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4/12

Dragon Life

現在時刻 実家から帰宅してから数日後 夕方

 

現在地点 バイト先のコンビニ

 

「あっしゃっしたー」

 

「ありがとうございましたー」

 

 

 

ドラコと街で生活し始めて数日経った。数日こそ彼女は都会の様々な人工物に目を輝かせていたもののすぐに順応した。

 

ただ、乗り物だけは暫くは体験したくないらしい。でかくて早くて凄いが自分で飛んだほうが早く道も自由、何より酔うらしい。実際……

 

「だぐみ"ぃ……ぎぼぢわるい……」

 

「トイレは2両先だ。そこまで一人で行って来い」

 

「やらぁ……いっじょ行くの……うっぷ」

 

「……おい。服が透けてびしょびしょになってきてるぞ。ちゃんと制御しろよ」

 

「気持ち悪くて能力の制御ができなくなってる……うん、行ってくる。やっぱきつい……」

 

この後、大量のオブジェクトを制御するんじゃなかったと愚痴りながらトイレへと駆け込むのを数回繰り返していた。

 

今は本人も何を起こすか分からず家で過ごしてもらっている。普段何をしているのかは分からないが危険なこと(ドラコ基準)なことはしていないと信じたい。

 

 

 

「滝沢くん。お客がいなくなったからってすぐ考え事かい?」

 

「そんなわけ無いだろ……と言いたい所だが正解だ」

 

今俺に話してきたのは黒姫 ナツメ(くろひめ なつめ)、バイトの先輩かつ俺の親友だ。短くて綺麗な黒髪をした不思議な人でよくかわいいと言われている、どう考えても変な奴なのに。なお先輩とは言ったが年は同じ大学、同じ学年の同級生。たまたま一週間ほどバイトを始めたのがナツメの方が早かっただけの話だ。

 

「それは僕の可愛さについての事かい?照れるな」

 

「んな訳ねえだろ」

 

「それは残念。でも君が悩むなんて珍しい。何かあったのかい?」

 

言えるはずが無い。もし俺が数年前に逃したペットの魚が実は竜で幼女の姿で同居しているなんて言ったらいくら親友とはいへ頭の方を疑われるだろう。それにロリコンと言われても致し方ない。ここは適当に流しておこう。

 

「……何でもない」

 

「ふーん、そうか。てっきり旅行中に恋人でも出来てしまったのかと思っていたけどそんな事ではないと」

 

「ああ」

 

「じゃあ君のスマホの写真フォルダのあの子は誰だい?」

 

「!?お前、いつの間に覗きやがった?」

 

「……ふーん、つまりは予想道理だった訳か」

 

「てめえ鎌かけやがったな」

 

ーーー

 

「親戚の子がなつき過ぎちゃったから同居してる……年齢の割に中々酔狂な子だね。君も君だよ滝沢君、なぜ請け負ったの?」

 

「泣きつかれた。あんまりにも不憫そうだってんだから親の目が痛かったんだよ。仕方なくだ仕方なく」

 

ナツメには先程の会話の通り親戚の子供だと伝えた。そしたら余計興味をもってしまい今度は写真を見せてくれとせがまれて、いやいやながらもスマホの写真を見せた。角はもう仕方ないとしてなるべく翼や尻尾が見えない写真を選別した。結果、いつの間にか本人が撮った自撮りが適任だ、なんか悔しい。

 

なおナツメのコメントは「かわいい」と「旧スクとは良いセンスじゃないか」と呟いたのみ。しかしそれと同時に含みのある笑みを浮かべていた、多分何か悪い事を考えてる。行動ははどうであれ気に入っている様子。

 

「それは災難だったね。悩むのも分かるよ」

 

「お前の場合内心羨ましいんだろ。このロリコン」

 

「いいじゃないか。同年代の男とは違い毛もない、女にしても無垢。そして何よりもかわいい。この子も元気そうでいいじゃないか。嫌いじゃないよ」

 

