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オススメ事故物件、今ならサービスで異世界ワープお付けします。  作者: 枝久
3ー3

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情けない……

 バキンッ……パラパラッ……


 ………………

 

 一瞬、時が止まったかのように皆、微動だにせず……だが確実に、微かな希望を抱いていた彼らの心を粉々にした。

まるで、響き渡った破砕(はさい)音とリンクするかのように……。


「なっ……」

「あぁ……そんな……」

「あ……あ……あ……」


 がくんっ……


 三人が同時に地面へとへたり込んだ。

……人間ってこういう時は『怒り』よりも『絶望』が先に湧いてくるんだな……って、いかんいかん!

フォローせねば!


 慌てて彼らに言葉を掛けようとした瞬間……


「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁーーっ‼︎」

「シ、シュウジーー⁉︎」


 突如、ダルメシアン君が叫び声を上げ、彼の本当の名前がシマエナガさんの小さな(くちばし)から飛び出した!


 ぼた……ぼた……ぼた……ぼた……


 ぶち柄の口元から垂れるのはどす黒い液体……血液の代わりに墨か?

さっきの音……どうやら噛んだ瞬間に砕け散ったのは……ダルメシアン君の歯の方だったらしい。


「はぁ……はぁ……はぁ……ぎっ‼︎」


 ぎりぎりぎりぎり……


 それでも諦めずにまだ咥えて離さないモノを再度、壊しにかかるが……残念ながら一度折られた牙では言葉通り、歯が立たず……。


 しゅうぅぅぅぅ……


「⁉︎」


 今度は見る見る見る間にその白黒な身体は縮まり、痩せ、衰弱していく!


「それ、早く口から離した方が良いと思いますよ? たぶん……あなたのことを『吸い取ってる』かと……」

「「⁉︎」」


 ぶんっ! がばっ‼︎


 急ぎ首を大きく振り、開かれたその口から放物線を描くようにそれは地面へと落下した。


 かちゃん!


 俺は彼から解放されたソレをそっと拾い上げ、マジマジと見つめる。


「凄いな……ノキさん……全く、何なんだあの人も……」


 

 ダルメシアンくんが俺の手から奪い取り、破壊しようとしたモノ……それは、社長から支給されたコンパクト&ケーブル……ではなく、今朝ノキさんからもらった数珠ブレスレットだ。


 彼の拘束から放たれ自由の身になった数珠が地面で怪しく光る。

墨に塗れた透明な石の集合体を見つめながら、ふと車中での社長との会話を思い出した。



◇◇◇◇



「ノキはああ見えて、なさけない男だ」


 その言葉を聞いて、俺はぎゅっと顔を(しか)めた。


「……知ってる人の陰口は聞きたく無いっすねぇ」

「陰口? 俺は褒め言葉として言ってるんだがなぁ……」

「え? いやいや、一般常識で『なさけない』は相手を下げる言葉じゃ……」


 言いかけて、俺は動かしていた口をぴたりと止める。


 ……あれ?

社長のこの言い方、イントネーションが……俺のと違くない?


「あぁ、俺の言葉足らずか? ノキはなぁ、ありゃ情け無い……情け容赦(ようしゃ)の無い男だ。……だからルームシェアが上手くいかねぇ。もっと賢く立ち回ってくれりゃ、次々と移り住むなんてしなくて済むんだが……」

「……」

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