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Dragon Ability

現在地点 実家 自室

 

「……禁足地、地元の神社の奥の森で古来より異界と繋がっているとの伝承により祭事以外の立ち入りは不可能、と」

 

自宅に帰り着替をした後、急いであの森についてスマホで調べてみた。そして予想以上にヤバそうな所だと判明した。説明は呟いたのがまんまオカルトのまとめサイトに転がっていた。詳しいソースは不明だがそれ以上の情報がなく、あっても民族資料みたいなのしか出てこないので読む気が失せた。ああ、勿論筆記体、小学生の時に資料が見つからなかった理由が今になってわかった。おそすぎた発覚だ。

 

「拓海、今の人間はそれをいじってると楽しいの?」

 

「……お前について知りたくてな。スマホで……あ、これな、これで調べてんの」

 

「もうっ!ちゃんとドラコって呼んで。拓海がつけてくれた名前だよ」

 

「じゃあドラコについて知りたくてな」

 

「はうっ!!それはそれで言葉の威力が……思ったよりすごい……!!もっかい、もっかい言って!!」

 

嬉しかったのか尻尾が激しく動かす。

 

水竜【水槍】、彼女についてはよく分からなかった。情報がなさ過ぎる。こんなど田舎の神社だから当たり前の事だ。

 

で、平然といる彼女、水竜【水槍】こと元俺のペットのドラコだがなぜここにいるか説明すると……

 

「なあ、ドラコ」

 

「何、拓海?」

 

「やっぱりさ、あの約束はガキの頃のやつだし無効に……」

 

「ふぇ……?……え?」ポロポロ←ハイライトOFF

 

「しない。俺がどうにかする」

 

「そうだよね!!」

 

……こんな感じだ。年端も行かぬ少女が人生、いや竜生に絶望した時の光の無い目、それに根負けしたのだ。男なら度胸、思い切って切り捨てる手もあった。しかし彼女の正体が正体なので何をされるかは予想がつかないながらも、どうなるかは予想ができ考えるのをやめざるを得なかった。

 

「(一緒に住む……金は節約するとして他の人への説明と幼女を家に連れ込むことのリスクと……問題が多すぎる。バイトどうすっか……)」

 

俺は現実逃避にソシャゲに指が向きかけなからも必死に考えている。

 

「ここが拓海の、人間の住処なんだ。小さい住処だから中も狭いと思ってたけど人間サイズならこれで済んじゃうのか。しかも洞窟くらい涼しいし……人間って凄いのか凄くないのか分からないな」

 

彼女はそんな悩みなど知らず、俺の家に興味津々な様子。先程からキョロキョロ俺の部屋を見回して、何かを発見すると不思議そうに見つめている。なお、つい数分前まではエアコンを、あと俺がスマホを使うのを観察していた。

 

まさかと思うけど……

 

「拓海、この薄い箱みたいなのはどんな物?」

 

今度の標的はテレビのようだ。丁度いい、反応を見てから確信を持とう。

 

「それはテレビだ。そのリモコン取ってくれ」

 

「りも……この小さい板何に使うの?どぞ」

 

「板って、ドラコお前……」

 

彼女からリモコンを受け取りテレビをつける。現在時刻AM11:30、時間的にはニュース番組かな。

 

「うおお!?画面に人が映ってる、映ってますよ!!どうなってるのコレ!?」

 

「お、あそこのラーメン屋の特集か」

 

どうせみんな俺のラーメンの話は別にどうでもいいだろうから割愛。

 

案の定彼女は画面に映される相対的な都会の風景に目を光らせている。それも興奮している対象が汚いのがいい味を出しているラーメン屋よりも……

 

「凄い……あんなに密集して岩石の塊にアリみたいに住んでるのか。あっ!!なんか今赤くて大きいのが通った?拓海、あれは?」

 

「……」

 

「拓海?」

 

「ドラコ、まさかと思うがほんとにあの川にずっといたのか?」

 

「そうだけど、何か問題でも?」

 

「じゃあ俺とか人間について調べたりは……」

 

「してないよ。そんな事しなくても拓海は優しいからその都度教えてくれるかなって」

 

「……最後に人と会ったのは」

 

「んー……拓海を除いたら4、50年前くらいに漁師に捕まえられかけたくらい?」

 

「……」

 

最悪な予想が当たった。思わずいじっていたスマホを床に投げ捨てて頭を抱える。

 

「あのーどうした?」

 

「やっぱりドラコ、お前人間のことなんも知らねえな?」

 

「ななな!?何いきなり!!?」

 

「いきなりではないだろ……いやさ、種族違う奴と生活しようとしてんだぞ。普通下調べとかで常識とか知っておくもんじゃないか」

 

「常識といっても同じナマモノですし特に変わらないのでは?」

 

「川から帰ってきた時なんの躊躇も無くスク水着たまま公道歩けた時には寒気がし始めたかな」

 

「そそそそそそれは……それはそうとこの服、スク水って言うんだね。私がたまに拾う本には旧スクとかって書いてあったけど時の流れは早いね……」

 