「……見た目いいのにお前のそういうのが残念だよな」

 

「この子はいつまで君の家にいる予定なんだい。僕としては是非顔合わせ願いたい所だね」

 

「あーそうだな。確か……」

 

と、ここであることに気がつく。彼女、戸籍とかそうゆうのどうなってるの?という事を確認していない。彼女の事だ、事前に準備してきたなんて事は絶対にないであろう。その前にも今は夏休みだから良いとしてもし9月、つまりは新学期になったら小学校が始まるのだが……通報される可能性が出てくる。

 

「……な、夏休みが終わるまでには帰るんじゃあないか?」サー

 

「どうした?顔が青いぞ」

 

血の気が引くのが他人から見ても分かったらしい。

 

「ははーん。さては可愛すぎて帰したくないんだな?私も養ってほしいくらいだ」

 

「お前は対象外だ」

 

「確かに。君は熟女の方がタイプだったな。こんな貧相な体じゃ興奮することもできないか」

 

「……胸を求めてたらたまたまそこに行き着いただけだ」

 

 

 

ーーー

 

現在時刻 同時刻

 

現在位置 自宅

 

「……?棚を調べてたら薄い本を見つけたぞ。なんだろ……」

 

「!!……こ、これは」

 

「…………年上で大きな胸の女性の漫画。しかもこんなに汚れて……」ハイライトOFF

 

「これはお話が必要だね。拓海を探さなきゃ」

 

ーーー

 

 

……そういえば、ドラコについての悩みは他にもあるんだ。ナツメはロリコンの気がある。幼児の女心は俺より心得ている筈、参考になる事を知っているかも知れない。

 

「なあ、ナツメ。今度ドラコと会ってもらってもいいか」

 

「……ひょっとしてそれが本当の悩み?さっきまでの君は会わせたくなかったような話ぶりだったのに。早く言ってくれればいいものを」

 

「話が早くて助かる」

 

ーーー

 

俺はナツメにドラコについての課題を語った。その課題というのは2つあって、まずその1。

 

彼女の服を買わなければならないのに俺に服のセンスがないこと。

 

今は彼女の能力で擬似的な服を作って着ているがそれにも限界がある。だから早く買わなければいけない。しかし今は俺が着ているのは安いジーンズとどっかで買ったクソT。自分の服ですらこれで他人の物なんてもってのほか。何よりも彼女自身のセンスはというと……

 

ーーー

 

「拓海、今私が着てるワンピースなんですがいかんせん柔らかさを表現する為にポリゴン数が多いです」

 

「お前ほんとに数日前まで人の事知らなかったんだよな。モデリングやってんじゃねーんだよ」

 

「という訳で外出用に服を作ってみました!!」

 

「……その安いプラ製のみかんの箱みたいなのの事か?」

 

「段ボール箱だ!!かっこいいでしょ?」

 

「悪いセンスだ」

 

ーーー

 

……とまあ。他には鯖のコスプレとかどこかのゆるキャラみたいなキモいのとかトイレットペーパー風の何かとか致命的にセンスがずれてる。女物の服を扱うならその道に聞く方がいいだろう。

 

 

 

さて、その2。

 

彼女の扱いが分からない。

 

 

 

「案の定、という感じだな。だがいい案がある。僕で女性の扱いは学んでほしい」

 

「嫌だ」

 

「シンプルイズベスト。完全否定とは中々手厳しい」

 

 

 

うん、ナツメの意見は正しい。いや自分で学べというところではなく、案の定と言う事だ。この方生まれて彼女なんていた事などない。中学なんて彼女など考えた事はなく、高校では男だらけの気楽な日常を送っていつの間にか女性とは無縁の生活であった……ナツメを除き。勿論姫扱いで皆付き合う気は誰も起なかったので実質恋愛とは無縁な生活であった。

 

