表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オススメ事故物件、今ならサービスで異世界ワープお付けします。  作者: 枝久
2ー5 

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

102/166

お買い上げ

「色々とお世話になりました」


 ソラさんは記入し終えた書類を社長に手渡して、丁寧にお辞儀をした。

……俺の上に馬乗りになっていた人とはまるで別人みたいな物静かなお姉さんですね。


「はい、川志田さん。確かに受け取りましたよ」


 社長が記入済みの賃貸解約手続きと物品買取手続きの書類を隅々まで確認して、すっと封筒にしまい、さらにそれを背中にしまった。


 ………………


 社長、その高級そうなブランドスーツには、四次元に通じるポケットでも縫い込んであるんですか⁇


端数(はすう)はサービスしておきましたんで、今月中に代金振り込んでおいて下さいね」


 俺への態度とは大違い、だいぶ優しい言い方で社長はニヤリと笑った。


「えぇ、喜んで」


 つられてソラさんも嬉しそうに笑顔を返した。


 俺が彼女に提案したのは、異世界に繋がる鏡……洗面台のお買取だ。


 金額、もっとふっかけてくるかと思ったが社長は意外と良心価格を提示してきた。

取り外し作業工賃含めて30〜40万円くらいかかると予想してたんだけど、洗面台全体ではなく、上下で分割できたんだな。

上半分、鏡面キャビネットのみの価格……10万円で売買契約成立。


 ソラさんにとっての幸せが10万円で買えるなら、安い買い物なんじゃないかな?


「で、ハル。お前はまだか?」

「ちょ、ちょっと待ってくださいよーーっ‼︎」


 急に話を振られて、慌てて視線を書面に落とすが……俺の分厚いアンケートはまだまだ書き終わる気配がない。


 ………………


 って、おいおい! これ何枚あんだよ⁉︎

一泊二日のうちの一泊もしてないんだから、俺の方も端数切り捨て並みの温情くれてもよくないですか⁇


 チラリと社長の顔を伺うが、顔に『全部ちゃんと答えろ』と書いてあったので、諦めて全力で取り組む!

俺に拒否権は無い! 

今晩の俺の住処(すみか)が掛かっている!


 うぉぉぉぉぉぉっ! あっ、痛っ、脇腹痛いっ!



◇◇◇◇



「はぁはぁはぁ……お、終わりました……」

「おっ、よく出来ました……っと。……じゃあ、はい、これ」

「これは?」


 パラパラっと、俺の提出物に目を通しニヤリと笑った後、社長がまたどこから取り出したのか掌サイズの紙の束をポンと手渡してきた。

ん? 何だ? カード?


「お前の名刺だ」

「……は?」

 

 ………………


 意味がわからない。


「この紙に書いてあるだろ? またお前はちゃんと読んでないのか?」

「へ?」


 ………………

 

 ま、まさか⁉︎


 ばっ‼︎


 社長の手から書類を奪い取り、注意深く読み返す‼︎


「『このアンケートの記載をもって、貴社契約社員として入職することを誓約致します』って最後に書いてあるだろ? ほれ」


 確かに書いてあるよ、極小豆粒サイズの文字で……。


「……俺……今、大学生なんですけど?」

「うちは学業と業務の両立も支援している。ハルも正社員じゃ気持ち的にも荷が重いかと思って、契約社員にしてある。優しいだろ?」

「……」


 くそーーっ‼︎ またしても詐欺られたーーっ‼︎


 アンケートの振りした入社誓約書に、俺はまんまとサインしてしまったのだった……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