情けない……
バキンッ……パラパラッ……
………………
一瞬、時が止まったかのように皆、微動だにせず……だが確実に、微かな希望を抱いていた彼らの心を粉々にした。
まるで、響き渡った破砕音とリンクするかのように……。
「なっ……」
「あぁ……そんな……」
「あ……あ……あ……」
がくんっ……
三人が同時に地面へとへたり込んだ。
……人間ってこういう時は『怒り』よりも『絶望』が先に湧いてくるんだな……って、いかんいかん!
フォローせねば!
慌てて彼らに言葉を掛けようとした瞬間……
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁーーっ‼︎」
「シ、シュウジーー⁉︎」
突如、ダルメシアン君が叫び声を上げ、彼の本当の名前がシマエナガさんの小さな嘴から飛び出した!
ぼた……ぼた……ぼた……ぼた……
ぶち柄の口元から垂れるのはどす黒い液体……血液の代わりに墨か?
さっきの音……どうやら噛んだ瞬間に砕け散ったのは……ダルメシアン君の歯の方だったらしい。
「はぁ……はぁ……はぁ……ぎっ‼︎」
ぎりぎりぎりぎり……
それでも諦めずにまだ咥えて離さないモノを再度、壊しにかかるが……残念ながら一度折られた牙では言葉通り、歯が立たず……。
しゅうぅぅぅぅ……
「⁉︎」
今度は見る見る見る間にその白黒な身体は縮まり、痩せ、衰弱していく!
「それ、早く口から離した方が良いと思いますよ? たぶん……あなたのことを『吸い取ってる』かと……」
「「⁉︎」」
ぶんっ! がばっ‼︎
急ぎ首を大きく振り、開かれたその口から放物線を描くようにそれは地面へと落下した。
かちゃん!
俺は彼から解放されたソレをそっと拾い上げ、マジマジと見つめる。
「凄いな……ノキさん……全く、何なんだあの人も……」
ダルメシアンくんが俺の手から奪い取り、破壊しようとしたモノ……それは、社長から支給されたコンパクト&ケーブル……ではなく、今朝ノキさんからもらった数珠ブレスレットだ。
彼の拘束から放たれ自由の身になった数珠が地面で怪しく光る。
墨に塗れた透明な石の集合体を見つめながら、ふと車中での社長との会話を思い出した。
◇◇◇◇
「ノキはああ見えて、なさけない男だ」
その言葉を聞いて、俺はぎゅっと顔を顰めた。
「……知ってる人の陰口は聞きたく無いっすねぇ」
「陰口? 俺は褒め言葉として言ってるんだがなぁ……」
「え? いやいや、一般常識で『なさけない』は相手を下げる言葉じゃ……」
言いかけて、俺は動かしていた口をぴたりと止める。
……あれ?
社長のこの言い方、イントネーションが……俺のと違くない?
「あぁ、俺の言葉足らずか? ノキはなぁ、ありゃ情け無い……情け容赦の無い男だ。……だからルームシェアが上手くいかねぇ。もっと賢く立ち回ってくれりゃ、次々と移り住むなんてしなくて済むんだが……」
「……」




