大乱闘!エルフブラザーズ
「うぎぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
チャルが可愛いげのカケラもない声を出す。
村から次のエルフの森まで定期便の荷馬車があると教えられたが、サクサクと先に進めたい俺はそれを断った。
草原には色々な魔物が生息している。
見た目で足が速そうな……馬っぽい魔物が草を食べていたので、とりあえず虫網で捕まえてみた。
一角獣初めて乗ったが……超面白ぇ‼︎
時速100km超えてるだろ⁉︎
食事を邪魔されて怒り心頭か、振り落とす気満々なのが背中から伝わってくる。
うおっ! 揺れる揺れる‼︎
絶叫マシン……最近乗ってないが、感覚的に近いな。
最後に乗ったのは小学生の頃だったか?
振り落とされては困るので、俺とチャルを紐で繋いであるが……ん? 大丈夫か、こいつ?
気を失ってないか?
絶叫が消えたチャルは揺られるまま、がくんがくんと首が前後に振られていたのだった……。
あの後、『どうしても行く!』と言って聞かなかったので、だったら気が済むまで付いてくればいい、と同行を許可したのだ。
「こ、ここが……エルフの森……でふ……」
お、おい、大丈夫か? 吐くなよ……?
車(?)酔い状態で、真っ青げっそりなチャルだが、一応、説明をしてくれる。
一角獣を解放してやると、あっという間に逃げていった。速ぇ!
お礼くらい言わせてくれよ。
「さてさて……」
右肩を叩き、コマンドで『ちず』を選択。
『ちず』には『冒険者の家』、『獣族の村』そして『エルフの森』が選択可能となった。
この森に来たら、また草原とは違う種類の魔物がそこかしこに生息している。
が、襲ってくる気配は微塵も感じない。
大きめなスライム達が仲良くおしくらまんじゅうをしているのが目に入る。ぷるんぷるん。
……メーさん、元気かな?
ふっと、ほんの少し寂しくなった。
今度は、森の中をぐるりと見遣る。
深緑の空間には木漏れ日がキラキラと降り注ぐ。
森林浴だな、マイナスイオン‼︎
なんだか、清々しい気分だ。
「ここも穏やかな感じだな」
「そうですね、エルフも基本的には穏やかで好戦的な種族ではありませんからね」
あぁ、やっと青から元の顔色に戻ったかチャル。
「ここの森にも『がいど』がい……」
ガサガサガサッ!
チャルに尋ねている途中に、近くの低木の枝葉が揺れる!
ガサッ‼︎
「てめぇ! よくもやりやがったな、クソがぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
「は? ふざけんじゃねぇぞ、コラ! お前が先に手出したんだろ、ボケェェェェェ‼︎」
子供二人が激しく罵りながら、殴り合いをしている。
耳の形が尖っているからエルフの子供だな。
……ん?
この二人、顔がそっくりだなぁ、双子か?
「死に晒せ、ゴラァ‼︎」
「てめぇこそ、くたばれや‼︎」
おいおい、どんどんエスカレートしてんぞ?
どこが穏やか? めっちゃ狂戦人種‼︎
「くらいやがれーー‼︎‼︎」
そう言って、エルフの少年は突き出した掌から魔法陣を出現させ、エネルギーを放出したのだった。
俺らの方に向けて……。




