な緊張感がプラスされてしまった……。
◇◇◇◇
ほんの少し歩いた先、森の中に小ぢんまりとした煉瓦の家が建っている。
ここへ来る途中に他の住民達に出会ったので、肩を叩き、挨拶を交わした。
家の中も暖炉があったり、丸っこい椅子が置いてあったり、いちいち可愛い。
「おい……お前達、ちよっと面貸せよ」
「「⁉︎」」
夕食の準備の間、そう言って、兄弟に治癒魔法の実践をさせてもらった。
しゅぅぅぅっ……
ぼっこぼこの顔は、あっという間に綺麗な顔を取り戻す、よし成功!
へーー……よく見ると、たしかに二人ともミーフィさんによく似てるな。
兄のユルファ……瞳がオッドアイだ。
左眼がエメラルドグリーン、右眼がブラウン。
弟のフィングもオッドアイだが、左右が兄と真逆だ。
うーん……見極めにくいなぁ、間違えちまいそう。
「まっ、喧嘩はほどほどにな」
エルフの兄弟、二人の肩を叩く。
ブンッ!
『ユルファ
LV.60 魔法使い』
『フィング
LV.60 魔法使い』
ふーん……。
「みんな! 出来たわよーー!」
食卓にはミーフィさんお手製の豪華な夕食がずらりと並ぶ。
「いっただきまーーす!」
チャルが美味そうに、パンに齧りつく。
え? まだ食うの?
その小さい身体で胃袋どうなってんの?
……まぁでも、やっぱりこいつ連れてきて良かった、か。
『異世界の食べ物は摂取しない』
それはここへ渡ってくる前に決めたこと。
実際、俺の腹の中にはさっき食べたカップ麺がまだ消化されずに留まっている感じがある……身体は現実の時間を過ごしているのだ。
だけど、招かれておいて食事に一口も手をつけないのは無礼。
チャルありがとな……あ、うん。
もう、俺の分、譲ってあげる前に食べ出したね。
わんぱく子猫めっ!
エルフの家族と子猫娘との晩餐会。
……この世界では俺の方こそ、異物なのだ。