そんな俺が突然幼女との生活を始めたわけだ。幼女なら子供のように扱えばいいのでは、と思うだろうが事情が違う。

 

ーーー

 

「拓海、ご飯できてるよ」

 

「……また勝手に作られてる。俺が作るって言ってるのに」

 

「もう10:00だよ。洗濯物と掃除もやってあるし後は拓海の食事だけ。拓海の持ってる参考書も飽きちゃったし早く食べないと。拓海、座って座って!!」

 

「お前それ意味わかって読んでるのか……あと、飯はゼリー飲料でいいか?」

 

「だめ!!早く座って食べちゃってね!!」

 

「……」

 

「よしよし、座ったね」

 

「頭を撫でるな。いただきます……おい、箸を何故奪った」

 

「うしし、これをこうして……はい、あーん」

 

「……箸をくれないか」

 

「あーん」

 

「……」

 

「もしかしてスープからがいいの?」

 

「違う、そうじゃな……おいなぜお前が汁を口に含むんだちょっと待てこっちに近付いて何をする気おい待て待てお前このままじゃ不味い事になる頭を押さえるな離せ」

 

ーーー

 

……なお朝昼晩である。大体全力で振りほどくか、俺の手が出かけたことを察したドラコの方が引いてことなきことを得るのから現状問題はない。

 

食事だけだったら耐えるだけだが問題はそこではない。家事が全て奪われているのだ。食事はもちろんの事掃除洗濯ゴミ出し郵便物等々、掃除に至っては彼女の能力で水道管まで綺麗になっているらしい、これらを俺が何かする前にやってあるのだ。勿論、俺は働くのが好きというワーカホリック的なものではない、休めるなら休みたい。しかしこれではヒモではないか。こう……なんかやだ。男としてのプライドがどうしても許さない。しかも見た目が幼女だから頼りずらい。

 

それに別に他の時にも……

 

ーーー

 

「ただいま」

 

「拓海ー!!おかえり!!」

 

「裸エプロンなんていつの間に仕込みやがった?」

 

「ご飯にする?お風呂にする?それともわ・た・し?」

 

「風呂」

 

「そこは私を選んでよ」

 

「風呂」

 

………

 

「サンカイメ……アアマタヤッテシマッタ……イイカゲンオコラネバナラヌトイウノニ」アタマカカエ

 

「お背中流しまーす」ザバー

 

「キガエテルトキニ イナイト アンシンシテタラ ヨクシツニ ハイッタジテンデ ゼンラタイキ シテイルトカ ソンナノムチャダ ハンソクダ」←現実逃避

 

「頭流しまーす。シャンプーハットも付けとく?」

 

「誰がつけるか。頭を洗う位自分でやらせ……」

 

「いいの!!私がやりたいから私にやらせて!!やらせろぉ!!」

 

「いいや自分でやる」スッ

 

「あっ立ちやがった……えいっ」

 

「触手を絡めてこないでくれると嬉し……分かった、分かったから下半身を念入りに洗おうとするのは止めてくれないか?」

 

「うん!!」

 

ーーー

 

……俺には幼女に発情する趣味などない。しかし後も積極的になられるとどうしても止めなければ、とせざるを得ない。倫理的にこれはまずい。せめてやり始めるなら同年代くらいの見た目なら……

 

ともかく彼女には俺の世話は家事の手伝い(全任ではない)くらいに留めて欲しいのだが……

 

あ、でも家計簿だけはやって欲しい。今度表計算ソフトの使い方を教えよう。

 

ーーー

 

「……羨ましい」

 

「止めとけ。きついぞ」

 

「……それもそうか。だが養うのも養われるのもどちらにも向くのが幼女の強みだ。うまく立ち回れているな、彼女」

 

「ああいうマせたのは見た目以上に大人扱いしてもいいのか?」

 

「マせたとは違うよ。ちょっと庇護欲が出過ぎているだけのいい子じゃないかな?ほら、今流行のロリママだよロリママ」

 

