魔法錬成
この世界の太陽が真上から少し傾く頃はおやつの時間なのか、エルフの兄弟とチャルは仲良く切り株でティータイムを始めている。
ちびっ子らが楽しそうにしているのは、見ていて何だか微笑ましい……そう感じる自分が、凄く意外だった。
子供は苦手だけど、ギャンギャン泣いたりしないから、大丈夫なのかも……。
……あ、エルフ兄弟、クッキーの取り合いを始めた……懲りないなこいつら。
また母ちゃんにぶん殴られるぞ?
俺は、一礼し、ミーフィさんに魔法の教えを乞う。
「では始めましょう。まずは、四大元素『火』・『風』・『水』・『土』。これが魔法の基本です」
そう言って、ババッと四種類の魔法陣を目の前に並べる。
うぉっ! かっけぇぇぇ‼︎ テンション上がる‼︎
「ではハル様、実践です。まずは魔法陣を出してみましょうか。こうですよ」
ミーフィさんはゆっくりと指先を動かして空中に文字を書き、掌を前に突き出す。
ブーンッ
赤い魔法陣……『火』……かな?
「えっと……」
見よう見まねで俺は陣を描く。
ブンッ!
おっ! 小さいけど出たーー! やったーー‼︎
「素晴らしいですね! お見事!」
ぱちぱちと手を叩く、ミーフィさん。
この褒め上手さんめー‼︎ 嬉しいぞ、こら!
「で、魔法陣を前へ押し出すように力を込めると……」
前に向かって炎が吹き出した。
「はい! 基本が出来ましたねーー! 次は応用。錬成すると、発動時間が短縮できるし、新しい魔法陣もどんどん作れるわ」
「はい! 先生!」
ミーフィさんめっちゃ優しくて分かりやすい!
俺、信者になりそう。
スパルタ母ちゃんモードじゃなくて本当良かったー‼︎
実は内心ちょっとビビってたんだよな。
そういえばエルフの兄弟は、光の魔法陣を瞬間的に作り出していた。
魔法錬成……いったいどんな風に……⁉︎
「はい、ではここで『どうぐ なべ』を選択して下さい」
「はい、先生‼︎」
言われるまま、鍋を出す。
……ん? 鍋??
「ではまずはここに『火』と『風』の魔法陣を入れます」
ポイポイッ!
「蓋をして、『火』をかけます」
カチャン ボッ!
「しばらくすると……」
チンッ!
「はい! 新しい魔法陣『雷』が錬成できましたよ‼︎」
………………
えっ……と……
鍋の中に黄色い魔法陣が浮いている……なぁ……
「はい! こうやってどんどん錬成頑張ってくださいね!」
「……」
魔法の錬成は異世界3分クッキングで出来上がっていくのであった……。




