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虹魔の調停者  作者: 岩井碧月
厄災編
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調査

 その日の夕方、十分に睡眠をとったジオたちは酒場に来ていた。

「いつも以上に人が賑わってる……昨晩の悲鳴が嘘みたいだぜ」

「私が城から戻るお昼ごろにはもう中央通りも普段と同じくらい人が居たわよ」

「被害が軽く済んだとはいえタフな奴らだな」

「で、王様との話はどうだったんだ?」

 ボルドが酒を片手に半笑いで尋ねる。

「腹立つわね……こっちは根掘り葉掘り聞かれたっていうのに。とりあえず私たちのことは噂で留めてくれるそうよ」

「そうか」

「で? ジオくんたちはどうなったの?」

「ガレーネに入ることにはなっただが、いきなり任された調査がこの国に関係するものだからな……それが終わるまではこっちにいる」

「そうかぁ! 俺も鼻が高いぜ!」

「おめでとうね、二人とも」

「ありがとう」

 ネルマの頭を満面の笑みで撫でるサティアだったが、思い出したように立ち上がった彼女は少し困った顔をしていた。

「ちょっと早めに店に戻らない? 皆に渡したいものがあるの」


 店に戻るとサティアが小声で二階へ上がるよう促す。

「まずは上がって……あと、とにかく騒がないで」

「なんなんだ? サティアの奴」

「大体予想は付く」


 サティアは本棚の陰から取り出した手から溢れる大きさの革袋を二つテーブルに置く。

「おい……もしかして……」

 ボルドの顔が引きつる。

「ラクリマの件の報酬よ……」

「オレたちはいい、二人で分けろ」

「ジオくん駄目よ! 二人は危険な目に合ってるんだから」

「そうだぜ? それに……分けろって言われてもこの袋まるごとは家に置いておく俺の方が怖い、この王都は金の匂いに敏感な奴が多いからなぁ」

 ボルドそう言いながら辺りを見回して身震いをする。

「生活に必要な金は全部ガレーネが出してくれるみたいだからな……ネルマの小遣いにでもするか」

「あら、ネルマちゃん潤ったわね」

「こんなに要らない……」

「やっぱりこの量は困るよな、この国の王様は金銭感覚が狂ってるぜ」

「ちょっと、思ってても言わないの。とりあえず四等分ってことでいいかしら?」

「ジオたちがちゃんと受け取るなら異論ないぜ」

「あぁ、分かってる」

 サティアが片方の袋から金貨を半分取り出して、用意しておいた革袋に移す。

「はいボルド、お好きな方をどうぞ」

「んじゃこっちだ、ありがとよ」

 

「ねぇ……」

「どうしたよ?」

 何か不満そうなサティアにボルドは不思議そうに尋ねる。

「こんな大金貰ってどうするのよ。慎ましく暮らせば一生困らないわよこれ……旅をするジオくんとネルマちゃんはともかく、私なんてもう店を出してるし、ボルドなんてせいぜい酒代に消えるだけよ?」

「しっかり受け取って帰ってきた本人が言うな……」

 ダラダラと語るサティアにジオは呆れた表情でそう言った。


「おい、俺そんなに酒飲まねぇぜ……?」


 翌日、ジオとネルマはヴィスタシアから頼まれた調査のために村々を回っていた。

「次で三つ目」

「遺跡探しを二人でやれなんて無茶にも程がある」

「封印された魔物のおまけ付き」

「そっちは倒せばいいだけだ」

「それ多分フラグ」

「降りるぞー」

 浮遊魔法で空を移動していた二人は目立たないように村の手前で地上に降り立つ。


 石造りの家が建ち並び、山に囲まれながらも暖かい日に照らされている。

「この辺にも大きな村があるんだな」

「それに空気も綺麗」

「あぁ、隠れ名所だなこれは」

 二人は辺りを見回しながら人通りの多い場所を探していく。

「この広場で何人か聞いてみるか」

「うん」

 ジオはすぐ近くにいる革鎧を着た青年に話しかける。

「ちょっといいか?」

「はい? 僕ですか?」

「あぁ。遺跡とか何でもいい、この辺で怪しいものに心当たりはないか?」

「え、探検家の方ですか?」

「みたいなものだ」

「んー、そうですね……うちの村でそういう噂は聞きませんが、北側の山向こうにも村があるのでそちらに行ってみてはいかがですか? あちら側は手付かずの場所が多いのでもしかすると」

「そうか、早速行ってみる」

「魔物もよく出るのでお気を付けて」

「あぁ。やっと期待の持てる情報を得られた、感謝する」

 ネルマが青年にお辞儀をしてジオの後を追う。

「ご武運を~」

 

 ジオたちはすぐに村を出て山向こうの村に降り立った。

「まだ昼を過ぎたばかりだからいいが、日が落ちないうちにこの辺りを探すぞ」

「うん」

「その前に……とりあえずこの村で聞き込みだ」

 前から歩いてくる老人にジオは早速話しかける。

「じいさん、この辺に遺跡や怪しいものはないか?」

「あい? わたしゃぁ女じゃよ!!」

 穏やかだった老人が豹変する。

「あ…………それはすまない」

「お兄ちゃん……」

「あの、それで……その、遺跡とか心当たりはないか?」

「知るかい!! ふん!!」

 激怒した老人は杖を地面に突き刺しながら去っていった。

「服と杖は男物だけど顔はちゃんとおばあさんだったよ」

「ここ最近で一番の失態だ……」

「他の人に聞いてみよ」

「あぁ……」

「さっきの村より随分小さいね」

「オレたちの村より小さいところは珍しいな」


「あらま、今日はお客さんが多いわねぇ。お二人さんどこから来たのぉ?」

 勢いのある中年女性が家から覗いてジオたちに声をかける。

「あ? 王都だが、ちょうどい————」

「あらまぁぁぁ! うちの息子も王都に住んでるのよぉぉぉ!」


「……この村は変わり者しかいないんだな」

「聞こえるよ」


 気持ちが高ぶった中年女性はついに家から出てジオたちに駆け寄る。

「それで? 今日は何用でこの村に来たのぉ?」

「この辺りに遺跡や怪しいものはないか?」

「あ~それならうちの息子が美人さんを連れて人探しで洞窟に行ったわよぉ」

 

「あ? ネルマ、今日ボルドが受けてた人探しの依頼ってどこの村だ?」

「うちのボルドを知ってるのぉ!?」

「名前が同じってだけかもしれないぞ……?」

「サニア村」

「ここもサニア村よぉ、やっぱりボルドのお友達なのねぇ」

「サティアも一緒か……」

「お友達」

「とにかく、そのボルドが人を探しに行った洞窟っていうのは?」

 ジオに少し焦りが見え始める。

「この村を出てすぐの川の向かい側よぉ。朝村に来てすぐ洞窟に行ってぇ、お昼前に戻ってきたんだけどぉ、隠し通路を見つけて進んだらその先に遺跡みたいなのがあったから、もう一回探してくるってまた行っちゃったわぁ。ちょっと心配よねぇ……」


「お兄ちゃん……!!」

「まずいな、遺跡には封印された魔物がいるはずだ。洞窟に急ぐぞ!」


次回 『剣と想い』

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