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オススメ事故物件、今ならサービスで異世界ワープお付けします。  作者: 枝久
3ー1

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許可取り?

「これは……モバイルバッテリー?」


 社長から渡されたのは、可愛いパステルピンク色の掌サイズな長方形の機械。

片側はコンセントプラグでその反対側からはUSBケーブルが伸びている。


「見た目似ているが違う。これを接続する為の道具だ」

「え?」


 今度は俺の空いた左手に、そっと何かを握らせる。


 ………………


「えーっと……これは……おもちゃ?」


 俺の手に渡された『これ』……魔法少女が変身で使うようなコンパクト?

こちらはショッキングピンクな表面に金色の装飾、中央には赤い石がはまっている。

……おもちゃ屋さんで3500円くらいで売ってそう。

側面には先ほどのケーブルが挿せるポート部分があった。


「コンパクト……あ! もしかしてミラー?」

「お! 勘がいいじゃねぇか。正解だ」


 そう言いながら社長は、俺の掌上のコンパクトの赤い石をポチッと押した。


 パカッ!


 開いた中には予想通り、小さな鏡が収まっていた。


 ………………


「んで? これと異世界とどういう関係が?」

「亡くなり、退去するはずだった物件に魂のエネルギーが留まっている時点で、洗面台部分の不当占拠にあたる。まずは相手と交渉し、成仏か異世界創造かを選択してもらう。で、どちらの場合であっても、次に連絡鏡を設置。そうして、ようやく異世界のある物件はうちの会社と賃貸契約を結ぶんだ」

「……」


 さも当たり前のようにご説明されてらっしゃいますが……いやいやいや、色々おかしいでしょーー⁉︎

ツッコミどころありありよ⁉︎

しかも、二者択一にしてますけど、そもそも質問された時に成仏選ぶくらいなら、最初から洗面台にエネルギー留めないんじゃない?


「そうでもないんですよ。自分が亡くなったことを理解出来ないで留まるケースがすごく多いんです」

「え? そうなんですか?」


 セバメさんの補足で、ウルエさんが言っていたことをふっと思い出した。

異世界自由設計の提案を受ける前、ぼーっと何も無い空間にいたって……。

突然の自分の死を『はい、受け入れろ!』っていう方が無理な話か。


「で、お前はこれからその『交渉』に行くってわけだ」

「じゃあ初仕事ってことは……先輩と同行? セバメさんとご一緒ですか⁉︎」

「いや、超簡単だからハル一人で大丈夫だろう」


 ずーーん……。


 一瞬だけ期待した俺が馬鹿だった。

浮上した気持ちは直滑降して底辺まで落ちる。


 一人で乗り込むの? 

えぇ〜〜⁉︎ 嫌だーーっ‼︎


「そのコンセントプラグを訪問先の地面に刺すと連絡回線は開通するんだが、ちゃんとそこの相手が同意してくれないと設置は出来ない。エネルギー泥棒になっちまうだろ?」


 え? 回線? 開通? wi-fiですか?

通信手段に異世界のエネルギーを利用してるってこと⁇


「相手がもし成仏希望者なら、プラグを刺してから、そのコンパクトの鏡面を相手に向けると、手続き相談にセバメが乗ってくれる」


 え? 成仏コールセンターも兼任してるの?

ちらっとセバメさんを見遣ると、俺にピースサインを向けてくれる。

メイド事務員さんは全方向対応型美少女なんですね。


「まぁ、ハルがやるのはあくまで初回の簡易設置までだ。後日、セバメが改めて訪問し直して、連絡鏡の設置やら、異世界創造の手引きやらを説明してから、着工する。もしくは、見学したいなら研修兼ねて同行しろ」

「……」


 もはや心がツッコミを入れることを放棄した。


 そう、俺に拒否権はない。

相変わらず、やるしかないのだ。

この非現実を受け入れろ、俺。ファイト!


「あれ? そう言えばセバメさんって、マサさんの異世界の始まりの時ってどんな感じだったんです?」


 ふと、彼女に尋ねる。

以前、マサさんと話した時、彼は異世界について、まるで分かっていなかった。


「えっと……確か……あ、そうそう! ずーっと泣いてらっしゃったから、『勝手にやっていいですか?』って感じで聞いたら、こくこく頷いてくれたので、こちらで最低限の手配をしました。まさかあんなに発展するとは思わなかったので……予想外でした」


 ………………


 駄目じゃん、マサさん‼︎

知らない人の言うことほいほい聞いて……無責任!

結果、出来上がったのは三人犠牲になった異世界ですか⁉︎


 セバメさんも可愛くごめんねポーズしてますけど⁉︎

……いや、もう過ぎたことだから何を言ってもしょうがないか。


「っつうわけで、ハル。今月の家賃免除プラス俺のオススメの焼き肉屋へ連れてってやるから、今からその物件向かうぞ! 特別に行きは車で乗せてってやる、大サービスだ」

「はい……よろしくお願いします」


 深々と溜息を吐き出してから、頭を下げ、立ち上がった。


 俺がやるべきことは、超シンプル。


 こちら側に、ただ生きて帰ってくるだけだ。


 ……あれ? 

万が一、何かあった時、俺の安全をどうやって確保すればいいかだけは最低限、教えてもらってもよいですか?

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