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オススメ事故物件、今ならサービスで異世界ワープお付けします。  作者: 枝久
3ー1

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営業行ってこい!

 ごっくん!


 カップに残った珈琲を一気飲みしてから、俺は社長に尋ねた。


「で……俺に一体何をさせたいんですか?」

「おっ! 話が早いな、ハル。お前に任せたい契約社員としての初仕事は……」


 すいっ!


 社長がタブレット画面をスワイプする。

真っ暗な画面はスリープモードから覚醒し、先程の京成関屋駅近くの千住曙町の物件が再度表示される。

下から見上げるアングルのマンション写真。


「この部屋と『交渉』して来てもらいたい」

「『交渉』?」

「そっ、言わば営業だ」

「??」


 不動産会社の営業って……販売、賃貸仲介、売買仲介……って感じかな?

希望物件への提案、借り主と貸し主のマッチング、売り込み、あとは……物件の仕入れ?


「うちは賃貸仲介がメインだから、会社としては幅広い優良物件を確保し、借り主のニーズに出来るだけ沿う提案をしていきたいと考えている」


 え? あの、すみません。

事故物件の優良って何基準ですか?

行方不明者の人数、少ないほど星五つ?


「社長! 俺、宅建とか不動産関係の資格、一つも持ってないですよ? そもそも俺、理工学部なんで……」

「それなら大丈夫。(あまね)が一通り持ってるよ」

「えっ! マジっすか、凄っ。あ、でも、そうだ俺、この後バイトあるんで!」


【意訳:バイトがあるので『交渉』には行けません。マジ、無理です。】


 俺のバイト、平日はまかないの出る洋食屋さん、土日は日雇い派遣バイトだ。

それに加えて、『ワープルーム』で契約社員だと?

トリプルワーク⁉︎

大学生も追加すると、四足の草鞋(わらじ)……俺の足が足りませーん!


「ハルのバイト先はどこだ?」

「え? が、学校近くの洋食屋『キッチンわらべ』ですけど……」

「そうか」


 そう言うと、社長は素早くスマホを操作し、どこかへ電話を掛け始める。

……なんか嫌な予感。


 プルルルルルル……ガチャ!


「あ、もしもし〜〜! (わたくし)、そちらでアルバイトをしております凪杉陽の保護者です〜〜。はい、はい、えぇ、いつもお世話になっております〜〜! え? はい、はい、そうなんです〜〜!」

「えっ⁉︎」


 社長が今まで聞いたことない口調で電話している⁉︎ どちら様? 怖っ‼︎

たぶん、電話口の相手は……洋食屋の女将さん⁉︎


「ちょ、ちょっとーーっ⁉︎」


 ばっ! ぎゅむっ!


 社長を止めようと咄嗟(とっさ)に手を伸ばしたが、彼の長い手で俺の頬はあっさり返り討ちにあい潰される。ひどっ!


「はい、はい! で、お仕事、大変お忙しいと思いますので、代わりの者を向かわせますので〜〜はい! それではよろしくお願い致します〜〜!」


 ピッ! 


 プルルルルルル……ガチャ!


「おう、俺だ。暇だろ? ちょっと今から指定するところに向かえ」


 コロッと声も態度も切り替わり、いつもの俺様口調でまた別な人と電話をしている。

もう! 一体なんなのさーー⁉︎

 

 ガチャ!


「と、言うわけで無事にバイトのお休み許可をもらったから、お前は営業な」

「……」


 ずーーん……


 俺は深く項垂(うなだ)れた。

藁辺(わらべ)の親父さんが作ってくれるまかないメニューが平日の俺の楽しみなのにぃぃっ……。


 ぽん!


 セバメさんが俺の肩を叩いた。


「セバメさぁーーん……」

「ハルさん! 『交渉』が上手くいったら、遍にご褒美として美味しいものおねだりしちゃえ!」


 ぱちんとウインク、めちゃ可愛い!


 ……でもね、セバメさん。

上手くいかなかったら、俺こっちの世界に戻って来れないってことだからね?

デッドオアアライヴですよ?


「お前はこれを持って行け」


 ぽいっ!


 今度は社長が、何かを雑に放り投げてきた。


 俺は胸元でナイスキャッチ!

掴まえたブツに視線を落とした。


「え……? な、何これ?」

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