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第56話 罪と罰と御褒美


【 トリスター宮殿 謁見の間 】



「いやぁ、災難じゃったのう。まさかパーティにガンランナーが“正体を隠して”潜伏していたとは」


 玉座に腰掛けた国王が、実にあっさりと言い切った。

 本気でそうだとは思っていないだろうが、“そういう事”にしてくれていると察し、一同は胸中で安堵と感謝を覚えた。


「あの……陛下、例えばの話ですが、ガンランナーって絶対に居留地へ送らなければいけないのでしょうか?」


(ちょっ!? ユーマ!!)


 イリスたちはギョッとした顔で裕真を見た。

 ガンランナーの扱いは、この世界では極めてデリケートな問題だ。

 それを、この国のトップである国王に真正面から問いかけるのは、無礼と取られてもおかしくない。


 だが、国王は特に気分を害した様子もなく、静かに言葉を返した。


「ユーマくん、なぜ君の仲間にガンランナーがいると分かったと思う? それはな、市民から通報があったからじゃよ。そのガンランナーに“命を助けられた”市民からの」

「!!?」



 ◇ ◇ ◇



 ―― 七日前 ダンジョン化事件当日 ――



 その日、屋敷に残っていたのは、篤志、アム、ポロン、ニーアの四人だった。

 彼らもまた、他の市民と同じように、混乱する街の中を必死に逃げ回っていた。


 仕掛けられたトラップは篤志が見抜き、襲いかかる魔物はアムの魅了魔法で足止めできていた。

 だが――


 今にもサイクロプスに踏み潰されそうになっている人々を見つけた瞬間、状況は一変する。

 距離も角度も悪い。このままでは、アムの魔法は間に合わない。


 その時だった。

 ポロンが、ためらいなく『銃』を抜いたのは。


「ヴォルカノン!」


 ポロンは、契約している『銃の大精霊』の名を叫んだ。

 すると、ただでさえ大型のハンドガンが、軋む音を立てながら異様なまでに肥大化し、大砲のような姿へと変貌する。


「ヴォルカノン・ヴォルケーノ!」


 轟音と共に、銃口から真っ赤に焼けた無数の弾丸が放たれる。それはまさに火山の噴火のようだった。

 弾丸の火砕流に飲まれ、サイクロプスの巨体が跡形もなく消し飛ぶ。


 助けられた人々は、しばし呆然としていた。

 だが、その視線がポロンの手にあるものに向いた瞬間、空気が一変する。


「あ……あれは『銃』!?」

「『銃』を持ってるぞ!!」

「ガンランナーだ!!」

「に……逃げろ~っ! ドラゴンに襲われる〜っ!!」


 悲鳴を上げ、人々は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

 その背中を、ポロンはただ黙って見送る。

 小さくひとつだけ、ため息を落として。



 ◇ ◇ ◇



「――と、いう訳じゃよ」


 語り終えた国王は、ゆっくりと息を吐いた。


「ワシはドラゴン云々の話は迷信だと思っておる。それが本当ならガンランナーが集まる居留地が真っ先に襲われているはずじゃしな」


 その言葉に、裕真は思わず感心したように声を漏らす。

 どうやら国王を含め、誰もが無条件にあの迷信を信じているわけではないらしい。


「だが国民の偏見は根強い……現状、ガンランナーは居留地にいた方が安全なんじゃよ。……いろんな意味でな」


 いろんな意味……。

 命を救われたにもかかわらず、恐怖して逃げ、さらには通報までしたという話からして、ガンランナーの嫌われようは理解できた。

 もし彼らが居留地の外にいるのが見つかれば、民衆に襲撃される危険さえあるのだろう。


「彼らは……居留地で虐待されたりしてませんか?」

「それは無い。もしそれが事実なら、ワシの名にかけて直ちに是正する」


 その即答に、裕真は胸を打たれた。


「……!! 陛下! ありがとうございます! そして申し訳ありません、このような不躾な質問に応えて頂いて」

「いや、良いんじゃよ。救国の英雄を罪人として呼びつけた無礼に比べたらの」


 深く頭を下げる裕真に国王は手を振り、こほんと咳払いをしたあと、玉座から立ち上がった。