「俺は真剣に悩んでいるんだ」

 

「んー……そうだな」

 

ナツメは少し黙って何かを考えたあと一つ質問をしていいか聞いてきた。

 

「君は彼女を子供だと思っているのかい?」

 

「勿論。それ以外に何かあるのか」

 

「いいや。でもこれだけは覚えておいたほうがいいってことを教えるよ……いくら小さな子でも女心は女心、納得する答えにたどり着くのは男には無理さ」

 

「それじゃあ駄目じゃねえか。まあありがと、勘と経験でなんとかしろっつー事だな」

 

ジャー

 

ここでトイレの水が流れる音が聞こえた。2人と奥で昼寝している店長しかいないコンビニ、普段は気にならない音も聴こえる。

 

だが俺にはそれが不審に思えた。さっき言った通り、このコンビニには客はおらず自由にしているのは俺らのみだ。お客はさっきでてったのが最後。……つまり今トイレを出た客、いつから入ってた?少なくともこの話している間はトイレにこもっていた事になる。

 

「(……考えすぎか)」

 

「おっと、お客さんがまだ居たようだね。しゃきっとしなければ」

 

さて休憩のような雑談は終わり。またバイトらしいバイトに戻る。

 

「いらっしゃいませー」

 

「らっしゃっせー……っはぇっ!???」

 

トイレから出てきた客。その頭には角と翼が生えていた。そして尻尾を揺らしながらレジのカウンターへと来て死んだ目でこちらを見て一言。

 

「……拓海」

 

「ちょ……おま……なんで来た!?家でPCをいじってるはずなんじゃなかったか?」 

 

「……噂をすればなんとやら。それにしてもタイミングが完璧だ」

 

「拓海は年上の大きい胸の大人の人が好きなの?」

 

「ちょっ……え?もしかしてそれを聞きにここへ?というかどうやって特定した」

 

「適当に棚を漁って、情報仕入れて、上水道をちょちょいとつたって来たの」

 

「上水から……お前能力使ったな」

 

「YES I AM!!……って拓海、それ今言って平気?」ハイライトON

 

「え?それって……あ」

 

「……合点がいった。そこのスク水の似合う君、ただの子供じゃあ無いな?」

 

「はい!!スク水ですが私ドラコです。ホントは水竜【水槍】って名前ですがドラコでいいです!!……て、この人」

 

「どうかしたかい?」

 

「拓海ぃ!!もしかして……」

 

「次の発言はスク水から着替えるのとどちらが重要だ?」

 

「あ、それもそうですね。はい」

 

「スク水からいきなりノースリーブワンピに服が変わった。特殊能力なんてファンタジーみたいだね」

 

「えへへ、褒めてくれて嬉しいですね〜。って拓海!!拓海はどんな子がタイプなの?胸が大きな年上?それともこの女の人みたいな慎まやかなかわいい人?勿論私みたいに小さくて包容力のあるわた

 

「巨乳一択」

 

「拓海、君誰かから朴念仁って言われた事がないかい?」

 

ーーー

 

黒姫ナツメ、拓海の中学からの友達。

 

私より可愛くて彼が惚れ込んでいないか警戒したがそんなことはなかった。

 

……代わりに私にも興味がないという悲しい事実も知ってしまった訳だが。

 

しかし餅は餅屋という言葉が人にはある。大人の魅力は大人にしかできない、だから私の全身全霊の努力は彼には苦痛だったのかも知れない(ネット上では小さな子に世話をされるのが流行りだったが彼は違うようだ)。大人の持つ安心感は捨てよう、私には向かない。彼は母性よりも庇護欲を満たしてあげたほうがいいのかもかれない。ならば子供なら子供らしく演じてあげよう。

 

……なお、私としては悪くはなかった。庇護欲をぶち撒けるのは定期的にやってやろう。

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