笑い事じゃあねえだろ、とは思った。しかしそれを彼女に言ったところでその面倒くささが増えそうなので止めとく。なんかアホそうだし。

 

「もういい、仕方ねえ。じゃあその時はその時で考えるか。俺も馬鹿だし何より面倒臭い」

 

「私はバカじゃぁあないよ!!人のことは知らずともつよつよな竜なら何でもできるって事は知ってる!!最後には力です!!」

 

「おーじゃーやってみろ」

 

彼女はよーしやってみせますよ、と言ったあと窓を開けた。エアコンを動かしているから早く閉めてほしいから何かやるならさっさとしろ。

 

「拓海、私が13年間人について調べずに不満だったんだよね。でもそれは今からでも間に合う。でも、これは誰にも見られないあそこでしか練習出来ないからあの川から離れられなかったんだよ」

 

彼女のその妙に丁寧な口調が気になり何をやっているか見てみた。

 

「ちょちょ!?え、何そんな物騒なもんを担いで!?」

 

彼女が手にしていたのは竜を模したバズーカだった。竜の姿のドラコを想起させる青と水色で鱗の様に迷彩塗装され、竜の口から弾が出る仕組み……

 

って今この状況で解説していたら不味い。既に銃口からエネルギー的な何かが溜め込まれている。

 

「そして13年かけてついに完成した……人間での私の最高火力!!照準は……適当に遠くて高い山で!!充填完了、威力マシマシ120%超超高出力高水圧砲!!」

 

「ちょっとやめ……」

 

「大切な人を守る為、いっけー!!発射ぁ!!」

 

声と共に引き金を引いた。轟音と共に銃口から俺の何倍もの太さの水が飛び出る。それは太い水柱が杭のように絶えず射出されている様、しかし不思議な事にこちらに水飛沫や反動は来ない。

 

俺はその威力に腰を抜かし、ドラコは的とした山を眺めて数秒沈黙が続く。

 

「……え?」

 

「んー……やっぱり距離があるとタイムラグががが。照準は合ってたしあとは祈るのみだよ、拓海!」

 

そして彼女がそう言い切った瞬間、山が2ミリほど吹き飛んだ。何処の山かは分からないがこの距離から目で減少量が見える事がどれだけやばいことか。彼女の銃の威力は嫌でもわかった。

 

「うわぁ……これは敵に回しちゃヤベえよ」

 

「人型はやっぱり威力が落ちたか。速度はともかく威力が足りない……拓海、ちょっと竜で調子みるね」

 

ドラコは部屋の窓から飛び降りた。ちなみにここは2階、立ち上がり直ぐに下を確認しようとしたが竜の彼女が無事に飛び上がった事でことなき事を得た……ような気もするがこれでいいのか?

 

「きゅうう……ふぅ……すぅぅぅぅぅ……」

 

水竜の口にエネルギーが集まる。それも先程の銃とは違い遥かに強大な力を秘め、エネルギーが貯まれば貯まるほど小さく球状に圧縮されて……

 

「おまっ!?ドラコそれ以上はまず

 

「きゅぉぉぉ……」

 

ドバァーーン!!!

 

ーーー

 

「次夜ニュースです。今日午前11:30、〇〇県と✕✕県の境の▲▲山が突如として消滅しました。なお消滅は二段階に分けられ……」

 

「あ、私がやった山だ!!拓海を守るのにはまだまだだけどこれで安心だね!!」

 

「オーバーキルに決まってるんだよな……」

 

現在時刻PM00:00

 

現在地点 実家 1階リビング

 

俺達は先程のやらかしの被害をテレビで他人事のように眺めていた。

 

「拓海、大切な人がどうなるか分からない事への対策にやりすぎは無いよ」

 

「山一つ吹っ飛ばす火力がいつ必要になるのか5000字以内で答えてくれ」

 

「え、ええっと……5000字は行かないけど私がもう一人いた時とか?」

 

「自分とPvPとは驚いた」

 

現在はドラコと一階リビングで昼食をとっている。ドラコが人間の食生活を知らない事も警戒していたがスプーンとフォークの使い方はなんとなくで理解できたので安心した。本人は俺が箸使っていたので同じように箸を使いたがっていたが持ち方を真似する際に箸を折りかけため挫折した。

 

用意したのは親が作った2日前の夕食の肉じゃが、それを再利用したカレー、適当に砂糖醤油で焼いた肉。うっかり米を一人分しか用意して無かったからカレーは一人分だけ、勿論ドラコので俺は適当にカップラーメンで済ませる。

 

「拓海はこのかれー?茶色の辛いのは食べないの?」

 

「米がないからな。それはお前が食べろ。」

 

「ありがとう拓海。ハムッ…んー!美味しいねー!!肉じゃがってのも中まで味が染みてサイコー!人間が態々火まで使って料理するわけだよ」

 

「はははっ、たかが残り物のカレーでそこまで興奮されても。探せばもっと旨い物もあるから楽しみにしとけ」

 