「さて、本題に入ろうか。君達は事件解決の為とはいえ、『禁呪』を使用した。相違ないか?」


 国王はこつこつと音を立てながら裕真たちの元に歩み寄り、ゆっくりと一同を見回す。

 場の空気が一気に引き締まる中、モモが青ざめながら一歩前に出た。


「は……はいっ! それは私です!! 『夢の世界に入る力』を使って、犯人の心の中に……」


 言い終わるより早く、モモはがばっと膝をついた。


「つまり、私一人でやった事でして、他の皆様には関係無いのです! 罰はどうか私一人に!!」

「安心なさい。君を処罰したら、ルーナに殺される」


 さらりと言って、国王は部屋の隅に視線をやった。

 その先には、柱の陰からこちらを凝視するルーナ姫の姿があった。

 鬼気迫るその形相は、本当に何かしかねない雰囲気だ。


「というのは冗談じゃが、この件で君と話がしたいという御方がおる。よいかな?」

「えっ どちら様ですか?」


 きょとんと首を傾げるモモ。

 “御方”と、国王は言った。この国で最も偉いはずの陛下が、なお敬意を払う必要がある人物……。

 いったい誰なのか、見当もつかない。


 その時だった。


 謁見室が唐突に暗転した。

 テラスの向こうを見れば、夜空が広がっている。つい先ほどまで昼だったはずなのに。

 ざわめきが広がる中、国王が手を上げて制した。


「あー、落ち着きなさい。“あの御方”が御降臨なさるだけじゃ」


 今度は夜空に巨大な月が浮かび上がった。

 それは街の空を覆いつくすほどの大きさで、どう見ても自然の産物ではない。


 そして、その月光が一本の束となり、謁見の間へと降り注ぐ。


 眩い光の中から、ひとつの人影が現れた。

 地面に届くほど長く伸びたサファイアの髪に、白銀に輝くゆったりしたドレスを纏った女性。

 身の丈は国王の倍以上あり、金色(こんじき)に淡く発光する肌が、彼女が人外の存在であることを雄弁に物語っていた。

 

「お初にお目にかかります。私は『ディアナ』。このトリスターの街とオリオン一族を守護する者です」


 裕真たちは驚きのあまり息を止め、瞬きすら忘れた。


 この国を守護する『月の大精霊ディアナ』。

 その存在は耳にしていたが、こうして実際にお目にかかれるとは思いもしなかった。


「ト……トリスターの守護神さま!? 本当にいたんだ……」


 裕真はそう呟いた後、ふと周囲を見渡す。

 国王以外の皆が平伏しているのに気付き、慌てて自分も皆と同じように片膝をついた。

 ディアナ様は微笑み、「どうか楽にしてください」と告げてから、モモに向き合った。


「此度は誠に有難う御座いました……。貴方がたの活躍が無ければ、この街の住人全てが魂を奪われ、邪神の贄となっていたでしょう」

「そんな滅相も無い! 私達は自分に出来る事をしたまでで――」


 文字通りの天上人からの感謝に、モモは恐縮しきりだった。

 だが、次の瞬間、ディアナ様の顔から微笑みが消える。

 真剣そのものの眼差しで、彼女は言った。


ディアナ「ですが、その一方で危うさも感じました。モルフィナ・モルペウスさん、貴方は自分の能力を使い『夢の世界』に入るのを、悪いことではない、と考えてませんか?」


 途端にモモの顔が強張る。


「エ……イ…イイエ~……ソンナコトハ アリマセンヨ~」

「……陛下」


 ディアナ様がさりげなく、国王に視線を送る。


「……あっ! 急用を思い出した! 申し訳ないが、しばらく席を外させてもらう」


 そう言い残し、国王はそそくさと謁見の間を後にした。


「さぁ、今この場に国王陛下はいません。正直にぶっちゃけてよろしいのですよ?」


 モモは戸惑った。

 偉い人はいないから本音で話していい、という配慮なのは分かる。

 だがどう見ても、ディアナ自身が国王と同等か、それ以上の存在に思える。

 とはいえ、ここまでお膳立てしてもらって本音を言わないのは、かえって失礼だろう。

 モモは意を決して口を開いた。


モモ「うう……では言わせて頂きますけど、私、この能力を悪い事に使ってません! いえ、悪いどころか沢山の人を助けました!! なのに皆、“法で禁止されてるから悪い事だ、犯罪だ”って! 人の命より法律が大事なんですか!!」


