令嬢との出会いと守護獣
「私も頑張って勉強するからアレクも強くなって成人したら私を迎えにきてね!誓って、必ずまた再会するって」
「あぁ、必ず人類の頂点、S級冒険者になるまで力と権力をつけて君のもとに行くよ。」
そう言って僕たちはそれぞれの道を歩み始めた。
彼女、アリシアとの出会いは数ヶ月前の事だった。
「またお屋敷から抜け出してしまったわ。急いでたから朝食を食べ損っちゃった」
この街の領主グラン公爵家の一人娘アリシアは頻繁に屋敷を抜け出しては街に冒険に行くおてんば少女だった。今日も抜け穴を使い、平民街の路地へと出てきていた。
「あんた、見ない顔だな。その服、貴族様か?こんなところで何してるんだ?」
これがアレクサンダーとアリシアの出会いだった。
この出会いで二人の運命が大きく動き出すなどまだこの時の二人には知るよしもなかった。
「別になんでもないわ。ただ散歩しているだけ『グルルルルルルルルルルル』……………」
レディーのお腹の音とは思えないお腹の音に急に黙りこけ、真っ赤に赤面する。聞いたことは忘れろと言わんばかりに見えない圧がかかる。
「えっとー、焼き鳥いる?うちの家のだけど‥‥」
彼女は黙ってコクコクと頷きパクパクとしかし焼き鳥を食べるのにも優雅に気品のある食べ方に思わず見入ってしまった。
「ごちそうさま。美味しかったわ、ありがとう」
貴族様であろう彼女は家ではもっといいものを食べているはずなのにこんな庶民が食べるようなものを美味しいと言ってくれたことに僕はとても嬉しい気持ちになった。
「お粗末様。ところであんたは?この辺りは領主様のおかげで悪い奴がいるような場所ではないけど、あんたみたいなのがうろつくような場所ではないと思うけど?」
グラン公爵家が治めるこのグランの街の近くには小さな森と小さなダンジョンがあるだけで初心者冒険者用の街なのだ。しかも公爵家が治めており治安はかなりいい方だ。それでもこんな裏路地は女の子一人でフラつくものじゃない。
「あんた、あんたと失礼な人ですね。私はグラン公爵家の一人娘アリシア・フォン・グランと言います。私は貴族社会では学べない、平民の暮らし実際に見たりして体験したいのです。だからこうして時々お屋敷を抜け出しては平民街を見ているのですよ」
(ウゲッ貴族様かとは、思ったがまさかこの街の領主の一人娘かよ。でもさっきまでの失礼な態度も彼女なら気にしてなさようで安心だ。それにしても平民のことを知りたいだなんで変わってるな)
「失礼しました。先程までの失礼な態度を謝罪します。申し遅れました、私はアレクサンダーと言います。平民で家は屋台をしています」
俺は貴族の接し方がよく分からなかったが、精一杯言葉に気をつけて話した。
「今さら丁寧に言わなくても大丈夫ですよ。いつも通りでお願いします。それにしても何故あなたもこんなところに一人でいるのですか?普通平民の子供は友達と遊んでいると思っていたのですが」
そう、こんなところを歩いている俺も変だ。なぜなら俺は友達が少ないのだ。それは必ず王侯貴族、平民誰しも5歳の時に教会で召喚する守護獣が大きく関係している。5歳に教会で祈ることで出現することより神様が授けてくれると考えられている。
「それは、僕の守護獣がこんな感じだからです」
そう言って俺は自分の守護獣を召喚した。その見た目は小さな、大きさ30cmほどの犬のような生き物だった。
「俺の守護獣はおそらく魔獣型なんですが、教会の人に見せてもこの子のような生き物は前例がなく分からないと言われました。それでみんなにバカにされてしまって友達も家が近所の幼馴染の数人だけなんです」
この世界の守護獣は大まかに3つの型に分類される。主人も魔法が使えるようになる精霊型。魔力を持った動物で、主人の身体的能力が上がり、特殊能力も使えることがある魔獣型。魔力を持たない動物で、その動物の特徴的能力が使えるようになる動物型。に分類される。
精霊型には火、水、土、風、木、神聖、そして暗黒の精霊がいて強さによってそれぞれ小、中、大精霊に分けられる。才能があるものは中から大へと進化することもある。
魔獣型には守護する魔獣それぞれだが、例えばワイバーンだったら空を飛べたり、筋力が上がったりとそれぞれの魔獣による強化を見せる。
動物型はゴリラだったから単純に腕力が大幅に上がったり海洋生物だったら水の中で呼吸ができたり、というふうに強化される。
自分の守護獣が何型か、どんな能力を使えるのかなどは感覚で分かるとされている。精霊と魔獣の一部は意志の疎通も可能だ。
しかしこの世の中には複数の型の能力が使えたり上の枠に収まらないのをユニーク種という。例えば火の大精霊型ユニーク種と言うふうに表せられる。
俺は感覚では魔獣型と分かるのだか、見た目が完全に子犬だったため最初の方に散々馬鹿にされてきたのだ。僕の守護獣が最強だとも知らずに……………。
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