「肉は魚の方が食べ慣れてるから久しぶりで美味しいよ。この味は初めてだけど」

 

そういえば彼女は水竜、当たり前だが水生生物の食物は魚か藻位になるから……これは後の参考にしとこう。

 

「ところで拓海、今食べてるカップラーメンっての、私のは無いの?」

 

「残念ながら。一口食べるか?」

 

「うん!!……あ、でも……うん、ありがと!!」

 

「(……間接キスの概念はあるらしい。竜にもこれが適応されるとなると何の為にそのような特性が出来たのか……疑問だ)」

 

顔を赤らめたドラコは俺のカップラーメンを食べて……少し何かを考えてからありがとう、と元気よくお礼をした。

 

「口に合わなかったなら言えよ?」

 

「いえいえ、そんなんじゃぁ無くて……なんか味が不自然な気がするんだよね。不自然というか、食べ物ものの「風味だけ」の味がする?」

 

「そうか?変な物は入って無いから……もしかして人工調味料のせいか?」

 

「人口?……はえー人類はついにそんな物も作って食べ物にしちゃったんか」

 

もしくは人類と竜では味覚が違う、とも考えられる。

 

「あ、でもこれくらいなら……」

 

「え?お前何をしようとして……」

 

彼女はコップの水を飲み干し、そのまま空になったコップを口につけて……

 

「『自重』……ゴクッ……よし、完全に再現できた!!」

 

……今彼女が何をしたかの説明をすると口から十数mLの有色の液体を吐き出して、それを再び飲み干した。色的に先程俺が食べていたラーメンのスープだと思う。ただし、色は希釈され透明に近い色になっている。

 

「……えーと、今口から出てきたのはもしかしてラーメンのスープか?ドラコ、お前スープまでは飲んで無いし一体何をした?そして何故飲んだ」

 

「あー……私の、水竜の能力だね」

 

曰く、水竜の内蔵を人の体に押し込んだ時に人体に本来無いいくつかの臓器の役割を統合したらしい。その時に一部の消化器官を水流ブレスに使う器官の一部と近い所に設置した結果、ブレスの成分がいじれるようになったらしい。今回はそれで今食べたラーメンのスープを作った、と。

 

更に踏み込んで他の能力は無いのか、と聞いてみた。

 

すると彼女は指先を俺に見せてからその指を水に変えた。

 

「液体化か。中々能力アニメっぽいのが出始めたな……」

 

「体以外にもできるし物にも適応可能、ただし変化させた液体が離れ過ぎたらバラバラのまま復活するから危険であまり使えないけどね。あとは簡単な水の操作くらい」

 

「軽く言ってるけどチーターじみてんなお前」

 

「まあ、水竜だから!!」

 

そんな会話を続けていたらいつの間にかドラコの皿が空になっていた。余り物の処理も兼ねていたから少し多めに盛っていた筈なのに全て彼女の胃に収まったらしい。用意した料理は大学生の俺があれで丁度いい分量、あの小さな人の体に大学生の自分と同じ、もしくはそれ以上の物が入るのか。竜とは恐ろしい物だ。

 

「ふー、お腹いっぱいだー」

 

「……ご馳走さま(何年ぶりに言ったっけこれ)」

 

それでも、腹が満たされ幸せそうな彼女の顔を見たらそれもいいのかもしれない。

 

さて、洗い物をするか。

 

「ドラコ、洗うから皿運べ」

 

「はいはいーい拓海!!あ、そうだ。ねえ拓海」

 

「何だ?」

 

「その……洗うのってどうやるの?」

 

「……向こうに洗剤とスポンジがあるから水で流しながらそれで擦る(皿洗いのやり方すら分からないとは完全に想定外……この後アニメでも見せて人の生活について学習させないと)」

 

「水……よし。拓海、その洗うのを私に任せて!!私の水流なら一瞬で終わるかも!!」

 

「駄目だ。家が壊れる」

 

「あれはちゃんとした奴だったから凄いだけで手とかからなら弱いのは出るよ。それで洗うの」

 

「……俺の隣で手伝え。多分お前の身長じゃシンクが高いから台を出す」

 

「やったー!!」

 

 

 

数分後

 

 

 

「まずは水で軽く流して……」

 

「えいっ……あっ!!」シュー

 

皿→ _ロ ロ_<プラナリアァッ!!

 

「おい」

 

「やっべ威力調節ミスった。針サイズの水流で切断できちゃうとは……そういえば川原の石を切る練習した時の感覚でやっちゃった……拓海!!ごめんなさい!!」

 

「(知ってた)」

 

彼女には人の常識というものを早急に教え込まねば。

 

ーーー

 

彼の家に訪れた。

 

人間という生物の住居に入った事は初めてだ。噂によれば人間は道具の作成の為に道具を作る奇妙な生き物。何があってもおかしくは無かったが、実際には予想以上に不思議なものが多かった。

 

……まあ、それはじきに慣れる。私がやる事はだた一つ、彼に尽くす。

 

この為に、13年も待ってたんだ。彼もきっと喜んでくれるに違いない。

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