 今までにないモモの剣幕に、皆が驚いた。

 ずっと言われてきて溜まっていたんだろうな、と察する。


 一方、茜は心の中で「大事やで」と呟いた。

 人の命を最も奪うのは“無法”だ。

 法があるからこそ人々の命が守られる。

 もちろん法では守れないものもあるだろうが、だからといって例外を許せば、蟻の穴から堤が崩れるように、法も崩れる。

 もっとも、今はそんな議論をするような場面ではないので、黙っているが。


 モモの告白を聞き終えたディアナ様は、小さく頷いてから口を開いた。


「そうですね。確かに貴方は、トリスター市民100万人の命を救いました。ですが逆に、100万の命を奪う事もできるのが貴方の力なのです」


 その言葉に、モモはパチリと目を丸くする。


「……へ? いやいやいやいやいや! それは無いです!! たかが夢の中に入る力で、どうやって100万人殺すんですか!?」


 思わず声を張り上げるモモに、皆も内心で同意した。

 夢で人を殺す方法など、せいぜい悪夢を見せて衰弱させるくらいしか思いつかない。

 ましてや、モモ個人の力でトリスター全住人にそれを行うなど、到底不可能だ。

 だが、ディアナ様は顔色一つ変えず、淡々と答える。


「貴方は事件の犯人、マリクを夢の中で改心させましたね? それと同じ要領で、マリクのような危険人物を生み出す事も可能なのです」

「……ええ!? いや、無理ですよ!」


 ぶんぶんと首を振りながら、モモは必死に否定する。


「何をどう弄れば、あんな人が出来るかなんて、想像もつきません!!」

「では、ひとつ問題を出しましょう」


 ディアナ様は黄金色に輝く指を一本立てた。

 次の瞬間、宙に淡い光が浮かび、ベッドで眠る赤毛の青年の姿が映し出される。

 説明のために出した映像らしい。


「貴方はいつものように『夢の世界』へ遊びに行きました。そして、とある青年の夢に辿り着きました。その青年は“家族と友人を全て魔物に殺される”という悪夢にうなされています」


 言葉どおり、青年は苦悶の表情で身じろぎしていた。


「さて、貴方は彼をどうします?」


 その問いかけに、モモは腕を組み、う〜んと唸る。

 数十秒の思案の後、眉をひそめながら答えた。


「それは可哀想ですね……。なので悪夢を綺麗に掃除してぐっすり眠れるようにしてあげます」

「はい、アウト」


 ディアナ様は両腕をクロスさせた。

 すると、どこからともかく「ブッブー」という軽薄なブザー音が響く。

 急にバラエティ番組みたいな演出を入れてきたことに、裕真は思わず唖然とした。


「その青年は、この国の始祖『大英雄オリオン』です」

「……えっ!?」


 一同、思わず謁見の間に飾られているオリオン像を見上げた。

 確かに、眠っている青年と同じ顔をしている。


「オリオンは幼い頃、故郷を魔物に襲われ、家族も友人も全て失ってしまったのです。ですがその時の悲劇をバネに、常人では耐えられない厳しい修練に耐え世界最強の狩人となりました」


 青年の映像が、右手に剣を持ち、左手に魔物の首を掲げている姿に変わった。

 後に『大英雄』と称えられるオリオンの雄姿だ。


「貴方が本当に悪夢を掃除してしまったら、彼は戦うモチベーションを失い、『大英雄』は誕生しませんでした。結果、彼に救われるはずの大勢の人が魔物の餌食になるのです」


 ディアナ様の理論に、一同は言葉を失った。

 なんともいえない空気の中、裕真がおずおずと口を挟む。


「ディアナ様、その……伝説の英雄を引き合いに出すのは、少し極端なんじゃないですか?」

「そうでしょうか? 伝説と言っても、ほんの900年前に実在してた人物ですよ? 今後、彼のような英雄が出てこないと、どうして言い切れましょう?」


 裕真は「むむむ……」と呻き、押し黙った。

 自分の何千倍も生きているだろう大精霊にそう言われてしまうと、反論の言葉が見つからない。


「まぁ、極端と言えば極端かもしれません。要は『夢の世界』での何気ない行為が、人の運命を大きく変えてしまう可能性がある、という点だけ御理解して下さい。……そう、それが善意によるものであっても」

