俺の武器
しゅるしゅるしゅるしゅるっ‼︎
「「⁉︎」」
黒ゴンの頭から伸びた蛇髪の攻撃!
パンダさんも応戦するが徐々に押され始め、同時に伸びた無数の中の一つに黒い拳が捕らわれる!
「メッ⁉︎」
気付いた瞬間にはもう、彼の動きは封じられていた。
ひゅるん!
ズドーーンッ!
そのまま彼の体躯はバランスを崩し、自らの重みで地面へと倒れ込む。
衝撃で鳴る地響き!
「メェッ‼︎」
前脚も後脚も黒ゴンの頭皮から離れた蛇が、縄のようにがっちりと巻き付き、外れない。
愛らしい白黒モフモフボディがジタバタと大地の上を転げ回る。
ザッ!
黒ゴンの標的が瞬時に切り変わる。
四つ足のヒョロ黒い獣がゆらりと動いたかと思うと、美しい白い獣へ襲いかかった!
パンダさんが振り返り、叫ぶ!
「メェーーッ‼︎」
「ウゥ、ウガァッ‼︎」
「……すぴーっ」
ダダダダダッ……ずるっ!
一人、緊張感のない眠れる者のイビキ声が上がり、走っていた俺は思わずズッコケ……そうになったが、気合いでなんとか立て直す!
……この状況でよく眠ってられるな、おいっ!
「白虎さん、逃げろーーっ‼︎」
「ガウ、ガウガァッ‼︎」
俺の叫びで、彼女は竦んだ脚を奮い立たせて駆け出す!
だが、白虎さんが抜群の瞬発力を発揮するよりも前に、黒ゴンが回り込み、彼女の行手を塞いだ!
ぐねぐねぐねぐねぐね……
「グゥァッ」
ブンッ!
その不気味さから一瞬、怯んでしまった彼女だが、反射的に猫パンチならぬ虎パンチをくり出す!
黒ゴンは避けずにそのまま突っ込み、白虎さんの鋭い爪は蛇髪を数匹切り裂いた!
しかし、残った蛇髪は臆することもなく、うねうねと身体に纏わりついて、彼女の四つ脚を一気に縛り上げる。
必死にもがいても解ける気配は微塵もない。
見た目は猛獣だが、中身は元々人間の女性。
……こんな気色悪い敵に襲われて冷静でなんていられないよな。
「ガウァーーッ!」
白虎さんが咆哮を上げながら首を捻る。
背にいた酔っ払いくんの身体にも、彼女とお揃いに蛇髪がぐるぐると巻き付く!
救いなのは、あの蛇が今すぐに噛み付いてエネルギーを吸い取る……といった様子が無いことだ。
あの黒池に沈めるのが、この異世界のエネルギー補給方法なんだな。
ふわっ……
「ガウァッ⁉︎」
「メェッ‼︎」
頭から伸びる蛇髪にそのまま空中へと高く持ち上げられた眠れる彼の身体は、両手を広げた黒ゴンの元へとゆっくりと降りていく。
一連の動きを見て、俺は確信する。
……あぁ、思った通りだ。
「黒影野郎! これでも喰らいやがれぇぇぇっ‼︎」
ダダダダダダダダッ‼︎ ダンッ‼︎
ザシュッ!
標的以外の存在をガン無視しているその背中に向けて、俺は全速力で駆けつけた勢いのまま飛びかかり、思いっきり手に持っていたモノを突き刺した‼︎
俺が具現化したこの武器の威力……その効果は……言うまでもない。




