告白
「おーーーーーーー!」
僕は今寝っ転がりながら枕に向かって叫んでいた。告白のことを思い出し1人で悶えているのだ。僕が好きな英雄譚の騎士が1人を生涯、守り抜いたように僕もアリシアを一生守りたいと思った。しかし冷静に考えると僕は平民で彼女は大貴族の令嬢。この身分差でいつまでも一緒にはいられない。どうすればいいんだ、この悩みは僕の頭では分からなかった。
一週間が経ち、付き合い始めてから初めて会う日がやって来た。アレクはいつも以上に気合を入れる。先日ジンの家で作ってもらった服を着ていつもの場所へと向かう。
「ひ、久しぶりあ、アリシアあ、会いたかったよ」
変に意識し緊張して上手く言葉が出てこない。
「お久しぶりねアレク。そんなに緊張しなくて大丈夫だよ?いつも通りで行こう?」
アリシアは情けない僕を優しく諭しながら隣に並んで歩き始めた。付き合い始めたからといって何か劇的に変わる物でも無い。いつも通り平民としての暮らしについて話すだけだ。強いて言えばボディータッチがいささか増えたくらいだろうか。でもアリシアと過ごす時間がいつも以上に心地よく感じた。
もうお互いのことは知らないことはないと言うくらいなんでも話した。しかし僕は未だ守護獣のことを話せていない。このままただの子犬だと嘘をつくのは違うと思い、キメラと遊んでいるアリシアに本当のことを話す決意をする。
「キメラ!こっちにおいで。アリシア、話したいことがあるんだ」
「キメラ?この子の名前?それで話ってなに?」
「今までこの子犬のことはただの子犬って言ってたけど、実は違うんだ。魔獣型ユニーク種キメラ。それがこの子の分類。まだ何も合成していないからこんな姿だけど、成長するとあらゆる能力を使える最強の魔獣なんだ」
僕は遂にキメラのことを初めて誰かに話す。アリシアがキメラを怖がらないか不安だった。
「ユニーク種!!?それもキメラですって?あの初代国王、ユウリ・フォン・アルバート陛下と同じよ!?ユウリ陛下は圧倒的な強さで建国し、変幻自在な攻撃で戦いのたび攻撃が変わるから対策ができない。まさに最強の人間と言われているわ!それが守護獣のキメラの能力だとのちに分かったの。それからキメラはユウリ陛下以来誰も召喚出来なかったけれど最強格の守護獣として名高い存在よ!?それをアレクが‥‥‥」
驚きすぎて凄い早口になっている。こんなに慌てているアリシア初めてだ。
「アリシア、落ち着いて落ち着いて。今まで嘘ついててごめん。キメラってことは誰にも言ってなかったんだ」
予想以上ににアリシアが驚いてるけど話し良かった。慌ててるアリシア可愛いし。
「キメラが最強ってことは分かってたけどまさか初代国王と同じだったのか。もし他の貴族とか王様にバレたら凄い高待遇で迎えられたりして」
「ダメよ!貴族ってのは強欲なんだから絶対キメラを取り上げようとしてくるに違いないわ。私はそんな事しないけど。だからこの先キメラだってバレてはダメよ」
ちょっとおふざけで言った事で随分アリシアを心配させてしまった。
「そうだよね。分かったありがとうアリシア。最初に話したのが君で良かった」
もしネオンとジンの2人だったら僕の汚名回復のため言いふらしていたに違いない。そうなれば貴族に狙われていたかもしれない。
「家の書庫で読んだのだけど、ユウリ陛下の幼い頃からたくさんの魔物と戦いキメラに合成する事で圧倒的強さを手に入れたと書いてあったわ。アレクも10歳になったら冒険者登録して冒険者になったら?」
「将来何がやりたいかまだ分からないんだ。冒険者になって民を守りたいって気持ちも特には無いし」
僕が守りたいのは1人だけだ。
「そうなんだ。アレクがどんな道を選ぼうと私は応援するからね。もう時間ね、今日は秘密を教えてくれて嬉しかったわ。ありがとう。また会いましょう」
またアリシアと会う1日が終わる。いつまでこれまで通りの関係が築けるだろうか。いつかいきなり終わりを迎えないか。確証はないがその時が一刻一刻と迫っている気がした。
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