「は……はぁ……」


 歯切れの悪い返事をしながら、モモは頷いた。

 完全ではないが、自分の力が想像以上の影響力を持つことは理解した。


「以上の理由で私は、貴方が『夢の世界に入る力』を持つのは適切ではない、と判断します。よって、貴方の能力を封印いたします」


 一同、ぎょっと息を呑み、モモに視線を向けた。

 非情な宣告を受けた彼女の目には涙が溜まり、今にも決壊しそうになる。

 そこでついに、ルーナ姫が前に出た。


「お待ちください、ディアナ様!! 魔族にとって『継承魔法』は、身体の一部と同じ! それを奪うのは手足を切り落とすようなものです!!」


 がばっと頭を垂れ、必死に訴える。


「今回の事件、モモちゃんの力が無ければ、解決しませんでした!! そのお返しが封印とは、あまりにも――」


 ディアナ様は、そっと手を挙げて姫の言葉を制した。


「安心なさい、それは私も弁えています。ちゃんとご褒美も用意してますよ。モルフィナ・モルペウスさん、貴方の能力を封印する代わりに、私から新たな力を授けましょう」


 その言葉に、裕真以外の皆がどよめいた。


「新たな力!? それってディアナ様が私に『加護』を授けてくださるってことですか!?」

「ディアナ様の『加護』って!!」

「凄え……破格の報酬じゃないか!!」


 興奮の声が次々と上がる中、裕真だけが状況を理解できず、ぽかんとしていた。


「そんなに凄いのか?」

「凄いなんてものじゃないです! ディアナ様の『加護』を受けられるのは、オリオン一族だけ! つまり“王族の一員”として認められたってことです!!」


 熱く語るアニーに、裕真は「へー」と気の抜けた返事を返す。


「宮廷序列で言うと騎士や貴族より上。つまりマイラのプロキオン公爵家より立場が上になるってことですよ」

「えっ、マジで!」


 篤志の解説で、ようやく裕真にも事の重大さが理解できた。



 ここで、オリオン連合王国の宮廷序列について、簡単に解説する。


 大きく分けて五段階に定められており、第一位は【国王】。

 現在は、ケダリオン十三世陛下がその座にある。


 第二位は【王族】。

 ルーナ姫やマーニ姫をはじめ、始祖オリオンの血を引く者たちがここに属する。


 第三位は【貴族】。

 王国内に自身の領地を持ち、それを統治する者たち。

 マイラの街を治めるエリコ公爵殿下もその一人で、爵位の高低によって更に細かく序列が分かれるが、今回は割愛する。


 第四位は【騎士】。

 これは貴族階級の“騎士”ではなく、国王から俸給を受けて仕える宮廷騎士たちを指す。

 親衛隊のフォード卿やセランさんがここに含まれ、また前線に出ない文官たちも、同じ序列として扱われている。


 第五位は【平民】。

 現在の裕真たちや、市民議会を構成する豪商たちも、この位置づけだ。


 ただし、これはあくまで“宮廷内”のみで通用する序列であって、実際の権力とは必ずしも一致しない。

 たとえば市民議会の豪商たちは、一番下の序列でありながら、国王の権限を大きく制限できるぐらいの力がある。


 とはいえ、ただの一市民だったモモが、名目上とはいえ公爵様や豪商たち以上の地位の「王族」となるのだ。

 桁違いの報酬と言えるだろう。



「わわわ……私如きが王族の一員になるなんて!! そんな大それたもの、とても受け取れません!」


 両手を振り、わたわたと慌てるモモ。

 しかし、ディアナ様は静かに首を振った。


「いいえ、是非とも受けて下さい。貴方の身を護る為に必要なのです」


 その言葉に、居合わせた一同が顔を見合わせる。

 どういうことだろう、と疑問が広がった。


「貴方が事件解決に関わった事は、極秘事項として伏せています。ですが、いずれ真相に辿り着く者も出るでしょう。それは貴方が『禁呪』を使用した事が明るみに出るということ……」


