保持
ガラガラガラガラ……
その時、何かが崩れるような轟音!
……だが見回しても、周囲にはこれといった異変もないし、大きな振動も起こっていない。
「?」
不思議に思い、少し離れた方向に視線をやると……なにか灰煙のような物が空へと立ち昇っていた。
か、火事⁉︎ ……いや、違う。
あれは、この異世界エネルギーの粒子が消滅する際に起こる、蒸発のような流動!
白黒な異世界の粒子も当然、白・黒・グレーなモノトーン配色なんだな。
しかし、あっちの方角……俺が鏡で渡ってきた風景セットのような場所じゃねぇ?
あのナノ鏡は消え去ったか?
……やっぱり、創造主との交渉しか帰る道は残されていないんだな。はあぁぁっ……。
そして恐らく、今の崩壊は……異世界空間を保持するエネルギーが枯渇し始めているんじゃないか?
徐々にこの世界はコンパクトになり、やがてそれも保てなくなった時……今ここにいる俺達はどうなるんだろうか?
………………
くそっ!
肝心なこと、またしても社長に聞きそびれてんじゃんよ‼︎
そして創造主よ……無駄遣いは良くない!
安定供給されるエネルギー源が確保されていない段階では、徹底的にエコを意識していかないと、あっという間に空っぽになる。
あちらのエネルギー墨汁池は干上がったのかもしれない……だから崩れた。
………………
黒ゴンなんか出すからだよ!
あぁ……もっとケチケチしてけばいいのに、自分の創造した大切な異世界なんだから……。
「ガウガウガァ!」
「え? なんすか、白虎さん!」
遠くばかり見て考えていたからか、いつの間にか俺の周りを五人がぐるりと囲んでいた。
ん? ここは小規模なふれあい動物園ですか?
……って、白虎やパンダにじゃれられたら大変、血塗れバイオレンスなアニマルパーク⁉︎
「メェメェ!」
ガリガリガリ……
『スポイト ナカ カラ デタラ タイヘン』
「あぁ、今んとこは大丈夫ですよ。先っちょは開いてるけど、圧力の関係でそのままじゃ黒液は勝手に中から出て来れないんでね」
「「「「「‼︎」」」」」
皆が一斉に『へぇ〜〜っ』って顔をしたぞ。
しかし、筆談でしか話せないのは……頗る面倒くさい!
どうすっかなぁ……あ!
「……この辺のでいいかな?」
俺は大地に散らばる竹枝をまた一本拾い上げ、先程千切れた蛇髪の墨溜まりにぼちゃっと浸す。
先端が僅かに墨汁を吸い込んだところで、その枝を使って大地に描き出した!
サッサッ……シューーッ! サッサッ……シュッ!
「……メェ?」
「ガウッ?」
「グフッ?」
「ジュルル?」
「ワフッワフッ?」
皆さんが不思議そうに声を漏らした。