 皆が「あっ」と声を洩らした。


「その時、私の『加護』とオリオン一族の権威が貴方を守る盾となるのです。救国の英雄に何かあれば王家の威信も傷付きますし、何よりルーナ姫が悲しみます」


 その言葉に、モモとルーナの表情がぱっと明るくなる。ディアナ様の気遣いが胸に染みたのだろう。


「……私の為にそこまで!! 了解いたしました! ありがたくお受けします!!」


 勢いよく頭を下げた、その直後。

 モモは、ふと我に返った。


「……ところで、頂ける『加護』って、どのような能力なのでしょうか?」


 少し失礼かもと思ったが、我慢できずに聞いてしまった。

 いつ役に立つかわからない宮廷序列よりも、実際に使う力のほうが、どうしても気になってしまう。


「それはですね。貴方は『夢』に関する魔法に適性がありますので、そちらの方向で考えてみました」


 そう言って、ディアナ様が指を振る。

 すると、以前裕真たちが目にした『夢の世界』の光景が、宙に投影された。


「貴方の『夢に入る』能力を反転させ、『夢から出す』能力にしようと思うのですが、どうでしょうか?」

「……夢から出す、とは?」


 モモは首を傾げた。


「簡単に申しますと、『夢の世界』に存在する生物やアイテムを、こちらの世界に呼び寄せる能力です。いわゆる『召喚魔法』というやつですね」


 今度は、皆が揃って首を傾げた。

 夢の世界に、生物……?


「夢の世界に生物!? そんなのいたのですか!?」


 どうやら、『夢の世界』に詳しいはずのモモですら知らなかった事らしい。

 ディアナ様は、にこやかに頷いた。


「いますよ、『ドリーミーフレンズ』と呼ばれるバ……生物達が」


(……バ?)


 ディアナ様が洩らしかけた一言に、裕真は強烈に嫌な予感を覚えた。


「ドリーミーフレンズ!? なんか素敵な響き! キュートでファンシーでポップな感じで! 是非呼びたいです! その能力でお願いします!!」

「あ……」


 裕真が口を挟む間も無く、即決してしまった。

 もう止められない。



 ◇ ◇ ◇



 謁見の間が、おどろおどろしい瘴気に満ちていく。

 血と硫黄を混ぜたような悪臭が立ち込め、視界が歪む。


 瘴気の中には、無数の異形が蠢いていた。


 血に染まった麻袋を被り、血塗られたナタを手にした巨人。

 長く伸ばした黒髪で顔を覆い、爛れた指から毒液を滴らせている怪女。

 複数の人体を繋ぎ合わせ、無数の手足で蜘蛛のように這いまわる怪物。

 不定形の身体から無数の触手を生やし、不気味にくねらせる肉塊。

 その他、名状しがたい冒涜的な化け物たちがぞくぞくと現れた。


 そう、彼らこそが、『暗黒悪夢生物(ドリーミーフレンズ)』。


 モモに与えられた新たな力で、暗黒悪夢時空(ドリーミーランド)から召喚された、素敵な仲間たちである。



モモ「思ってたのと違う!?」


 モモの絶叫が、謁見の間に響き渡る。

 それはこの場にいる全員の心境を、的確に代弁していた。


「これこれ、見た目で判断してはいけません。中身は良い子かもしれないじゃないですか」


 ディアナ様に窘められ、モモは必死に気を取り直す。


「そ……そうですよね! 見た目で判断しちゃいけないですよね!! え~と皆さん、ご趣味は何ですか?」



「処刑と拷問です」と、麻袋の巨人。

「呪殺とストーキングです」と、怪女。

「手術です。麻酔無しで」と、人蜘蛛。

「◯◯◯と◆◆◆◆です」と、肉塊。



「見た目どおりじゃないですか!!」


 ついにモモは、びえーんと泣き出した。

 かわいい。


 しかし、この惨状を前にしても、ディアナ様は笑顔を崩さない。


「大丈夫、彼らは一応召喚者の命令を聞きます。彼らの残虐性が貴方に向けられることはありません。……タブン」

「タブンって!!!」


 ディアナ様の小声を、モモは聞き逃さなかった。

 そしてまた、びええんと泣く。


 裕真はこの光景に絶句しつつ、「これ、ご褒美に見せかけた罰じゃね?」などと邪推するのであった。



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